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「マイ言語」に生きるロラン・バルト:『零度のエクリチュール』論
はじめに ロラン・バルトの『零度のエクリチュール』は、一九五三年に出版された彼はじめての単行本である(以下『零度』と略す)。ひとことでいえば、文学作品がいかにして価値をもちうるかについて論じた本だ。
「エクリチュール」というフランス語はふつう「書き言葉」と訳される。ジャック・デリダは「パロール(話し言葉)」の対概念としてこの語を導入したが、バルトの場合そうではない。
バルトは、「言語活動にお
はじめに ロラン・バルトの『零度のエクリチュール』は、一九五三年に出版された彼はじめての単行本である(以下『零度』と略す)。ひとことでいえば、文学作品がいかにして価値をもちうるかについて論じた本だ。
「エクリチュール」というフランス語はふつう「書き言葉」と訳される。ジャック・デリダは「パロール(話し言葉)」の対概念としてこの語を導入したが、バルトの場合そうではない。
バルトは、「言語活動にお