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Hukushima

割引あり


Hukushima
YASUKAZU

Tee Tree 2️⃣ 

『2万年後の銀河』
第五部
「Tee Tree」 の下段部分の4話を収録しております。


各話は以下の通り

第五部 Tee Tree

26 第1話 Tee Tree
27 第2話 本当の商人は錬金術師
28 第3話 もう一人のドース
29 第4話 私の彼は宇宙飛行士だった
30 第5話 Hukushima
31 第6話 香りの谷のアルカディア

32 第7話 三人のジータ
33 第8話 第2ファウンデーション

前史

銀河暦 12028年(西暦) 
 ダニール・オリヴォー、宰相を辞任。ハリ・  セルダン、宰相になる。
銀河暦 12038年 
 ハリ・セルダン、宰相を辞任。
銀河暦 12040年 
 ウオンダ・セルダン生まれる。
銀河暦 12048年 
 ドース・ヴェナビリ、死去。ベリス・セルダン生まれる。
 ハリ・セルダンの盟友ユーゴ・アマリル没。
銀河暦 12067年 
 ハリ・セルダンに対する裁判の結果、公安委員会は百科辞典財団をターミナスに放逐。

ごあんない

 ティーツリーは、フトモモ科コバノブラシノキ属の常緑植物。ティーツリー油はこの植物の葉から抽出されたもの。このエキスは精神安定剤として、精神を穏やかにし、思考力を肯定的に物事を捉える手助けをしてくれます。精神的な弱さからくる不安を和らげ、自信を持たせ、活性化させてくれます。何か壁を乗り越えないといけない時、状況を変えないといけない時に力を与えてくれます。

登場人物

アルカディア・ドーニック
リマー・ポニェッツ
エスケル・ゴロヴ
アルシア・ファレル
バイロン・ファレル
アルカディア・マロウ
ジータ・ベリス・マロウ
ジータ・マネルラ・バー
ジータ・ウォンダ・パルヴァー

前回までのあらすじ

 ダニール・オリヴォーの地球探索は、もうひとつの銀河復興の秘策を探るこころみでもあった。

 それとハリ・セルダンの「心理歴史学」の完成とそれへの新たな工夫を見いだすべく、シンナックスにいた若き証古学者、ガール・ドーニックをハリ・セルダンの後継者として仕立てる目的もあった。

 ガールがトランターに到着したやさき、セルダンの裁判に彼自身も巻き込まれ、彼は窮地に陥るのであったが、それはセルダンとダニールが巧妙に仕組んだ大計画のはじまりであったことを知る。

 ガールは、ターミナスへの51番目の執行部員の役を仰せつかったが、実質ナンバーワンの大役であった。

 ガールがターミナス渡航の準備をしている時、またしてもセルダンからの新任務が課せられた。

 ガールは、催眠術に懸けられていたのだろう、気がつけば見知らぬ航宙船のなかにいる自分に気がついた。見上げれば、容姿端麗な女性が立っていた。

 そして親しげにガールに話しかけてくる。

 無事に任務が完了した。放射能防御シールドのカーテンに護られ、二人は荒涼とした地球の大地を踏みしめた。ガールは朧気ながらに地球の光景を眺め、また遊んで走り回るウォンダを目を円くして眺めていただけであった。もう一つの使命など忘れていたように。

 再生の命というものなのであろうか!

 ウォンダが汲んだ水は三つに分けられ、それぞれ透明、紫、黄色のシリンダー・ペンダントに入れられ、そのうち紫のシリンダーはターミナスに避難した彼女の妹ベリスに渡してくれるようにウォンダがガールに頼んだ。

 それから100年が過ぎ、銀河帝国はハリ・セルダンの予測通り、随処に綻びが生じ、衰退の兆候が現れ始める。ファウンデーションは、最初、ファウンデーションの名が示すように名目上、トランターによる銀河帝国の辞書編纂図書館設立財団として、ひっそりとその役目を果たしていたが、ターミナスが所属するアナクレオン星区の独立運動が勃発するやいなや、ターミナスは一気にアナクレオン星区を制圧下においてしまう。

 その立役者がサルヴァー・ハーディンであった。

 そのサルヴァー・ハーディンの活躍の後、ファウンデーションの勢力は強固になり、トランター帝国と正面からぶつかることとなる。圧倒的な勝利の後、ファウンデーションが全銀河の主役の地位を得る。

 グレディアは、ハーディンの家からドーニック家に養子として移る。

 彼女の卓越した能力はラヴェンダー農園にティーツリーを植えたことから、衰亡に移行する銀河の次の担い手になった。そのグレディアの娘アルカディア(後のミーターの主人アルカディアとは別人)に敬意を払い、親交の絆を絶やさなかった貿易商人がいた。彼の名は、ポニェッツ。後にミーターの地球復興の大事業に連なる基礎になる活躍をすることとなる。

 その後、アルカディアとその娘アルシアは、ターミナスな人口の過剰問題を慮って、スミルナに移住する。そこで世話になったのが、馬の首暗黒星団付近のネフェロス星の最高貴族の血脈をもつバイロン・ファレルであって、当時、サマーセックの独裁政権に大して反対派の運動員をしていた。

 バイロンは、アルシアを妻に迎え、サマーセック政権を倒し、スミルナをファウンデーション連盟の一員にさせた。その後は歴史学者として、先祖が惑星ネフェロスから携えて来たと思われる『ジョン・ナックの歴史思想書』という文献を再発見して、その解読に専念する。

惑星ネフェロスを囲む馬の首星団

 アルシアは娘を授かる。彼女は母の名前をつける。また不思議にも母娘は『児童のための知識の書』なる本を見つける。

 「断捨離」の意味は、後のアルカディアと彼女の友人であり、ロボットであるミーターによって、詳しく明らかになる。読者の皆さんのため、ちょっとだけサービスさせて頂きますと、人類の生存には、既存の財産を最小限にして、次の段階に進めるのには、移動しなければならない、という「新しさと移動」の哲学の要諦が求められている、ということです。

 一度、ミニマリストやノマドについて、考察あれ!

 アルカディアは母アルシアにターミナス帰還の提案をする。

 ここでは、ホバー・マロウの活躍は述べないが、ご興味ある読者は、是非とも、アイザック・アシモフの『ファウンデーション』を繙いて頂きたい。

 ここは時代は下って、ホバー・マロウの娘ジータ・マロウの時代の話である。

 死んだと思われていた、オナム・バーの愛娘ジータ・マネルラ・バーは生きていた。マネルラは、彼女の星、シウェナにジータ・ベリス・マロウを招き入れ、おまけにトランターから、パルヴァー家の娘、ジータ・ウォンダ・パルヴァーを一緒に連れて来た。パルヴァー家の初の女の子であった。
 ジータ・ベリス・マロウは、二つあったペンダントの一つを惑星トランターから来た女の子に渡す。
 このことは、いよいよ第2ファウンデーションの出る幕が近づいて来たとの予感を与える。

第1話 Hukushima

福島原発事故


30

 アルカディアお母さん、ターミナスの暮らしはいかがですか? 
 たまにはポニェッツさんとお会いできていますか?

 彼(バイロン・ファレル)って凄く生意気な男なんですよ。と言うか自慢ですけどね。今ではファウンデーション宇宙軍のパイロットに戻ったんです。船を修理することにかけてはファウンデーション星域では右に出るものがいないって言うんじゃなくてね。三つ星と宇宙船のマークに愛着してるもんですから。

 先祖が馬の首星団の暗黒星雲の近くのネフェロス星の最高貴族ということは鼻にかけてはいませんが、今ではすっかり古典学者に変身して、ここ(スミルナ)のセフ・サーマックの独裁政権の残党や宇宙海賊を撲滅したあとでね。

 スミルナの古い寺院で発見した本に夢中になって毎晩、食事のあと、私にそらんじたところを語ってくれるの。嬉しいけど一ヶ月もしたら、私も覚えてしまったわ。今ではそれが呪文にも聞こえてきて彼が始めると眠くなってしまうのよ。どうしましょう。私には最高の夫よ。恥ずかしいほどよ。

 お母さん。ファウンデーションを次の時代に進めなくてはならない、と彼は言ってるわ。原子力で衰退する銀河を抑えて来たんですが、ファウンデーションがホントに銀河を復興するのには原子力を超えないといけないんですって。なぜなら、銀河の衰退の原因は、驕れる人類の科学技術にあったみたい。混沌はそこから生み出されたらしいの。
 
 以下、彼が発見した文書とやらをそのまま写して添付いたします。できましたら、ポニェッツさんに読んでもらってくださいね。

 「人類の進歩とは、遺伝子内に前もって組み込まれた自滅を覚悟した必死のもがきと言ってもいいような装置なしには機能しない。いつの限界でも、例えば、水が蒸発して水蒸気になる100℃を水の沸点というように。ある飽和点がある。
 ニフ人もその事態を何度も繰り返して来た。二十一世紀初頭に起きたコロナ大禍の政府の迷走振りには驚きを通り越して悲しくまでなった。
 その原因は、私の見解は明白である。最大の誤謬の原因はフクシマ原発事故時の政府関係者の対応に如実にあらわれた。すなわち、あの原発事故の反省はゼロであった。彼らは、再使用棒の処置、放射能を含む汚染水の海洋垂れ流し、メルトダウンした炉芯の処置などの最終的解決策を放棄し、解決不能の事態を被覆しようとした。
 そして誰もが責任をとろうとしなかったし、責任を転嫁しようとした。
 いまだに一世紀以上も経つのに総括が一切されてない。
 そこからニフ文化の沸点が始まった。
 ニフ文化が滅びるか、羽化するかはこれからの覚悟にかかっているように思う。『ジョン・ナックの歴史思想書』より」

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