【日本語訳】 邓孝慈 《SPOTLiGHT聚光》 2022年3月刊 インタビュー
こちらは2022年3月16日に公開された記事を日本語訳したものです。つたないうえに意訳も含まれますが、ご容赦ください。
IXFORM-邓孝慈:一つを成し、多くを持つ
我々とIXFORM-邓孝慈が撮影の約束をしていたのは、北京の郊外。よく晴れた春の日だった。
まだらな木陰の間からゆっくりと出てきた若者は、ロングコートと長ズボンを身にまとい、鼻筋にはゴールドフレームの眼鏡をかけていた。
その姿はピクニックに出かけるごく普通の観光客のように見える。
暖かな日差しが彼の立体的な輪郭に降りそそぎ、様々な陰影を映し出す。
ついつい視線が吸い寄せられ、同時にはっと気づかされる。少年は、春の日よりもっと目を引く愛くるしい笑顔を持っていた。
我々がぼんやりしていると、彼はグラスの中できらりと光る液体を揺らしながら、微笑むように穏やかに言った。
「行きましょうか。」
そうして、この日の撮影が始まった。
太陽の光を浴びて気ままに歩き回りながら、彼はこの時間を楽しんでいるように見えた。
仕事の合間、外に出かける余裕がある時——彼は人が多く騒がしい場所に行くよりも、閑静で歴史ある建築を訪ねるのが好きなのだと言う。
自分の心を落ち着かせ、流れる雲を眺めながら思うままに歩く。それが彼には心地いいのだ。
そして大学で写真を専攻していたのもあるのだろう。
彼は自分が貴重な瞬間だと感じるものを見つけると、カメラを取り出して撮影し、いつかの追憶のために残していく。
邓孝慈のweibo背景画像の2枚目も彼が自ら撮ったものだ。写真の中では、スーツケースを引いたすらりとした人影が横断歩道の上に長々と伸びている。
一見すると何も特別なところは見当たらないように思えるが、当時の邓孝慈はこの後ろ姿から何かを読み取ったのかもしれない。
不思議に思ってこの写真の物語について尋ねると、少年は笑って答えた。
「実際はただ道を歩いていた人ですよ。撮る価値があると思ったから撮っただけです。」
思わず我々も笑ってしまった。
この自由奔放で、少しも飾らない純粋さが羨ましくなる。
たとえ世界の片隅にひっそりと存在するほんの小さなひとかけらであっても、彼はそれに気づき、大切に心の中の小さな世界にしまいこむ。
それはつまり、雑多でわずらわしい現実の中で、彼だけがロマンチックなドームの天井を優雅に見上げているようなもので、人を自然と羨望させるのだ。
邓孝慈は長期的な計画を立てるのが好きではないと言う。
彼からすれば、物事には常に不確定要素がある。
それなら多くの時間を費やして入念に計画を練るよりも、純粋に今を楽しんで一秒も逃さない方がいい。その過程で努力をして何か得るものがあったなら、それだけで十分なのだ。
写真を学ぶのも良い、芸能人になるのも良い。
重要なのは結果だけではない。
“何かをすること”自体が独自の思考回路と世界に対する理解を築く糧になり、彼に世界を見る新しい角度をもたらしてくれる。
何事にも新鮮な目線を持ち続けていれば、見ている世界も自然と彩り豊かになっていく。
邓孝慈のweiboのプロフィール欄には、一際目を引く英単語が並んでいる。
“Human Vulnerability”——意味は人間の脆弱性。
この言葉を見ると、我々はどうしても人の身体の脆さや心の軟弱さ、人間性の弱点などを連想してしまう。とにかくネガティブな意味として受け取られがちな言葉だが、彼の捉え方は違っていた。
「弱さ自体は僕がとても気に入っているものなんです。視点を人類全体まで広げてみてもいいし、個人にフォーカスしてもいい。誰にでもその人なりの脆弱性があります。」
弱さを克服することも受け入れることも、彼はどちらも喜んですると言う。
15歳という若さで単身異国の地へ留学した邓孝慈にとって、この経験は一足早く社会に出ることを意味していた。
一人で生活していく日々の中、彼は自分で自分の衣食住の責任を持たなければならなかった。
それに加え、幼かった当時は今のように多くの物事をわかっているわけではない。ほとんどの場合は、ただ声を押し殺して孤独を消化するしかなかった。
だが邓孝慈ははっきりと言った。
これらはゆっくりと克服して慣れていかなければならないプロセスで、一人や孤独を受け入れることができなければ、成長の一歩を踏み出すことはできないと。
今年の頭、彼は自身初のドラマ作品——《同学们恰恰恰》の撮影を終えた。
事前に演技レッスンで理論を学びシミュレーションもしていたが、それを実際に現場でアウトプットするのは、彼にとってはじめての挑戦だった。
はじめて自分以外の誰かとしてカメラの前に立った時、彼はとにかく「何が何だかわからなかった」と言う。
「何をすればいいのか、まったくわかりませんでした。カメラを見るべきなのか、どういう状態でいればいいのか、すべてがあやふやでした。」
初撮影の時、彼から見える景色はどこもかしこもスタッフ陣と機材類でごった返していた。
足元の道も撮影セットも見えず、時には自分の演技の相手すら見えないこともあった。
このような状況の中、カメラや人の目があることを意識したうえで全力で演技状態に入るのは、初心者にとって簡単なことではなかった。
彼はこういった環境に適応し乗り越えようと努力するのはもちろんのこと、経験豊富な先輩たちや監督に助言を求めることも多かったと言う。
監督は褒めて伸ばしてくれるタイプで、何事も強要してくることはなかった。第三者目線でアドバイスをくれつつも、彼が自分のペースで学習し模索できるよう、余裕を残しておいてくれた。
邓孝慈も徐々にそのペースに順応していっている。
演技というものは、上手くやろうと急ぐものではない。忍耐強く少しずつ磨きをかけていく必要があるということを、彼も十分深く理解している。
“自分の性格とは違う役にチャレンジする”——彼は自身の中で小さな目標を定めた。
自分と似通った役を演じる方が、おのずと感覚を掴みやすいものだ。それでも、自分と遠い役柄は
「どうしてこんなに僕と違うのか、じっくり考えさせてくれるんです。自分がどうやって別の姿になっていくのか……というのが僕にはおもしろいし、魅力的に感じます。」
また彼は笑いながら、冗談めかしてこう加えた。
「まぁ実を言うと、僕も古装して綺麗になった自分を見てみたいんです。」
このような試練さえも楽しむ考え方は、以前ファンが彼に放った言葉「苦楽半々の人生こそ意味がある」と同じ精神のように感じられる。
邓孝慈は当時の心情をこう振り返る。
「当時あの言葉を聞いた時、僕たちの考え方はとても似てると思ったんです。僕にとってあれは一種の肯定と支持でした。」
世の中すべての出来事が良いことだけなはずがない、というのが彼の考えだ。
良いことも悪いこともすべて成長のための経験で、どちらも我々をより早く、より良い方向にステップアップさせてくれるのだ。
日が暮れると、部屋の中には段々と湿った空気が流れ込んできた。
遅れてやって来た朝もやのような湿気が、この明るすぎる午後をちょうどよく中和していく。
少しの寒さと暖かさが入り混じる中、少年は関節のはっきりした指を曲げては伸ばしていた。
その姿はまるで、この世界と人々の視線までをも彼がその手の中に握っているようだった。
涼やか、几帳面、眉目秀麗……。
世間から様々な視線を浴びせられる中、彼はこれまで数多くの言葉で形容され、定義されてきた。
このことについて彼自身はどう考えているのか、我々は会話の中で聞いてみた。
少年はしばらく考え込んでから、正直すぎるくらい率直でかわいらしい回答を出した。
「もちろん、自分の性格の中の一面や、いくつかの特徴に当てはまる言葉はあります。でもそれが全体的な性格のことになると、どうしても言葉では言い表せません。
僕の性格は本当に掴みどころがなくて、僕自身も自分のことがわかっていないんです。」
このようなわかりづらさは、彼が“自身の小さな世界の中で生きている”と勘違いされやすい原因でもある。
確かに、彼にはなにか世界の外に遊離しているような淡白さがある。物事を処理する時や決定する時だけでなく、そもそも彼自身が外界のいかなる影響も受けないのだ。
彼はこの世界の好き嫌いをはっきりとわかっていて、自身の世界の中でひたすら雑念なく専心し続けている。
しかし一方では、少年はまた外に向けて鋭いアンテナを張りつづけている。
彼はまるでこの世のすべてを手中に収めているかのようで、彼の小さな世界は何にも引けを取らないほどの精彩を放っている。
彼に近づけば近づくほど、我々はふいに万華鏡の中に落ちていくような奇妙な感覚を覚える。
内側では光と影が入り混じり、絵柄は刻々と変わっていく。目の前に映るのはどれも彼のようで、またどれも彼ではないのだ。
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記事原文(2022年3月16日公開)
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画像
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動画①予告
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動画②イメージ動画
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動画③メイキング
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動画④インタビュー
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日本語訳:178(@cwei_chudao)