タワーレコード創業ドキュメンタリー"ALL THINGS MUST PASS"//定本ライブハウス「ロフト」青春記

最近の音楽情報は恐ろしいいほどのスピードで最新情報が更新され雪崩れてくる。

さらに良いものを求める気持ちと、新たな才能との出会いを楽しむ心境がその氾濫する情報と楽曲の中から自分に合うものを埋もれさすまいと探して漁る日々。

それが過ぎると音楽が好きという感情はどこに回帰すべきなのかわからなくなる。情報過多。
そんな時一見しておきたい作品が二つある。




ひとつはタワーレコードの創業から衰退までを描いたドキュメンタリー映画All things mast pass。
音楽コンテンツに触れたことがある人間なら誰もが一度は利用するであろうタワーレコード。1960年の創業から2006年に日本事業を残して他の全事業を撤退するまでの秘話を追ったドキュメンタリー映画。


All things mast pass
https://youtu.be/JuHZUqcdcyU

99年の最大業績年からたった6年後に破産。これは音楽業界のビジネスモデルが加速度的に変化し、デジタル化の一途を辿る中変化に追いつけなかった経営チームと、音楽を愛する人間ならだれもが共感できる博愛主義のようなスタイルから脱却しきれず、いわばロックと現実経営の狭間で倒れてしまった巨大チームといったところであろうか。

10代のころから事あるごとにタワレコに足を運んでいた筆者からすると、登場する元従業員の面々が全員愛すべきキャラクターであり、この人たちがあのタワレコを作ってくれた人たちなのかと、冒頭からエンドロールまで釘付けだった。


https://tower.jp/item/4253349



もう一作は書籍、定本ライブハウス「ロフト」青春期。
日本には数多のライブハウスが現在は存在しているが、そのまさに草分け、大元であるロフト。1971年に世田谷区千歳烏山にて始まったそのストーリーはまさにその歩み自体がロック。都内各地で紆余曲折を経ながら店舗展開し、競合他社ライブハウスと切磋琢磨し日本の音楽シーンをまさに創り上げてきた根幹ともいうべき存在。
70年代、80年代のライブスケジュールからは今では本当に考えられないほどの豪華な顔ぶれがキャパ数百人のハコで己の音楽を鳴らしていた事実を想像すると震えが止まらない。


https://tower.jp/item/5060058/%E5%AE%9A%E6%9C%AC-%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%96%E3%83%8F%E3%82%A6%E3%82%B9%E3%80%8C%E3%83%AD%E3%83%95%E3%83%88%E3%80%8D%E9%9D%92%E6%98%A5%E8%A8%98




コロナ禍で本当に苦しい状況が続くライブハウス界隈。そして配信、デジタル産業と形を変えつつある音楽業界。
17歳の時に初めてタワレコに足を踏み入れ、ライブハウスの扉を開けたあの頃。一生変わらないあの瞬間への想い。
あの場がなければ今の自分がいないのは間違いない事実。しかし変わらなければ生き残れない適者生存の世界。

その歩みを振り返ってみるとタワレコであればブラックミュージックからR&B、ジャズ、ロックとその変化のすべての受け皿になってきた経緯もある。LPからカセットテープ、CD、MD、デジタルダウンロードとその変化にも業界大手であるにも関わらずベンチャーのような精神を常に無くすことなく対応し続けてきた。

ロフトならパンクから、エレクトロニクス、ポップス、他すべてのジャンルの表現の場を提供し続けてきた。83年頃のハードコアバンドとの戦々恐々の戦いの日々はどんな激しいロックチューンより血生臭く、”生きてる実感”を何十年後の現在でも感じ取る事が出来る。

泥臭く、時代の変化にも常に対応し続け、その引力に惹きつけられて集ってきた人間をすべて受け入れ、愛し、尊重し、ヒーローにしていく土壌を生み続けてきたこの二つの企業に最大の敬意を表し、今後も進化して我々の心の拠り所で在り続けて欲しいと切に願っている。

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