広島・河井派選挙違反における「被買収」不起訴について

少しでも政治活動をやってみるとわかりますが、政治活動にはお金がかかるもので、政治資金規正法等の関係法令も、お金がかかることは前提としつつ、その適正を図ることを目的としています。

選挙があってもなくても、政治活動には一定のお金がかかるもので、選挙がある時にはお金を使ってはいけない、お金をやり取りすれば選挙違反になる、ということになれば、政治活動自体ができなくなります。適法な政治活動費と違法な選挙違反の金の線引は、特に選挙がある際には難しくなりがちでしょう。

検察は、選挙違反に対しては厳格に臨みつつも、政治活動の自由を制約しないように、立件は、明らかな投票買収、運動買収に限定してきた面があります。しかし、今回の河井派の事件では、従来、踏み込んでこなかったところにまで踏み込んで、大規模に立件した、そういう特異性はあると思います。

あくまで推測ですが、検察としては、そこまで踏み込んだのは、河井夫妻を摘発して政界から排除する、そのための異例な措置だという意識があるのでしょう。明確な司法取引までは行なっていないとしても、被買収とされた側から供述調書を取る上で、検察はあなたのことを悪いようにはしないとか、目的は河井夫妻であなたではないから協力してくれ、などと口車に乗せていたことは、私も様々なルートから聞いており、司法取引的なムード濃厚な中で被買収側から供述調書をもぎ取っていった実態があったのは事実です。それは、取調べの現場がわからない裁判官の節穴な目は誤魔化せても、実態は実態ですから、被買収を起訴してしまえば、不満、苦情が噴出して収拾がつかない事態にもなるでしょう。被買収とされた側にも、よくよく調べてみると、被買収性が大いに疑問な者も含まれていて、河井夫妻の裁判では有罪となっても、被買収側を起訴すれば、綻びも、当然、出てきます。

そういった諸々の事情を踏まえた上での今回の不起訴だったのではないかと思います。

ただ、表面上、形式上は、従来の検察による選挙犯罪への厳正な対処に沿わないものですし、今後、検察審査会での審査を経て、相当数が、起訴相当とか不起訴不当で検察に戻ってくる可能性が高いと思われます。

この問題は、今後も尾を引き、様々な波紋を広げ続けるでしょう。

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