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月またぎレビュー「1月→2月」

1月に行ったり見たりしたことを振り返ります。簡単にと思ってましたが、やり始めると結構書いちゃうんですよんね。。。
まだ会期中、放送中のものばかりなので、ぜひ行ったり見たりしてみてくださいねー。

【アート】

「ここより北へ」 奈良美智+石川直樹 展 @ ワタリウム美術館
石川直樹さんと奈良美智さんが北方への旅を綴った写真展。共に日記帳を展示品に選んでいて、二人が生き方を旅になぞらえている感じがします。そしてまだその旅の途中なんだということが強く印象付けられます。
石川直樹さんはさすが、写真家として文筆家として、そして旅人として、人類学的なアプローチも含めて本領がいかんなく発揮されてました。
一方、奈良美智さんの展示もほぼ写真だけなのだけど、これがかなりよかった。以前は写真も絵のイメージの延長って感じだったけど、北方やアイヌという境地を得て、写真としてかなり強くなったと思います。
5/10まで。

「高松次郎ミステリーズ」 @東京国立近代美術館
昨年続いた「ハイレッドセンター展」と「赤瀬川原平展」(大分に巡回中)、それとシリーズのように高松次郎の回顧展が開催中。日本でも価値観が激動していたであろう60年代以降、影と光、表と裏、虚と実の反転など、様々な可能性の有り様を芸術から発信した一人といえるでしょう。
また生物学や物理学など、美術「外」からの力が働いている点に言及されているのも興味深かった。1月中旬までワタリウム美術館でやっていた磯崎新展のテーマが「建築「外」思考」だったのも、彼らが同年代の芸術家だったことを考えると偶然ではないと思います。この年代の芸術家(芸術)への関心を引き継ぎつつ、「○○「外」思考」という繋がりからスタートした2015年。
3/1まで。

「絵画の存在とその展開について」 しりあがり寿 @art space kimura ASK?
展覧会情報に掲載される1枚の絵。この1枚の絵のバリエーションが手書きの複製と回転に任され、「反復と差異」がかき混ぜられて換骨奪胎させられるような不思議な展覧会でした。
会期延長して2/13まで。


【映画】

「さらば、愛の言葉よ」 ジャン・リュック・ゴダール
全然ゴダールを追っているわけでもないんですが、今回はなんと3D映画なんですね。3Dは何度か見ましたが、鑑賞体験を大きく変えるものとはまだ言えず、演出技法の中の一つ程度にしか感じてませんでした。
しかし、BT(2月号)に載っていた平倉圭さんによるレビューを読んでいっきに見たくなりました。そんな3D映画のモヤモヤになんだかガツンとやってくれそう。近日中に見に行きます。


【アニメ・ドラマ】

「冴えない彼女の育てかた」 
ラノベ原作のハーレムものを想像してました。まあそうなんですが、#0という表記の第1話(原作にはないらしい)の、メタフィクションをメタフィクションでイントロダクションするというのがおもしろくて見はじめました。原作はわかりませんけど、第2話以降もそんな演出が続いていておもしろいです。

「山田孝之の東京都北区赤羽」 
番組情報を見たとき???と思ってたドラマ、というかドキュメンタリー?一応ドラマ枠、結構フィクション臭さもしたり、よくわからないものになってるんですがおもしろいです。
また興味のポイントは、ドキュメンタリーとされる「山田孝之」を、虚構内存在を意識した虚構内存在としてどう考えるかということ、だったり、します。そうです、メタフィクションです。


【音楽】

「あの森で待ってる」 ボンジュール鈴木

「ユリ熊嵐」のOP曲、なんか芸人みたいな名前だと思っていたら、ロリウィスパーボイスの新星でした。メロディラインに90年代後半?あたりのノスタルジーを感じます。

「オレンジミント」 早見沙織

最近はほとんどアニソンからしか情報得ていないんですけど、「音楽どういうの聞くんですかー」などと言われたときには、今だについクラムボンとか答えちゃいます。(アニソンとかジョンとポールとかマトモスとか言ってもなかなか通じなさそうなので、、、)で、「憑物語」を見ていてなんかいい感じの曲だなー、と思っていたら、クラムボンのミトの曲でした!そういえばミトは神前暁さんと対談したり、スペース☆ダンディバンドに名前を連ねてたり、アニメにも通じてるんですよね。声優の早見さんの声もなんかいいです。


【本】

『SWITCH 2015年2月号 荒木経惟のたのしい写真術 ホンマタカシのアラーキー・ワークショップ13講座』
ホンマタカシさんによるアラーキーこと荒木経惟の読解本。多岐にわたる表現方法を様々な写真家と比較しながら見たり、保坂健二朗さんと現代アート方面から理論的に作品を分析したり、ホンマさんによる「偽アラーキー」が試されていたりと、ホンマさん独自の視点から、13の講座という形式で荒木写真に迫っています。さらにアラーキーを通して、写真や写真家のことが勉強になります、、さすがホンマさん!
そして驚くべきは、『センチメンタルな旅』の全コンタクトシートが掲載されていること。最終的にはこの中から108枚が写真集に選ばれていますが、これを選んでこれは選ばなかったのか、と思うとなかなか感慨深いものがあります。このコンタクトシートを手元に置くだけでも買う価値あり。写真は「撮る」だけでなく、「選ぶ」ことがどれだけ重要なのかがものすごく伝わってきます。
ちなみに2月発売号はCOMME des GARCONS特集!川久保玲さんへのインタビューや、ビジュアルマガジン『Six』の全ページ掲載などすごいことになってます。

『あなたは、今、この文章を読んでいる。:パラフィクションの誕生』 佐々木敦
今回この本を最後にしたのは、上で書いてきた事柄が、またそれ以外にも色々なものが、この本を読む前後でフィクションとメタフィクションの関係として立ち上がってくるようになったから。(この本自体はメタフィクションの限界を唱え、パラフィクションという新たな命題を仕掛けるという試みなわけですが。)
さらに少し前から、「芸術作品とは全てフィクションである」(論理展開は調整中)という風に考えてみています。そして芸術と社会の関係を考える上では、このようなフィクション論、メタフィクション論が有効なのではないか、と思っています。この辺りをしばらくテーマにして考えてみよう、という2015年の抱負でもあります。

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