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謎の鉄道「スカイレール」

岡山から普通列車のみで3時間以上。広島の「瀬野駅」に降り立った。広島駅から20分ぐらいのベッドタウン。たくさんの住宅が建ち並ぶ。この街には全国、いや世界でもただ一つの変わった鉄道が走っている。

「スカイレール」みどり口駅

その名は「スカイレール」。どんなところが世界で唯一かは後ほど。

スカイレールに乗る。

改札できっぷを買う。

コード付ききっぷ

きっぷには「コード」が印刷。これを改札にかざして読み取って通る。まだまだ、実験中の鉄道が多い中での実用化。時代のかなり先を行っている感覚だ。

ICはICOCAなどが非対応。

IC読み取り機もあるが「定期専用」。「ICOCA」などと共通利用ができない。ただ、驚くことに開通した1998年からある。交通系ICの先駆けである「Suica」よりも3年早く実用化している。こんなところも未来を先取りしている。

「スカイレール」のホーム

ホームに行くと「スカイレール」の車両が止まっていた。

  • 見た目はロープウェイのゴンドラ

  • レールは「千葉」や「湘南」のモノレールに似た「ぶら下がる」タイプ。

2つの良いところ取りのよう。これが世界で唯一の構造を持つ鉄道なのだ。

車内

車内はかなりコンパクト。座席は8人がけで、キャパシティが20〜30人。完全にロープウェイだ。

「みどり口駅」を出るとぐんぐん登っていく。

沿線には住宅地「スカイレールタウン」が広がる。1998年に「積水ハウス」主導で街が切り開かれた。街とセットで「スカイレール」も開通した。家々の見た目も似たようなモダンな一軒家orアパートが大半。

みどり中街なかまち駅に到着。この駅で対向とすれ違う。ロープウェイと同じ原理で動くために、同時刻で出発。この駅で行き違えるようになっている。

駅の前後だけレールの形が違う。これはリニアモーターの「リアクションプレート」。電車のモーターを磁石の原理で反応させている。

リニアモーターの地下鉄「大阪メトロ長堀鶴見緑地線」
線路間のプレートが「スカイレール」にも付いている。

この方式は地下鉄ではよく採用されている。

  • モーターが小さく、電車も小さくできる。

  • 加速減速がスムーズ

  • 急坂に強い

という利点がある。このうち、「スカイレール」は加速減速の良さを活かすために駅の前後のみに設置、あとはロープで上り下りしている。

登ること約5分。「みどり中央駅」に着いた。

散歩したくなる並木道
「スカイレール」沿線の地図

少しだけ写真と動画も撮ってみる。下から撮ると迫力がすごい。

三菱重工製の「200形」
僕と同学年。

帰りも乗ってみる。上りの便が僕だけだったのに対して、降りる便は満席になった。欠かせない手段になっているのが見える。

「みどり中街駅」で降りてみた。

バス停留所をつくっています。

駅前ではバス停の設置工事が行われていた。実は「スカイレール」の今後と関係があるのだが、これは後ほど。

スカイレールのダイヤ

ダイヤは昼間は15分間隔。ラッシュになると5分間隔でやってくる。ただ、キャパシティの少なさから朝の混雑がひどいそう。分散を促す貼り紙もあった。

「みどり口駅」に帰ってきた。

これが最後

なかなか貴重な体験ができた今回。実はこれが最初で最後になるかもしれない。

2024年4月に全線が廃止になることが決定。「みどり中街駅」で見かけたバス停もその代替となるもの。電気バスが走る予定だ。

その理由というのが

赤字と維持の困難

唯一無二のこの鉄道は部品を一から作る必要がある。モノレールやリニアモーターの仕組みを採用した共通点がありつつも、結局は専用の部品が大半を占める。

「スカイレール」のような鉄道を全国各地に売り込む計画もあった。それでコストを回収する目論見もあった。しかし、それとは裏腹に、ここだけに。26年の歴史に幕を下ろす結果となった。

僕とほぼ同い年ながら、短い歴史となった「スカイレール」。芽が出ない上、惜しむ声はほぼ僕のようなファンぐらい。乗ってる人が多くても、バスでも十分なのだろう。後味の悪さだけが漂ってしまう。

それでも、貴重な鉄道に乗れたというのはいい思い出だ。

ストリートミュージシャンの投げ銭のような感覚でお気軽にどうぞ。