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「競馬の歴史」を学ぶ ~JRA顕彰馬にみる出走回数~

【はじめに】
この記事では、JRA顕彰馬(殿堂入り)の「半期ごとの出走回数」をみていき、レース間隔の変遷などを見ていくことにしましょう。

0.記事を書くキッカケ

昨今、年度代表馬を争う古馬などは、以前に比べてレース間隔が空いたり、春/秋競馬で2戦ぐらいしかしない様な印象が個人的にはありまして、では昔から比較してみて、実際にそうなのか調べてみたくなったのが、本記事を書くことにしたキッカケです。

JRA顕彰馬のうち、今回対象としたのは「平地のサラブレッド(系)」です。

※それ以外の馬のイメージが沸かない人の方が多いかとは思うので、具体的に挙げると、アラブ唯一選出の「セイユウ」と、障害馬で(現状)唯一選出の「グランドマーチス」です。

こうした名馬たちが、「半年」ごとに何回ぐらいレースに出走していたかを並べることで大まかなトレンドが追えるのではないかと考えました。
(本当なら、年度代表馬全頭とかでちゃんと集計したら良いのでしょうが、そこまでの体力がなかったのでできる方は是非お願いしますww)

1.出走回数データ(表)

具体的な出走回数のデータは以下の表のとおりです。

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横に時期を取っており、「3上」は3歳上半期(1~6月)を意味します。そして、各セルの数字が「出走レース数」となります。

なお、デビュー時期によって出走数が大きく左右される「2歳」時と、母数が少ない「6歳」以降については除外しています。

(1)「3歳」編

上の表だけでは見辛いので、簡単にではありますがグラフ化してみました。青色が「3歳の上半期」で、オレンジ色が「3歳の下半期」のグラフです。この図を見て一目瞭然なのは、傾きの急さです。深堀りしていきましょう。

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まず、「上半期」に関しては、単純に直線を引くと「ほぼ横ばい」でした。ここ半世紀は殆ど「3~5回」で推移していることが分かります。イメージ的には、「トライアル1~2回→皐月賞→(昔のNHK杯)→ダービー」という王道路線が踏襲され続けていることが分かります。

戦前は、現在でいう「2歳戦」がなく、全ての馬が3歳以降にデビューをしていたという経緯に一言だけ触れておきましょう。

一方、「下半期」に関しては、明らかに右肩下がりの線が描かれています。1950年代までは「少なくとも5戦」でしたが、それ以降は「多くても5戦」で、殆どが3戦となっています。これもイメージ的には、
「神戸新聞杯→(京都新聞杯→)菊花賞→ジャパンC or 有馬記念」などと、菊花賞までのトライアルが3→2→1回などと減少してきていることが影響しているように思います。

(2)「古馬」編

続いて、古馬も同じ要領で見ていきましょう。系列が4つに増えるので少し点や線が増えますが、雰囲気を感じ取って頂ければ十分です。

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4歳時は上・下半期とも、ほぼ「3歳時」と同じトレンドを辿っています。ちょうど「(大阪杯→)天皇賞春→宝塚記念/(トライアル→)天皇賞秋→ジャパンC→有馬記念」といった古馬王道路線をたどるとこれぐらいです。

他方、5歳になると現役を続行する馬が減ることに加えて、怪我や引退などで「シーズンを皆勤」する事例が各段に増えます。その結果として、直線がほぼ真横、或いは5歳上半期に至っては右肩上がりとなっています。

※強いて挙げるとすれば、技術の進歩や4歳までの出走回数の減少に伴い、活躍期間の長い馬が増えたことで、5歳でも無事是名馬な活躍を遂げることが昔に比べて増えているという見方もできるかも知れません。(推測)

2.ステップアップ!~怪我などを除外してみる~

ただ、この表の中には、順調にシーズンを皆勤できなかった事例が多く含まれています。具体的に言えば、満足な状態でレースに臨めなかったトキノミノルやマルゼンスキー、怪我によって戦線離脱をしたトウカイテイオーなどが含まれているのです。

そこで上に示した表から、比較的順調にレースを使えなかったと伝わる時期を除外したものを作り直してみました。それがこちらです。

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一部、残したものもありますが、1~2回出走のみのシーズンの多くを、表から除外してあります。外した部分は黄色く網掛けをしてあります。

こうすることでグラフにも影響が出てくるのでしょうか? 再検証です。

(1)「3歳」編’

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先ほどは、ほぼ真横だった「3歳上半期」についても、それなりに角度が付きました。この結果、現在は「上半期に4回、下半期3回」ぐらいが平均値だという見方になってきます。まさに、

「共同通信杯→弥生賞→皐月賞→東京優駿/神戸新聞杯→菊花賞→有馬記念」の様な路線が鉄板であることが、この調査からも浮かび上がってきます。

(2)「古馬」編’

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古馬についても、傾きに少しずつ変化が起きています。「5歳上半期」も、ほぼ横這い(若干の右肩下がり)となったほか、「4歳上半期」と「5歳下半期」がほぼ同じ形を取っているのも面白い気がします。

ただ、現代の着地点としては、大差なく「半期に3回」程度、出走しているという結果に落ち着きました。

春・秋の古馬三冠路線などを思うと、春緒戦を「大阪杯」や「ドバイ」、秋緒戦を「天皇賞(秋)」など、いきなりG1を使う一流馬が増えてきている様に感じましたが、それが多少は裏付けられた(?)様な感じです。

(1)と(2)をまとめると、「3歳春」は4回程度、「3歳秋」から古馬になってからは半期に3回程度出走するのがオーソドックスという結論に、ちょうど至った様に感じます。

3.令和の名馬たちはどうなのか

ここまでに示したのは、言わば「昭和・平成」時代のデータです。

まだ、JRA顕彰馬にはなっていないものの、令和の時代に走った名馬たちもいずれは殿堂入りを果たすこととなっていくでしょうから、それに先んじて出走回数のデータをみておきましょう。

3歳時 4歳時 5歳時 生年   馬 名
3 3 4 3 3 2 2014 リスグラシュー
3 2 3 2 3 3 2014 スワーヴリチャード
2 2 3 2 3 3 2015 ノームコア
2 3 1 2     2015 フィエールマン
3 2 2 2 2 2 2015 アーモンドアイ
3 1 3 3 3 3 2015 ラッキーライラック
2 3   2 2   2016 ワールドプレミア
2 1 2 2 3   2016 グランアレグリア
2 1 2 3 3   2016 ラヴズオンリーユー
3 2 3 2     2016 クロノジェネシス
2 3 1       2017 コントレイル
3 2 2       2017 デアリングタクト

こうしてみると、ウオッカ以降は、殆どの馬が半期に「2~3回」しか走っておらず、何と「3歳春」にも「2~3回」という馬さえ目立ちます。

こと一流馬に関しては、「2回でも普通、3回も走れば寧ろ多い方」というのが令和時代の新常識なのかも知れません。20世紀の頃と比べると隔世の感がありますね。

【おわりに】

ここまで、印象と殆ど違わないことを確認する作業が中心となってしまいましたがww

ここで「再考」の余地があると感じているのが「レーシングカレンダー」、特に、一流馬の路線に対する「レース形態」が、旧態依然としていないかということです。

2021年の春競馬だけでも、「グランアレグリア」の中2週での安田記念や、「コントレイル」などの宝塚記念回避など、様々な「残念なニュース」に触れるたびに、少し気になっていたので、次の記事ではもう少し、そこらへんを見ていければなと思います。

それでは、次の記事でお会いしましょう、Rxでした、ではまたっ!

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