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月またぎレビュー「2月→3月」

ここでは原則、この記事を見た人が実際に行けるように書いていこうと思っています。ということで、月またぎを意識して一応タイトルを決めてみました。
さて、2月から3月へ。イベントの多い時期でぼくも大忙しです。会期が短いイベントも多く、単発のものも少なくないので、スケジューリングが大変な一ヶ月(は、さらに今月も続きます)でした。


【アート】

「恵比寿映像祭 -惑星で会いましょう」 @恵比寿ガーデンホール 他
恵比寿で毎年開催されている映像作品中心の芸術祭。昨年は人間の「内」なる部分や根源に焦点をあてたプログラムだったのに対し、今回はそれに呼応するかのように人間が「外」に求める部分や「未来を見る」ということに対する考察が試みられているように感じました。
個別のプログラムについては、レセプションで気になったものを記事にしてますのでこちらを。→ 「恵比寿映像祭の予定を立てる」
追加、知人からこちらも激オススメされたので見に行こうと思います。
「共鳴する視線――ブラジル実験映画」

「フィンランド・ヴィデオアートの現在形:AV-arkkiより」

3/8(日)まで。現在個人的な予定の達成度は、2日間行って、80%くらいな感じです。。。

「蜷川実花:Self−image」 @原美術館
『ノワール noir』
は元々好きな写真集でしたが、それがようやく写真展として結実。蜷川カラーと言われる独特の色彩、蜷川実花がなぜその色彩を選んでいるのか、今回の展覧会でメインに据えられている「noir」のシリーズを見るととてもよくわかります。写真として捉えられた色が「自然」なのか「人工」なのかという問いが何度か反転した後、被写体の「Self-image」が立ち上がってくるよう。3/10(火)まで。

「置かれた潜在性」 菅 木志雄 @東京都現代美術館
物理的な不安定さが「現在」の一瞬先を想像させ、接点への異常な没入感がインターネット的コミュニケーションの隠喩とも読めます。ホワイトキューブの空間性も生かされ、「モノ」によって時間と関係性という観念が確かに紡ぎ出されている良展。HeHeから出版されたカタログも、モノ派の重要作家のモノグラフとして一読の価値あり。3/22(日)まで。
一方、同時期にヴァンジ彫刻庭園美術館で開かれている個展は、ホワイトキューブから出た空間作りがされているのではないかと期待。3月中に行く予定です。こちらは3/24(火)まで。


【映画】

「さらば、愛の言葉よ」 ジャン・リュック・ゴダール

ゴダールの3D。先月見ると宣言してましたが、結局2回見ました。ぼくだけでなく、どうやら複数回見ている人も多いよう。
1回目はかなり寝てしまい、ある程度3Dであることに注目して見ようとはしていたんですが、プロットは全然追えずモヤモヤが残りました。
2回目、一応全編見れましたが、まぁやはり話の筋は全然入ってきませんでしたね。。。とはいえ、身体中の感覚がバキバキとこじ開けられるような特異な映画だったことは間違いない。もっと知りたい映画です。

**最近邦画はあまり見ていませんでしたが、近々見たいのは邦画、この3本。
「幕が上がる」

「花とアリス殺人事件」

「世界の終わりのいずこねこ」


【テレビ】
「ログ・ホライズン」 @Eテレ
2014年の振り返りでも取り上げた、MMORPGを舞台にした異色作。シリーズはまだ続いています。いろいろ興味深い点はありますが、最近登場したキャラクターが、主人公の別アカウントなのではないか(作中ではまだ言及されてませんが)、という展開になっていて目が離せません。

「ハートネットTV -ロボットより愛をこめて」 @Eテレ
昨年メーカーのメンテナンスが終了したAIBOの修理を巡るこの番組から、人間とロボットの関係が次の段階へと向かっていっているのを感じました。電機メーカーなどをリタイアした技術者たちが、AIBOの修理に取り組んでいるそう。3/5 1:05~再放送なので是非。
あと、人間とロボットの関係だと『イヴの時間』が名作なので見てください。 


【音楽】
「yet」
 クラムボン

新曲、久しぶりに買いました。なんと今回は菅野よう子がストリングスのアレンジを手がけているんですね。クラムボンの躍動感と菅野よう子の洗練がミックスされててよい!
また、ユリイカの最新号でも特集が組まれています。

「アジアン・ミーティング・フェスティバル」 @アサヒ・アートスクエア
このライブ、見逃さなくて本当によかった。アーティスティックディレクターの大友良英さんが示したゆるやかな連帯が星座のように像を結んでいました。そこには他のどこにもないアジアの姿が立ち現れていて、すばらしい演奏と空間でした。
これは「ENSEMBLES ASIA(アンサンブルズ・アジア)」のプログラムのひとつ。今後の活動にも注目していきたいです。大友さんのツイッターからひと言を。


【舞台・パフォーマンス】
「+51 アビアシオン,サンボルハ」 岡崎藝術座 @STスポット
作・演出の神里雄大自らの出自を背景にしたテーマで、歴史上の人物を登場させてもいますが、脚本によってそのテーマを掘り下げるというよりは「語り方」に対して意識を傾けた作品だと思いました。
で、まだなんとも言えないんですが、神里のステイトメントにあった舞台作品への演出家の影響力についての考察と、奇しくもこの翌日に見た、神里演出の高松次郎「台本」の上演に、その辺りがにじみ出ているように感じています。
「+51 アビアシオン,サンボルハ」は、3月中に熊本→京都→東京公演が残っています。


【本】
『ズームイン、服!』
坂口恭平
坂口恭平の新刊は、雑誌『POPEYE』に連載していた「服飾考現学」の書籍化。「服飾」というテーマを一応は装いながら、独自の世界(経済圏)を生きる人々のサバイバルの手段が巧みに掬い上げられています。
坂口恭平の思考はやはり「考現学」と結びついてこそ明晰に理解されるんではないかと。今回は「観察」を起点として思考が展開されていて、著者の持ち味が存分に発揮されています。

『沖縄彫刻都市』 尾形一郎、尾形優
新刊情報ではチェックしてましたが、本屋で実物を見て即購入。
沖縄の都市景観の中に、戦後アメリカの統治によってもたらされたコンクリート建築と、コンクリートブロックを用いた能勢孝二郎の現代彫刻を見出す写真・論考集です。これら建築と彫刻の掲載は順不同ですが、どちらも破壊と創造に同時に突き進むようなラディカルさをもっており、「彫刻都市」を鮮やかに提示しています。
奇態として立ち現れる造形を道しるべに、沖縄特有の文化の堆積を読み解く、写真集としても論考集としても本格的な一冊。

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