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GGA登壇の経験と私のプロダクトについて

GGAに登壇してもう10日、もしかして夢の中の出来事だったのではと思うくらいに刺激的な経験をさせていただきましたので記事にしたいと思います。

GGAを振り返って

2023年春のGGAでトップバッターとして登壇させていただきました。発表は思わぬトラブルに見舞われ、残りの登壇者とスタッフさんたちを初っ端から震撼させてしまったこと、この場を借りてお詫びさせていただきます。のちに登壇された15人の皆さんはそんな事ものともしない、強くて優しい人たちばかりで本当に救われました。また、会場のみなさんの心配そうな眼差しと、私の一言に笑ってくれた優しさ、司会のお姉さんのつなぎが神業だったことも含めて、一生忘れる事のない思い出になりました。みなさん本当にありがとうございました。

(いつか登壇される皆さんは練習の時に設定した記憶がないのに自動めくりモードをONにしてしまっていないか、最後きちんと確認しましょう。)

振り返ってみて、あの時は心が折れてもおかしくなかったと思うのですが、たくさんの方に協力していただきながら自分の信念を貫いて作ったプロダクトをこんなことでおじゃんにすることの方がよほど失敗だと思ったので最後まで諦めずにプレゼンすることができてよかったです。

諦めずにいられたのは自分の作ったプロダクトとストーリーを信じられたことが本当に大きかったので、そんな風に心から愛せるプロダクトをつくる経験ができたことをとても幸運に思います。

細かすぎて伝わらない私のプロダクト

馬術に人生の3分の2を捧げた私のプロダクトは大変ニッチです。
プレゼン当日は5分間と短くて盛り込めないことも多く、当日はスライドがパタパタしていて中身が全然入ってこなかったと思うので、ここで思いの丈をぶつけさせていただきます。

表現が大変難しいのですが、私は今回作ったプロダクトのことを「馬術というスポーツを中央集権から分散させることに成功した」という観点で一種の発明であると捉えています。

プロダクトの概要

卒業制作では、馬術初心者がお金をかけずに家で自主練できるシミュレーターのプロトタイプを作りました。海外のプロ選手の目線映像とスマートフォンのセンサーを活用し、体勢が崩れてしまったことを検知して、ビジュアルでフィードバックして教えてくれます。走行している動画を視聴しながら自分で体を動かしてみることで、「レベルの高いライディング」を疑似的に経験しながら「自分の体の動きとのギャップ」を知ることができます。

これにより、ユーザーは自分のスマホと、スマホ対応VRゴーグル、バランスボール(30〜45cm)の3つがあれば「どこでも、誰でも、いつでも」練習することができるようになりました。なんなら宅急便で送ることもできます。(児玉さんに体験してもらうために実際に福岡に送らせていただきました)

実際のデモ動画がこちらです

良いポイント1:金銭的な制約の解消

馬術の上達にはお金がかかります。
これまで上手くなれる人というのは「お金がある人」「乗馬クラブの経営者の一族」などのごく一部の人でした。

プロダクトには海外のプロ選手の目線動画を使っていますが、デモ動画で使用したのは総合馬術というとてつもなく難易度が高い種目の走行映像です。イギリスではこの種目の馬は1000万円から4500万円ほどで取引されています。オリンピッククラスでは軽く億を超えるお値段になるそうです。
(ちなみに日本には全ての種目を含めてプロ選手は数人しか存在しません)

はちゃめちゃに難易度が高いのでよほど上手くならないとこの光景を見ることすら叶いません。それまでに計り知れないほどのお金と、時間と、労力がかかっています。馬に乗る人間にとってこの体験にはそれだけの価値があるのです。

良いポイント2:地理的な制約の解消

乗馬クラブは通うのが大変です。
馬場、厩舎、クラブハウスなどの設備があるので広い土地が必要で、においや砂埃などがあるため、住宅地や都市部から離れた場所にあることが多いです。また、会員制の乗馬クラブが多いので複数の乗馬クラブに通うということはあまり歓迎されません。
こういった背景から、日本では馬術・乗馬に関するアセット(人・馬・設備・情報など)は乗馬クラブや乗馬学校などに集約され流動性も低くなっています。

今回のプロダクトではコンテンツを入れ替えることで乗馬クラブの枠を超えて、「全世界の上手い人がどのように乗っているのか」という成功体験を疑似的にインプットすることができるようになりました。誰でもどこでも世界の最高峰にアクセスすることができます。これは大変画期的なことです。

良いポイント3:安全に練習できる

馬術は危険なスポーツです。
落馬が一番イメージしやすいと思いますが、馬の背に乗った状態で地上から2〜3mくらい高い場所にいますので、乗った瞬間からリスクにさらされています。暴走することもありますし、落馬の仕方もさまざまで、障害前で馬が止まって慣性の法則で人が投げ出される、馬が驚いた拍子に振り落とされるなど枚挙にいとまがありません。場合によっては後遺症が残るような怪我をすることもあります。怪我をしなくても、馬に乗ること自体に恐怖心を持ってしまうことも少なくありません。

このプロダクトでは落馬の心配はありません。安心して自分のバランス練習に集中することができます。馬の上でリラックスして自由に体を使うことができれば、実際に馬に乗った時の落馬のリスクは減りますし、より高度な運動にトライすることができるようになります。

良いポイント4:効果がある

実際に大学馬術部や乗馬クラブにご協力いただき、部員さんや会員さんにプロダクトを試していただきました。すると「とても臨場感がある」「障害へのアプローチの際のスピード感を養うのに良さそう」「障害前に自分の姿勢が前のめりになっていることに気づいた」と言った反響をいただきました。まだまだプロトタイプなので改善の余地はあるものの、メインのターゲットとしていた「馬術をスポーツとして向上したいと思っている学生」は特にこのプロダクトの可能性を感じてくれ詳細なフィードバックをくれました。

良いポイント5:UXへのこだわり

今回のプロダクトでは「没入感を損なわないで必要な情報を入れる」ことを中心にUXの作り込みを行いました。

PWA化
このプロダクトはブラウザで動いているのですが、ブラウザだとどうしてもURLのアドレスバーが表示されてしまいます。そのため、PWAを用いてスマホアプリのようにアドレスバーを非表示にすることでVRゴーグルで見た時に練習に集中できるように工夫しました。

縦画面のUIと横画面のUIの切り分け
シミュレーターと言えども練習画面以外にメニューを選択したりする画面などがいります。さらに、今回はスマホのセンサーを活用しているので、「練習画面と同じURL内で」ユーザーにデータの取得の許可を得るボタンを実装する必要がありました。「でも、練習中の画面には余計な要素を入れたくないよな…」と思ったので、縦にスマホを持った時のUIにコントローラー的な機能を集約することに決めました。スマホを横に持ち替えたらwindow.resizeで画面幅を検知してシミュレーターの画面のみがフルスクリーンで見えるようになっています。

縦画面はコントローラー
横画面は映像がフルスクリーン

このように、見えない部分ではありますがこだわりが詰まっています。

長くなりましたが、以上がプロダクトの推しポイントでした。
Why meなどのもうちょっとドロドロしたことはまた別の機会に記事にしたいと思います。

Special thanks

ここまで来れたのは、本当に周りの人たちのおかげです!

ずっと頑張ってくれた、支えてくれた家族、
体験づくりのスペシャリストであるメンターの長洞さん、
昼も夜も一緒に悩んでくれたり壁打ちしてくれた同期・先輩、
私の馬に対する激重感情を軽やかにいなしつつヒントをくれた児玉さん、
ユーザーインタビューや体験会をしてくださった皆さん、
いつも励ましてくれたスタッフさん、チューターの皆さん、
目線動画を提供してくれたElisa Wallace Eventingさん、
送り出してくれた職場の皆さん、

ここに書ききれないご協力いただいた皆さん、
本当に、本当にありがとうございました!!

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