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空気階段第4回単独ライブ「anna」感想

空気階段第4回単独ライブ「anna」が最高でした。

2人の演技力に裏打ちされた風変わりなキャラクターが次々と登場する世界観の豊かさ、耳を疑うとともに爆笑してしまう奇抜な設定の数々、そして各コントに散りばめられた要素が最後のコントで1点に収束していく見事な構成。

笑い・狂気・切なさ・愛おしさといった様々な感情が押し寄せ、見終わった後は「面白いものを見たな!」という充実感と「人生って、何かいいな!」という前向きな感動で胸がいっぱいになる。そんな公演でした。

以下、ネタバレを含む感想です。未見の方はご注意ください。

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完璧な伏線回収と空気階段の優しさ

冒頭でも触れましたが、この公演では各コントのキャラクターや出来事が最後のコント「anna」に再登場します。

「27歳」に登場した全身整形男と「コインランドリー」の警察官は勇気ラジオのリスナー。「メガトンパンチマンカフェ」のマスターは島田アンナの父親で、彼の店を改装して島田アンナの喫茶松ぼっくりが生まれる。「SD」の起こした電波ジャックは島田の告白を妨害し、山崎が自身の気持ちを伝えるきっかけとなる。10年越しで思いを伝えあった2人をロマンチックに照らすのは本公演屈指のクレイジーさを誇る例の電力会社が完成させたイルミネーション。

これだけの要素を1本の長尺コントにまとめ上げた構成の緻密さには感嘆させられます。しかもこれらの人物の再登場がもたらすのは単なる伏線回収の快感だけではありません。

わたしが感動したのは、様々な思いを抱えた”普通ではない”人物が最後のコントで違和感なく日常に溶け込んでおり、誰もその存在を否定されない点です。

1つ1つのコントを単体で見ると狂気の人物としか思えないのですが、全体を通して見るとその狂気が誰かの背中を押したり誰かを癒したりしている。”普通ではない”人物もラジオを通じて誰かと繋がっていて無条件に存在を許されている。このような世界観の豊かさに空気階段の2人が抱いているであろう優しさ、根本的な人間愛のようなものを感じます。

「空気階段の踊り場」とのリンク

この公演では今年で5年目に突入した冠ラジオ番組「空気階段の踊り場」とリンクする要素が度々登場します。ラジオを聞いていれば聞いているほど楽しめる、という言い方もできますがこれは元々100点満点のコントが150点に拡張するという意味なので先にラジオを聞いていなくても問題なく「anna」を楽しめると思います。

・金八は偽善 → #12パチンコ遠征

・ラジオからの告白 → #23もぐら、ラジオから愛の告白

・かたまり、自宅がAV撮影に使われる → #46(公式アーカイブなし)

・個室ビデオの店員は接客が丁寧 → #67思い出の熟女(ラジオクラウド・アフタートーク内)

・銀杏BOYZ『夢で逢えたら』 → #103駆け抜けてもぐら~僕と銀杏の青春時代~

・11カ月で離婚 → #191屁のこき逃げ

「ラジオクラウド」というアプリで過去回を聞くことができるので「anna」をきっかけに興味を持った方は是非聞いてみてください。2人の人生が刻み付けられたドキュメンタリーのようなラジオで本当に最高です。

また、「anna」と直接の関連がないので上記のリストには入れませんでしたが、初期の名物コーナーに「サラリーマンじゃない人の声」というものがあります。

これは社会からこぼれ落ちそうな「サラリーマンじゃない人」(番組での通称は「じゃない人」)の声を街頭インタビューによって拾い上げるコーナー。

まともに生きてるサラリーマンの人でも「あれ、ちょっと適応できてないな」みたいなことって普通にあると思うんですよね。そういう部分を肯定するというか、人のダメな部分を否定しないのが彼らのよさだと思います。
Quick Japan vol.147  90ページより引用
「スタッフが語る空気階段」越崎ディレクター談

「じゃない人」を日常から分断するのではなく当たり前に存在するものとして受け入れる姿勢は空気階段のこれまでの活動に通底しています。鈴木もぐらがコント内で演じる変わった人物がいつもどこか愛くるしいのは、「じゃない人」と同じ目線に立ってその魅力に触れてきた経験が役作りに生かされているからだと思います。

チャールズ宮城は何者か

最後のコントに登場するラジオパーソナリティー、チャールズ宮城。彼は何者なのでしょう。

山崎の「チャールズ、すぐ離婚したしね」という台詞から11カ月で離婚したオープニングコントの男性と同一人物と推測できますが、自分が書いた手紙すら満足に読めないオープニングコントの男性がチャールズ宮城のように明るく流暢なトークをできるとは思えず、どこか釈然としません。

ここからは「こうだったらいいな」という勝手な妄想で時系列的に矛盾するような気がしますが、やはり2人は同一人物で、2人の隔たりを埋めるのは離婚経験による人間的成長なのではないかと想像します。離婚を経て吹っ切れた人物が、同時代に生きているだけで他人に勇気を与えるラジオパーソナリティーへと成長する。これは水川かたまり自身が離婚という悲劇を乗り越え、芸人としてさらなる飛躍を遂げてやろうという決意表明でもあるのではないでしょうか。そしてある種のラジオパーソナリティーの完成形とも言えるチャールズ宮城を相方の鈴木もぐらが演じているところに2人の信頼関係の厚さが垣間見え、ファンとしてはその関係性にもグッと来てしまいます。

終わりに

色んな人がいるし、色んなことが起こるけど、それも含めて人生は素晴らしい。

そう思わせてくれる空気階段のコントが大好きです。

DVDには単独ライブ本編に加え「空気階段の踊り場 記録映像集」も収録されていますので、リアルタイムで「anna」をご覧になった方も是非DVDをチェックしてみてください。



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