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積ん読と電子書籍のススメ

積ん読はハーレムだと思う。
「買ったまま読んでいない本」
そう言われるとぐうの音も出ない。
「読める分だけ買え」
おっしゃることはまったく正しいです。
しかし、正しいけれど少しばかり前提認識が違います。

そもそも積ん読とは何でしょう?

もしかしてあなたは「買ったのに読まない本」のことであると思っていませんか?
それ、違います!
積ん読とは「買ってあるからいつでも読める(可能性が高い)本を保有している状態」を指す言葉なのです!!
後で買おうと購入を先送りにしたために買い忘れてしまった。あるいは絶版になり入手できなくなった。そういった経験がどなたにもおありでしょう。(そんな経験がないのならば、たいへん幸福なことです!)
積ん読とは、可能性の保有。
ここテストに出しますからね!
ひとまず積ん読(ハーレム)形成の正当性につき、ある程度ご理解いただけたものと思います。
とはいえ、本たちを養うには相応の資産が必要です。この点も実際ハーレムと変わりませんね。
では積ん読のために必要な資産とは何か。
それは空間です。
本は保有する限り空間を食い続けるのです。誰もが御殿のような書斎を持てるわけではない。豊かな資産を持ち得ぬ者には積ん読を楽しむ資格がない。かつて、そういう時代がありました。しかしそれはすでに過去のこと。現在我々には最強の技術があります。

そう、電子書籍!

さすがに「電子書籍ナニソレ」状態の現代人は少数派かと思いますので説明は省きます。
電子書籍というツールのメリット・デメリット、利用に当たっての好き嫌い、そういうものも本稿ではとりあえず無視します。
私が主張したいのはただひとつの真実!

電子書籍であれば、好きなだけハーレムを作れる!

空間という最も贅沢な類の資産をそうそう増やせない人間でも、じゃぶじゃぶ積ん読することができる! できます! そう、できるんです!
電子書籍は、収納場所という現実の制約をすり抜ける技術。庶民のハーレム。
私は今、お布団天国でも通勤地獄でも指先ひとつシャッッッとスクロールして「今日は君にする~」ができます。石油王の気分。すごい。
他方、こういう声もあります。
「電子書籍を積む!? 意味が解らない」
「いつでも買えるのに積む必要はない」
「現に読む段になってから買えばいい」
ぐう正論。間違ってない。ただこれらの意見、私にはまったく響かない。
なぜなら、前提としている積ん読の価値観が異なっているんです。
電子書籍は積ん読するもんじゃないぜ派はおそらく、積ん読を「機会の確保」と捉えている。その本が入手可能である間に手元に確保しておきたい。それが主目的。結果として読むペース以上に買ってしまう。
彼らが想定するのは、いわば結果としての積ん読なのです。だから、確保しておく必要のない電子書籍を読むペース以上に買う理由が理解しがたい。

冒頭で、積ん読とは可能性の保有であると述べました。
この「可能性」をどのように捉えるかは人それぞれなのです。
そして私はこの「可能性」を〈未来〉を含むものと捉えています。

私がいつでも好きな本を読むことのできる未来。
好きな本を書く人がずっと書き続けられる未来。
本を作って売る人たちがそれを継続できる未来。

けだし〈未来〉とは、お金で出来ています。私は課金したい。未来のために今、課金したい。心惹かれたその本に。
今の私が読めなくとも、たとえ後から「別に急いで買わなくても良かったな」と思うとしても、私は今その本を買いたい。未来を含めた可能性を保有していたい。
つまり、私の積ん読は、積ん読を形成すること自体を目的とした積ん読なのです。結果としてできてしまうものではない。最初からそのつもりでやっているんだ。
積ん読とは、可能性の保有。
さて──あなたはこれから、どんな可能性を育てますか?

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なお、しばしば話題になりますが、電子書籍の多くはデータそれ自体を買っているわけではなく、利用している配信サービスで読める権利を買っているだけなので、不採算などでサービスが終了すると読めなくなるリスクがあるため、電子積ん読はしない方が「賢明」です。賢明でない人はどんどんやりましょう。

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この記事は2019年発行の本好きによるアンソロジー『あした何読む?』からの再録です。

表紙データ(表1)

1_目次

寄稿者めいめいの好きをテーマにした、エッセイあり小説あり漫画ありのアンソロジー。
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本の好きな人が好きにする話の詰め合わせ、ぜひどうぞ!

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