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 春の待ち方

冷たい風が吹く春の日。
皆が口々に桜を待つ話しをしている。

桜の気持ちはどうであろうかと想い
桜の木の下に行ってみる。
桜に問いたところで返事など無くただ眺める。

桜が喜びの音を奏でる様に咲くと命達は喜ぶ。
桜の帯が日本を包む頃には命達の喜びは
満開となる。

全ての壁を超えて与えられる喜びは奇跡の風景。
命達は、喜びに溢れるからこそ咲く姿を待つ。
改めてその奇跡に感謝をする。

立ち去る前にもう一度、桜の気持ちを想像する。
咲くまでの時間を何とする。
咲くまで待てるか。どの様に待つか...。

皆が喜ぶから咲くと決めてはいるが、まだ少し
眠っているのだ...そんなイメージを持った。

靴紐を整え、鞄を持ち桜の木に再会を約束し
歩き出す。目線を移したその先に真っ白な雪柳が
愛らしい品格を欲しいままに咲いていた。

その姿は桜の眠りを支える様に精一杯に手を
広げて咲き誇る姿に見えた。
見事な小花に見惚れて手を添え包む。

桜が冷たい風で咲き遅れているのであれば
それをただ悲しむだけでは無く。

当たり前の生態のリズムに不安と恐怖心を
無理に引き出して曇るだけでは無く。
桜の周囲の花にも気が付きたいと思った。

春を待つ。
偶には、命達の元気が桜を支える時があって
も良いと感じた。
桜の木に温かい手を充てに行こうと思う。

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