2023年11月3日付経済教室認知症700万人時代に備える(下) 医療福祉と企業の連携カギ

2023年には認知症基本法が施行され、新治療薬レカネマブも承認された。この法律は、認知症患者の意思決定支援と権利保護を国や自治体の役割として明記しており、認知症患者が社会に包摂されることを目指している。この背景には、認知症による判断力低下が社会生活に与える影響があるす。例えば、金融取引では高齢者が自律的に生活するためには、取引に必要な意思決定能力の客観的な評価が重要である。このために筆者らは、意思決定能力の低下を考慮した民法の研究会を立ち上げ、金融機関での適切な取引のためのアプリケーション開発に取り組んでいる。また、金融機関職員の認知症対応力向上のための通信講座や資格試験も開始した。超高齢社会では、個々の高齢者の健康や余命に大きな個人差があるため、資産取り崩しについても、医学と金融分野の協力が必要である。この分野における研究や実践の推進、異業種連携を進めることが、認知症高齢者の地域生活支援にとって重要であると筆者らは提案している。

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