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平和条約

葵ちゃん。隣街へ午後からのお出かけ。フラフラと駅ビルを回り、ちょっと休憩とカフェへ。街行く人を見ながら、おじいのことを考えてみた。おじいはあの田舎町で、退職してから畑とテニスでこの20年やってきたんだよな。葵ちゃんとランチやお茶に行くようになったけれど。おじいの生活の幅を広げてもらいたい、と余計なおせっかいを葵ちゃんはして、おじいを呼び出した。おじいは「3時には着く」と言った。3時2分前。おじいがカフェに来た。おじい❗️エライ‼️車で30分のちょっと都会へ来たおじい。このちょっと都会の街もおじいには苦手かもしれない。

おじいは葵ちゃんが飲んでたカフェモカを注文。「なんだこれ、バニラが乗ってる」「生クリームだよ」ここからしておじいの知らない世界がたくさんある。

葵ちゃん。さっき見てたバックをもう一度見てから帰ることにした。黒のシンプルなバックが欲しかった。買おうとするとおじいが「いいよ、お父さんが」と買ってくれたー‼️おじい、ありがとう❗️

駐車場までの道、葵ちゃん、とっても嬉しかった。いつもは「ボーナス渡したからそれでいいでしょ」なのに。
「おじいの言うこと聞きます」と葵ちゃんは言った。

帰りの車の中、お蕎麦でも食べて帰ろうか、となり、お店を探していた。ない。おじいは「ラーメン屋は若い人がすぐ始められるから、多いんじゃないの。そばは手打ちだから、修行が大変だから蕎麦屋は少ないんだ」と言った。ラーメン屋だって修行するよ、なんかアホな発言と思ったけれど「そうだね」「そうだね」と言っておいた。

おじいは母にいつもバカにされていたし、けなされていた。それを子供の頃から見て育った葵ちゃん。葵ちゃんもおじいをバカにしていた時もあったけれど。

叱る度におじいの悲しそうなショボくレタ目をかわいそう、と思っていた。おじいは人のせいにして逃げる癖がある。人としていけない。それを叱っていた葵ちゃん。おじいのような人は1度2度言ったくらいではわからない。叩き込まないといけない。でも。

もう十分じゃないか。

もう十分じゃないか。

おじいを労ってあげよう、と思った7月上旬。おじいに対していい風が吹き始めたのかもしれない。

帰り道、パン屋さんによって「おじいも買っていきなよ」「うん」。いつものように「お父さんはいい!」と言わなかった。刺激が柔らかいと反応も柔らかい。母がおじいに感謝の気持ちを持って接していたら、うちの家族はバラバラにはならなかったかもしれない。

葵ちゃんとおじいの話をすると「親子だね~」と言われる。冷戦をして連絡を取らない時期、歩みよりの時期、また戦争、歩みより、また戦争、歩みより。他人だったら、「もう2度と会いたくない」と言えばそれまで。

葵ちゃんとおじいの間に戦争がもう起きませんように。葵ちゃんおじい平和条約の証の黒のバック。

「世界の危機を自分の危機に照らし合わせて考える」

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