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月またぎレビュー「3月→4月」

「恵比寿映像祭」から始まり、「アートフェア東京」「3331アートフェア」「ファッションウィーク」など、短期間に凝縮された(アート)イベントが多かった3月。また、年度末3月で終わってしまい「月またぎ」になるものが少なかったですが、一方ではこれからの継続的な展開が楽しみなものを見出せたひと月でした。

【アート】
山口晃展「前に下がる 下を仰ぐ」
@水戸芸術館
漫画や九相圖(くそうず)、さらにツイッターのタイムラインをシミュレートしたものなど「読む」作品を、動線の仕掛けで目に入る順番をコントロールされながら鑑賞するという、時間の流れや体験の不可逆性を強く感じさせる展覧会でした。ある意味実に不自由な展覧会なのですが、山口さんのコンセプチュアリズムとユーモアが十分に働いていて、とても楽しむことができました。5月17日(日)まで。
それからぼくの行った期間(4/5まで)は展示室の途中に「高校生カフェ」なるものがあって、コーヒーを飲んだり一息つけます。展示室内との雰囲気のギャップやカフェに至る裏道感など、展覧会の中にあって山登りの途中の山小屋のような役割を果たしていました。

いわき回廊美術館
現代美術家の蔡國強がいわきの人々と手がけているプロジェクト。里山に木製の回廊が設置されていて、まずいわきと蔡國強の深い関わりを紹介した展示が、次に小中学生によるポスターコンテスト応募作品などが展示されています。また回廊を抜けた先には廃船を用いた蔡國強の作品と、有名な崖っ淵に立つ恐怖のブランコが設置されています。
さらに「いわき万本桜プロジェクト」が同地ですすめられていて、現在2000本の桜がいわきの里山に植樹されている、とのことなんですが、ぼくが行った3月下旬はまだ桜前線が到達しておらず。。。4月中旬以降には見頃を迎えるそう。これからですよ!!

「Don't follow the wind」展 **リンク先、音声が流れます
Chim↑Pom
が企画した、福島・東京電力福島第一原子力発電所付近の帰還困難区域で開催されている見ることのできない展覧会。期間は2015年3月11日から既に始まっていますが、展示作品は帰還困難区域ないにあるため、立ち入り制限が解除された後にならないと見ることはできないというもの。
で、この展覧会について当然生まれてくる疑問について、グランギニョル未来のひとりとして参加している椹木野衣さんはツイッターでこのように述べています。どうなってくんですかね。

出品作家などはこちらから。 → 「原発付近の帰還困難区域内で「見ることができない」展覧会、Chim↑Pomら12組が参加」


【映画】
「花とアリス殺人事件」岩井俊二 監督

2004年公開の「花とアリス」、その前日譚として花とアリスの出会いをアニメーションで描いた新作です。「花とアリス」の未見の人は見ないまま行くのがおススメ。元の作品の経験がなくても岩井俊二監督の新作としてとてもよかった。ロトスコープのアニメーションなので仕草が細やかかつデフォルメされていて、そこだけでも何度も見たくなります。ちなみ殺人事件は起こりません。

「幕があがる」 本広克行 監督

どの子がももクロなんだかもよくわかってなかったんですけど、今までで一番いいももクロだったんじゃないでしょうか、妙なコラボなんかするよりも。。。ももクロのことはそれほど知らないのでアイドル映画としては見れなかったし、テーマになってる高校演劇にも思い入れなかったけど、とてもいい映画でした。


【テレビ】
「四月は君の嘘」

「SHIROBAKO」
年度末でクールまたぎが少なく、3月から4月に継続して見るものがほとんどなくなってしまったので、ともに最終回を迎えたこの二作を。これまで特に話題にしませんでしたが、もちろん見てました。どちらも彼ら/彼女らがある目標に向かって紆余曲折しながらも何かしら実を結んでいくという王道ストーリー。主人公たちのきらめく姿がまぶしくて、「いい作品」という意味でこの二作は今季の中でも出色でした。
しかし、「主人公たちのきらめく姿がまぶしい」系アニメとしては「ちはやふる」「銀の匙」「ばらかもん」「げんしけん 二代目」が最高なんです。今回の二作もその域にまでは至らず、、、と思います。


【ライブ・舞台】
「東京ヘテロトピア」のアプリをリリース Port B(高山明)
フェスティバル/トーキョー13でPort Bが発表した「東京ヘテロトピア」がアプリになりました。
「東京ヘテロトピア」は、東京の中に潜むアジアを旅するというコンセプトの演劇作品。F/T13の上演時はガイドブックを片手に13ヶ所のスポットに赴いて、ラジオでアジアの国々とその場所とを結びつける内容の朗読を聴くという体験が提供されました。この作品を東京オリンピックに向けてスマホアプリ化しスポットを都内に100以上設置するという計画を、Port Bの高山明さんはその上演時から語っていました。それが実現へと動き出した形となります。
今回のリリースではまず、F/T13で上演したときの13ヶ所がアップされています。用いられる書き下ろしテキストには、先日芥川賞を受賞した小野正嗣さんも参加。着実にスポットを増やして、「観光アプリ」として多くの人に利用されるといいなと思います。


【本】
『後美術論』
椹木野衣
「音楽と美術の結婚」を見立てに、新しい美術史を立ち上げる覚悟のようなものを感じます(ツイッターでの発言も合わせて見ると特に)。これまでも椹木さんの評論には既成のジャンルの破壊が根底にありましたが、2011年をまたいだ今作でより先鋭化しているんじゃないでしょうか。さらに発売直後に版元が倒産するなど、いろんな意味でメルクマールになる一冊だと思いました。
また、その造本にも驚かされます。本文中の字体とかにもデザインの機微が行き届いていて、それだけで紙の本を買う楽しみを満たしてくれるようです。

選書フェア「出発」
某書店で「出発」をテーマにした選書フェアをやっていたので、ぼくも勝手に選書してみました。気持ちを新たにする際の参考になれば。

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