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ミーターの大冒険 エピローグ 第5話 「敵を欺くには味方から」

ああらすじ

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ミーター ハニスさん、僕のデータでは、サルヴァー・ハーディンの時代とミュールの時代とでは約250年の隔たりがありますが、彼ら同士の関係について何かの真実があると思っているような口振りですね。よかったらこの僕に教えてください。
 大事なことなんですね!

ハニス そうなんだ。ここに身を寄せて貰ってから、そこにターミナスの秘密の根幹部分が隠されているのにやっと気がついてきたんだ。ベイタ文書にハーディンの真意について次のような記録がある。
 「たぶんそれは、心理歴史学者だったら事の真相を悟ったからでしょう─それも、悟るのが早すぎてハリ・セルダンにとって都合が悪かったからでしょう。しかし、われわれは心理歴史学者ではないから、このようにあちらこちらつまずいて歩き、五里霧中でさっぱり真相をつかめずにいる。これがハリ・セルダンの狙いなのですよ」。
 このラベンダー畑のおかげでこの霧が晴れて来た感じなんだね。
「アルーリンの真実」というやつがねぇ!

ミーター アルーリン?あの心理歴史学者ですか。ウォンダとステッティンの仲間第一号の。あのハリに「礼儀正しい盟友」と呼ばれた「ボー・アルーリン」ですね!彼とハーディンの関係について何か?

ハニス 大いにありそうなんだ。ハーディンは根っからの政治人間であったと記録されているが、実はアルーリンの元で心理歴史学の真髄を叩き込まれたんだ。アルーリンは彼を唯一の心理歴史学の後継者と任じていた節がある。

ミーター それがミュールにどういう関係があるんですか、ハニスさん?

ハニス そこなんだよ!ターミナスが生き残り、徐々に銀河の覇権を握るきっかけをつくったのがハーディンなんだがね。そのプロセスというのは、科学技術と宗教という一見場違いにみえる組み合わせによって最初段階は近隣のアナクレオン星域を奪取して行った。銀河全体が原子力技術の忘却によって衰退していくのを横目に見ながら、ターミナスだけが隆盛して行った。他の世界は必然的にターミナスの科学技術の助けだけに命を繋ぐ活路のように仕組んで行った。巧妙なからくりを造り上げて着実に遂行して行った。
 しかしその巧妙な仕組みもついに最近、機能してない。

ミーター ハニスさん。どういうことですか?ハニスさんは、アルーリンとハーディンがそういう筋書きを最初から仕組んでいたと勘ぐっているんですね!

ハニス ミーター君。お見事!ドンピシャだ!流石ホームズの二代目。そこまで分かっていれば、あとは簡単。あとはミュールのことだけだ。

ミーター ハニスさん。ごめんなさい。ハーディンとミュールの関係がもうひとつわかりません。お願いです、ご説明してくれませんか。

ハニス うん、そこなんだよ。「ホルレッゴールの戦い」って分かっているよね。ミュールの勝因は、よく彼の強烈な精神作用力と言われているが、実は原子フィールド抑制機の意味合いの方が重要な気がしている。


俺の勘繰りというのは、彼はファウンデーションの科学技術、特に原子力技術に対して、もっと正しく言うなら、原子力を極度に嫌悪していたと理解出来るんだよ。

原子力抑制装置によってファウンデーションの原子力宇宙戦艦は完膚なきまで破壊され、ターミナスはミュールの手に落ちる。ファウンデーションの完全敗北は過剰なまでの科学技術に対する依存にあった。現在の日本もそれに似てるのでは。


 その意味で、アルカディアの見解は的を得ている。ファウンデーションの弱点をミュールは的確に利用したということ。



ミーター なんですって!それじゃ、ミュールが正義でターミナスが悪だと言うんですか?
 ガールとアルーリンは私たちターミナスを欺いて来たですって!
 全くの逆??
 にわかには信じられません。ハニスさん!あなたは正気ですか?何のために今までターミナスは戦ってきたんですか?この銀河を復興し、正義を打ち立てるためじゃなかったのですか?あなたの方こそでっち上げじゃあないんですか?

ハニス ミーター君。そんなに怒るなよ。ロボットならもう少し冷静になったらどうなんだ。もう一回、最初からシュミレーションをしてみないかい。冷静に冷静に、真相究明するのが推理探偵の肝だろう。

ミーター わかりました。ごめんなさい。アルカディアも言ってました。「宇宙の謎は神妙、そう簡単には真相は掴めないものだ」と。
 それにしても!ガールとアルーリンの目論見は深淵過ぎます。ロボットの僕にはその論理は、全く把握困難です。その目論見を見事にベイタは深く理解した唯一の人物。そしてアルカディアは祖母の遺志を継いだと。

ハニス ミュールについてだがね。彼の威力は、強烈な精神作用力だと言われているが、彼の存在の由来が、今問題になって来たということなんだ。ミュールの存在を深く探れば、きっとその先に我が人類の故郷、最古の(惑星)世界が見えて来るに違いない。そして、さらにその先に銀河復興が。

yatcha john s. 『ミーターの大冒険』エピローグ 5「 敵を欺くには味方から?」

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