元農水相に係る贈収賄事件について

元農水相に係る贈収賄事件について、東京地検特捜部が捜査を進めていると報じられ、報道によると、元農水相が受け取った金は総額1000万円を超えているようであるが、贈収賄容疑がかけられているのは、そのうちの500万円のようである。全額が賄賂ではないのかと、疑問を感じている人も少なくないだろう。

こういう、日常的に繰り返し金が渡っているパターンでは、個々の現金供与と賄賂の趣旨が曖昧になりがちである。賄賂ではなく「政治献金」という弁解の排斥が難しくなりやすい。リクルート事件で藤波元官房長官が一審で無罪になったのも、そういう背景があった。

政治資金収支報告書に記載がないから、即、賄賂とは認定できない。逆に、政治資金収支報告書に記載があるから賄賂ではない、ということにもならない。賄賂性は、あくまで個々の現金の実質的な性質により決せられる。

加えて、国務大臣の職務権限は広いだけに、何を依頼したのかが曖昧になりがちな面がある。そこも藤波氏の事件と似通ったものを感じる。
おそらく、特捜部はそういう観点も持ちつつ、500万円が単なる政治献金ではなく賄賂という、詰めの捜査を行なっているのだろう。政治家が裏金受け取れば、即、賄賂、というわけではない。そこに、贈収賄捜査の難しさがある。