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俺VSヤンキー

喧嘩は小学生の頃からした事がないし、ましてヤンキーとなんて戦おうとも思わなかった。なるべく事を荒げず、そうゆうトラブルの起きそうな場所には近づかなった。戦場はスロットコーナー。戦いの火蓋は約1ヶ月前に切られた。
その日のシフトは、中番だった。俺はいつも遅番で夜からの出勤だけど、その日は人数の都合で中番というお昼からの出勤だった。お昼と夜の客層は違って、あまり見ない顔ぶれのお客さんが多い。俺が出勤して1時間ほど経過した時、スロット台に足を乗せて貧乏ゆすりをしている明らかに態度の悪いお客さんがいた。
見た目は30歳前半のクローズに出てそうなヤンキーで、周りをキョロキョロして明らかに怪しい。しかし俺は変にジロジロ見ると面倒な事が起きそうなので無視していた。しようと思っていた。いつもどおり店内を巡回していると、やたらそのヤンキーと目が合ってしまう。見るつもりはないのに、ヤンキーがジロジロ見てくるせいか、目が合ってしまう。

目が合うようになって1時間が経過した後、そのヤンキーはスロットを辞めて、メダルを持って俺のところまで来た。メダルを計数機に流し、出てきたレシートを渡す。乱暴にそのレシートを受け取ったヤンキーは舌打ちをして出口へ向かっていった。正直イラッときたが、笑顔で、
「またのお越しをお待ちしております!」
我ながら最高のスマイルと接客である。その後、俺はパチンココーナーの方を覗きに、出口付近に向かうとそのヤンキーはまだいた。外は雨が降っていたので、傘を取り出そうとしていたのだ。その時だった。
一瞬目が合ってしまった。すぐに目を逸らしたがもう遅い。傘を地面に叩きつけたヤンキーはズカズカと俺の方に向かってくる。逃げるように立ち去る俺。しかしすぐに追いつかれてしまう。
胸ぐらをつかまれ、壁に叩きつけられた。
「〜〜〜てんじゃねぇ!」
なんて言ったかわからん。そもそもインカムで片耳は塞がれてるし、爆音のパチンコ台達に囲まれてるし。
ここで俺は1つミスをしてしまう。
「え?」
まるで挑発をする様に聞き返してしまったのだ。ヤンキーのボルテージは上がる。
「ジロジロ見にきてんじゃねぇ!」
俺は、数々の言葉を探した。
「見てません」余計に相手を逆撫でてしまう。
「やめてください!」やめるわけない。
「申し訳ございません」そもそも見てない。
俺の口からでた言葉は、自分でも予想できないものだった。
「いつも来てくださってるのでお見送りをしようという気持ちで…。」
奇跡の言葉が飛び出たその時、ヤンキーは舌打ちをしてそのまま退店した。ああ、よかった。
こうして、俺VSヤンキーの第一試合は幕を閉じたのである。幸い、ヤンキーが細いタイプのヤンキーだったからダメージはなかったのと、日々サウナで、入れ墨だらけのおっさん達に囲まれているせいもあって動揺することはなかった。後々聞いた話だが、そのヤンキーは常連で、数々の男性スタッフに喧嘩をふっかけるトラブルメーカーらしい。次来たときは、ジロジロ見られても見ないようにしよう。

そして昨日、第2試合が行われた。

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