感動する本と何度も繰り返し読む本

最近、読んで感動する本と何度も繰り返し読みたくなる本はけっこう違うということに気がついた。

感動する本を読むと、自分は心底からディスターブされて他のことが考えられなくなり、仕事に手がつかなかったり、家族との会話も上の空になってしまう。自分にとっては、たとえば谷崎潤一郎の「細雪」とかサマーセット・モームの「人間の絆」なんかが当たる。こういう本は素晴らしいのだけど読むのにもかなりの精神力を必要とするのでかなり時間と精神的な余裕があるときでなければまた読んでみようと思わない。

繰り返し読みたくなる本とは、もっと気軽に読める本である。最初に読んだときは、感動したというよりも、楽しい要素が多くてほっとしたような気持になる。それでいて内容にちゃんと深みがあるから何度読んでも楽しめるのだ。村上春樹の「ダンス・ダンス・ダンス」やカズオ・イシグロの「日の名残り」なんかは繰り返し読みたくなる本である。実際、ダンス・ダンス・ダンスは100回くらいは読んだと思う。登場人物に不思議な魅力があって押しつけがましいところがなく、読みやすくてとてもリラックスできるのだ。物語に「圧倒される」という要素がないので時間があるときにふと手に取りたくなる、そんな本である。

どちらの種類の本が格上ということではなく、それぞれの良さがあるということだろう。音楽だって、仕事をしながら軽くかけておくのに良い曲(自分にとってはバッハとか古典派の室内楽の曲がだいたい当てはまる)と、スピーカーに向き合ってじっくり聴く曲(オーケストラや合唱などを含む大編成の曲)にはそれぞれ別の良さがあるけど、それと同じかもしれない。

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