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ミーターの大冒険 第九部 エピローグ 第5話 異民族の相違はありがたいものである

187第5話異民族の相違はありがたいものである
ミーターの大冒険
第九部
エピローグ
第5話

異民族の相違はありがたいものである

あらすじ

 ファウンデーション暦492年(西暦25059年)末、いよいよミーターとイルミナを載せたファー・スター2世号は太陽系の第4惑星の火星でついに、待望のダニール・オリヴォーに面会できた。

 それからダニールの月面基地から地球の放射能除去溶液と装置の準備を調(ととの)えて地球に降下して行った。

 人類の故郷の星系。懐かしい星、地球。
 
 かつて、カビレ星系と言われていた太陽系。かつてアタカナと言われていた地球。

 R・ミーター・マロウは、不死の従僕ダニール・オリヴォーに助けられて、主人アルカディアの志しをいまや成就させようとしていた。

 彼らの地上での行動はミーターは別として、2時間と制限されていた。

 そのイルミナのリードによって北上したアース・オービターは、無事にニフのフニ山頂上に着いた。

 放射能除去に必要なポニェッツ仕様のラヴェンダーエキスとオーストラリア産のデオライトの混入液を水蒸気発生装置でフニ山頂から昇化させ、地球上の各地山頂から同様に実施させていった。

 案の定、双子座流星群は降ってきた。この年は例年とは違い、幸運にも何ヵ月も継続した。

 流星群は成層圏に拡散している特殊水蒸気の雲に注ぎ、水蒸気を雨化させ、地上に雨を降らせ始めた。

 ミーターは、北アメリカ大陸の頂き、南アメリカの頂きを踏破し、残るはアフリカ大陸、ユーラシア大陸、オーストラリア大陸をも踏破していった。

 その間にイルミナは、アルファのモノリーさんのお土産である粉末の分析が完了していた。

 その粉末の正体は、ナノサイズに加工した地球上のほぼ全種類の植物の種だった。雨が降れば、地球の緑化が再生する。

 ミーターがその特殊蒸気発生機の最終段階でかつてオーストラリア大陸と呼ばれていた地域のタウンゼント山頂で早朝シルクベットから起き上がった時だった。しっかりとして威厳のある響きが頭上からあった。

 ダニールはミーターに、2つの任務を依頼した。

 地球の古代の伝説「ノアの方舟」にあるような大量な雨が1ヶ月以上も地表に降り注いだ。

 その結果、大気中の放射能濃度は、驚くほど減少していった。

 1番目のダニールからの任務依頼を終了後、ミーターは、約束していたミーターはニフの中央東に位置する海岸から切り立った小高い山頂に夜明け前に到着した。

 そこにダニールとペイリー・リャンが待ち受けていた、3人は、海中から浮かび上がる緑色の光を目撃する。

 それからほどなく、東の水平線上に陽が昇って来た。

 ダニールは、ミーターに「カビレ」の本当の意味を解き明かす。そして地球放射能除去の段階の終了を宣言する。

 ダニールはミーターに幼女ペイリー・リャンをミーターにファー・スター2世号の新メンバーに加えてもらうよう頼む。

 彼らは、アルカディアの残りの悲願に向かってファー・スター2世号に改めて乗り込む。

 ミーターは、自分の胸ポケットの秘密を隠しながらも、ペイリーのイヤリングに注意がいく。

 ペイリー・リャンはまた彼女の名前の由縁も解き明かす。

 そこから、イルミナの歴史消滅以前の情報量が異常に増えはじめ、またたくまに全銀河の図書館にそのデータを拡散させていった。

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イルミナ ミーターさん、「ベイリー、ペイリー」の検索のおかげで私の情報・データ掘り起こし機能が異常に開花したみたいですよ。
 
 たとえばですよ。さっき23000年前は、当時の地球では、22世紀と呼ばれていたとか、イライジャ・ベイリーは36世紀初頭のアメリカ、ニューヨーク市の刑事だったとか、あの『児童のための知識の書』は、コンポレロンのニューヤマブキで28世紀の中頃出版されたとか、ね。

ミーター でかしたな。これもペイリーさんのおかげでだな。

ペイリー ミーターさん、それは事実とは言えないですよ。全部、イルミナさんとパパの相互交渉の結果ですよ。

 じゃあ、イルミナさん、あなたの機能をどんどん拡張・拡散させることが必要ですね。

イルミナ それは任しておいて。すでに全銀河のファウンデーション傘下の図書館には、逐次接続、拡散を開始してます。
 あとは、残りのファウンデーションと連繋していない星々の図書館に承諾交渉を待つばかりだわ。
 こうなると私一人の作業量には限界がありますので、今スミルナ、ヘリコン、シウェナ、シンナックス、コンポレロンやシンナに協力を依頼し始めたわ。

ミーター 流石だな、イルミナ。なんという先見性だ!

 ところで、そのベイリーさんのアメリカというところが気になるね。

ペイリー どういう点でですか、ミーターさん?

ミーター うん、ペイリーさんの由来とはちょっと、違うからさ。
 イルミナ、そうだろう、ジョン・ナックについては、おまえはさっき、ニフとか言ってたよな?

イルミナ たしかにそうです。ペイリーさんの遺伝子のなかにはおそらくニフ人の血が多く入ってます。
 因みにジョン・ナックは23世紀の人よ。彼は地球上の至るところに行きましたけど、出身はオールドヤマブキといわれてます。

ミーター じゃあ、ダニールは、バランスを考えていたんだな。
 以前話した、ニフ人とハプロタイプEの人々とかね。

イルミナ ミーターさん、適切なご理解ですね。相当いい線だわ。

ミーター そういう言い方は、俺の理解が完璧じゃないとでもいうのか?

イルミナ いいえ、おっしゃったことは正確よ。それにもう少し付け加えた方がいいと思ったものですから。
 
 ジョン・ナックの思想の原点は、アルフレッド・ノース・ホワイトヘッドです。彼の思潮に「人間の魂というオデュッセウスに刺激と材料を与えるために、人間社会間の相違が絶対必要である。異なる習慣をもつ他国民は敵ではなく、ありがたいものである」という1文があります。

 おそらくダニールさんは、そういうセンスでアジア系の遺伝子の濃いペイリーさんに西欧系の名前を付けたんだと思いますよ。

ミーター 卓見だな。いやはや感服するな!

イルミナ そうでもありません。
 そのことについて少しだけ捕捉したいことがあります。

ミーター よく聞いているから、続けたまえ、ワトソン君。

イルミナ ここでは、もっぱら「温故知新」というモットーに規準を置くアジア型の旧文化出身のジョン・ナックと新文化出身のイライジャ・ベイリーとが対比されておりますが、その地球暦17世紀からとされているアメリカ文明といっても、ヨーロッパから移植された以前にもすでに人類は定住していた、という点が見過ごしにされやすいのです。
 つまり、アメリカンインディアンの精神性は新しい移住者によって根絶されたのではなく、今回私たちが経験したように、ゆっくりと徐々に再生して、後のアメリカ人に移植されて行ったと考えてみるべきなのですよ。

ミーター なるほどだ。ちょっとだけわかって来たぞ。いわば、低開発と開発の循環、相互補完というわけか。素晴らしい見識だな。よーくわかりました。有り難う。アルカディアの魂(たましい)君。

イルミナ ミーターさん、たら。お見通しだったんですね!

※新たなミーターの悟りは新たな冒険を誘う。

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