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星の王子さまの "秘密"

この星の人たちは、一つの庭に何千ものバラを咲かせているけど、本当に必要なものを見つけることができないんだ。

一本のバラの中にも、それから少しのお水の中にだって、探しているものはきっと見つかるはずなのに。

でもね、目で見るだけじゃ、大切なものは見つけられないよ。心の目で見なくちゃ。

かっこちゃんが道案内する 星の王子さま

星の王子さまと言えば、茫漠たるサハラ砂漠と、故障した飛行機と、疲れた飛行士だ。もちろんそれだけではないけれど、私にとっては、まずはこれが物語の全体を覆っている印象だ。

きっとこれは、私たちの姿なんだと思う。迷子になって、エネルギーがすっかり枯れてしまい、動けなくなっている。そして誰ともつながっていない。自分自身とすら、つながっていない。

けれど、私たちにはいつでも、いい方向に変わっていける可能性がある。星の王子さまの物語は、そのことを私たちに教えてくれている。それを物語の中では、秘密と呼んでいる。

私たちが疲れてしまっているのは、秘密が見えないからだ。

"水" という秘密が見えなければ、私たちの心は砂漠の中で乾いていく一方だし、"バラ" という秘密が見えなければ、私たちは自分も誰も、好きになることができない。

星の王子さまという物語そのものも、美しい秘密を隠していると思う。表面をなぞっただけでは感じることのできない、優しさや美しさが、じっと静かに見つけ出されるのを待っている。

その秘密へと案内してくれるのが、「かっこちゃんが道案内する 星の王子さま」だ。

作者であるかっこちゃんはこの本を書くにあたって、フランス語の原作と、フランス語の辞書を手に取り、星の王子さまを自分の言葉で訳し直した。

その文章に、かっこちゃんが特別支援学級の教員をしていた頃に出会った子供たちとのエピソードが混ざり合って、オリジナルな星の王子さまになったのがこの本だ。たった一輪のバラの花のように、特別な本となった。

表紙を飾る星の王子さまは健康優良児のように丸々としていて、原作から想起される少し貧血気味の、透明で繊細な王子さまとはずいぶん印象が違う。あるいはこの王子さまこそが、原作の王子さまに隠されていた "秘密" なのかもしれない。

なぜなら、かっこちゃんはとにかく星の王子さまが大好きで、もしかすると作者であるサン=テグジュペリよりも、星の王子さまのことを知っているようにも思えるからだ。

かっこちゃんは小さな頃から秘密を見つけるのが得意だったけれど、特別支援学級の子供たちと触れ合う中で、その力がますます深まっていった。

私は三十年以上、特別支援学級の教員をしていました。私はそこで、たくさんの「もうひとりの星の王子さま」に出会うことができたのでした。

見えない小さな王冠をつけた子供たちは私にとって、かけがえのない大切な友だちでした。大好きという気持ちが大切だということや、生きるって素敵なことだということや、そして「本当に大切なものは何か」ということを教え続けてくれました。

飛行士が星の王子さまと出会って変わっていったように、かっこちゃんが子供たちと出会って変わっていったように、この本との出会いが、私たちの中で何かが変わるきっかけになればと願う。

秘密に目が開かれると、私たちの人生は変わっていく。さびしくなったり、悲しくなったときでさえ、幸せを感じることはできる。砂漠の中に水を感じることができ、誰の心の中にも、美しいバラを見ることができるようになるからだ。

私は心の中に、見えない小さな王冠をかぶった子供たちからの贈り物をたくさん持っています。ですから、さびしくなったり、悲しくなったときに、空を見上げたり、目をつぶったっりすれば、きれいな音楽が鳴ったり、大ちゃんの詩を思い出したり、雪絵ちゃんと一緒に行った冬の海を思ったり、りえちゃんの歌を思い出したりするのです。そして、もっともっとたくさんの宝物を思い出して、幸せな気持ちになるのです。

(最初と最後の写真はいずれも、2021年10月に、かっこちゃんを訪ねてモナの森へ行った時のものです。)

モナの森に咲いていた一輪のバラ


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