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変わりゆく奈良線+お気に入り

京都駅から伏見区、山城地域を南下し、京都府最南端、木津川市の木津駅に至るJR奈良線。木津駅まで行く列車の全ては文字通り大和路線の奈良駅に乗り入れている。沿線には、東福寺や宇治、桃山などの歴史が薫る街が多数あり、奈良駅に乗り入れていることもあって、多数の観光客で賑わう。また、京都〜城陽間は本数が多く、大阪近郊ベッドタウンの通勤路線の性格もある。そんな奈良線では大きな変化が起こっている。その他エピソードと共にご紹介する。

複線化と増発

需要の多い京都〜城陽間のうち、京都〜JR藤森(ふじのもり)、宇治〜新田(しんでん)は複線になっているが、それ以外は単線のままになっている。
観光地が多く、インバウンド全盛期は「ジャパンレールパス」というフリーきっぷを持った訪日客でごった返す賑やかさの裏で、昼の「みやこ路快速」は1時間に2本のみ。これ以上の増発は難しかった。また、単線区間は行き違いが付き物。反対の列車が遅れれば行き違いの列車が次々遅れ、遅れが頻発する。これらの問題を解決と利便性向上を目的に、JR西日本、京都府、沿線市町が負担して京都〜城陽間を完全複線に、そして城陽から先の山城多賀〜玉水も合わせて複線にすることとなった。2023年の完成を目指し、線路の移設や分岐の改良が進められている。

現況

↑木幡駅付近、手前の線路が新たに敷設された。
2020年現在で言うと、線路の敷設が完了した箇所や大詰めを迎えている箇所など区間ごとに進捗には差がある。それでも、少しずつ着実に完成に近づいていることが窺える。2020年12月には山城多賀駅〜玉水駅の複線化が完成し、行き違い遅れの影響は少しばかり低減された。今後も順次複線化が進んでいくと見られ、並行して、棚倉駅では分岐器の改良が行われ、古い駅舎では橋上駅舎への建て替えとスロープやエレベーター設置、トイレ改良などバリアフリー工事が行われている。
六地蔵駅ではカーブ上にある現在のホームを京都寄りの直線上に移設。ホームを拡幅させ、ホームの隙間を無くし、駅舎も地下鉄出入り口の近くに移転させる。安全性と利便性の向上を図る。
宇治川に架かる鉄橋では架け替えが行われていて、工事用の仮足場が川の上に立てられ、一部は新しい橋脚も姿を見せている。ちなみに複線化が完了した京都〜東福寺間の鴨川に架かる鉄橋はトラス橋になっているが、あるとき、複線化前の前面展望の映像をYouTubeで見つけ、見ていると単線のガーター橋と今のトラス橋が並び、橋が架け替えられていることが分かる。宇治川の鉄橋も今は単線のガーター橋だが鴨川のように新しくなるかどうか。今後を見守ることとしよう。

奈良線の電車

↑上から205系0番台、同系1000番台、221系みやこ路快速と103系ウグイス色
現在奈良線には看板列車「みやこ路快速」から普通列車までの全種別を担当する221系電車や普通列車や快速系列車の代走を務めるスカイブルーの205系、ウグイス色(黄緑)の103系が走っている。このうち、205系は山手線などと同じ顔でドアが小窓の0番台とJR化後に製造され、意匠が異なり、ドアが大きめの1000番台で区別される。以前は普通が103系、快速が221系と棲み分けが比較的はっきりしていた頃もあったが、阪和線から205系が2種類とも移籍し、京阪神、滋賀を繋ぐ快速、普通列車から移籍した221系が微増したなどで奈良の103系は8両2編成まで減らした。しかし、完全に置き換えるまでには至らず、今でもこの2編成は元気に「みやこ路」を国鉄の雰囲気薫る爆音モーターを響かせ毎日駆け抜けている。

桃山駅の寒桜

ここで1つ、奈良線の個人的お気に入りスポットを紹介しよう。京都駅から普通列車約10分ちょっとの桃山駅。かつて、豊臣秀吉が城を構えたことでも知られる城下町だ。「御香宮(ごこうぐう、もしくはごこうのみや)」や坂本龍馬ゆかりの「寺田屋」などの歴史的名所の他、徒歩10分西に行くと「伏見大手筋商店街」があったり、かつては「キャッスルランド」というテーマパークがあったほど、伏見区内でも比較的栄えている。そんな桃山駅のホームの京都寄りには寒桜(カンザクラ)の木がある。寒桜は早咲きの一種で2月頃から3月初め頃に見頃を迎える。
桃山駅は僕が住んでるアパートから自転車で最短10分程。「大回り乗車」でも頻繁に利用していて、この寒桜も見つけた。満開を迎える頃はまだ寒い頃。それでも、美しいものを見つけられた。

廃線跡の紅葉

もう一つ美しい自然をご紹介。木幡駅から六地蔵駅方向にかけての線路沿いの散策路。たまたま、「大回り乗車」していたら見えて、動画撮影のついでに見にいくことにした。キンキンに冷えた朝の寒空の下で、近畿北部では初雪の便りが届くほど。それでも、ここの紅葉はまだ色鮮やかで非常にきれい。ウグイス、白、スカイブルーの列車たちも良く映える。そして少し歩くとこんな看板を発見。

少し分かりづらいが、駅名標風看板の下のほうに
旧陸軍宇治火薬製造所木幡分工場鉄道引込線跡
と書かれていて、実は廃線跡だと知った。非常に美しくもその裏には、戦時中の記憶を後世に伝える役目も果たしているのだ。いいもの撮れて、いいもの見れたついでに、また1つ勉強になった。

入試帰りの暇つぶしで。

2018年にスカイブルーの帯を纏った205系が阪和線から奈良線に移籍し、今では珍しく無くなった“スカイブルーの奈良線”だが、それらが移籍する数年前にスカイブルーの電車がいたことがある。当時はウグイス色の103系が多数在籍していた中で一際異彩を放っていたのが写真のスカイブルーの103系だった。先の205系と同じく阪和線の車両で、貸し出し扱いで奈良に移籍。奈良線を軸に、朝夕ラッシュには4両を2編成繋げ、大和路線から大阪環状線に乗り入れる「区間快速」としても使用され、“青い環状線”の異彩を放った。
僕がこの写真を撮ったのは今から5年前。大学の入試帰りの暇つぶしのとき。京都駅構内で撮り鉄しまくっていて、この車両に偶然遭遇した。雑誌、鉄道専門のニュースサイトでこの情報はゲットしていて、見かけたときは非常にテンションが昂っていた

ということで、奈良線の今やマニアック、美しいもののエピソードなどを綴ってきました。城陽まで住宅街を駆け抜けたと思ったら、そこからは田園風景や林の中、古墳の上を駆け抜ける自然豊かな姿という二面性だったり、個性豊かな列車たちなどいろんなええとこがあります。歴史的名所に行かれるとき、ついでにこういうところを注目されてはいかがでしょう。

ストリートミュージシャンの投げ銭のような感覚でお気軽にどうぞ。