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オレンジのダリア

ねぇ、今年もお誕生日おめでとうって言うよ

朝から雨だったから夕方まで引きこもってたけどあの人、いや本当は自分のためにお花とケーキを買いに出かけた

いつも混んでいる商店街には阿佐ヶ谷と違って屋根がついてないから雨の日は人が少ないななんて思いながら松村北斗のガラス花を聴きながら歩いた

商店街のお花屋さんは閉まっていたからしょうがなく駅まで足を伸ばして駅の入場料を払って駅に入ったら人がたくさんいて少し気が滅入った

ここにいるたくさんの人たちはきっとわくわくしながら家に持って帰る品物を選んでいる

けどわたしは違うんだ

お花とケーキを買う、ということが半ば自分で自分に課した義務なのだ
普段ならワクワクするイベントのはずなのにね
私が勝手に祝いたい人はすぐ行けるところにはいないんだから
家で待ってないんだから
仕方ないね
こういうとき私は部屋の電気をつけたまま出てきたことを心からよかったと思う
少なくとも私が部屋に帰った時、部屋はわたしのために明るいから

お花を選んでいる時も、ケーキを選んでいる時もずっと泣きそうな気持ちを抑えていた

ケーキだったらあの人はこれが好きそう
だけどなぁ食べるの自分だし自分の好きなのにしようかとか考えちゃったりしてそんな自分が少し嫌になった

家に帰る道すがら、ひたすら一曲リピートしているガラス花の盛り上がりのところで涙が出てしまった

ここ最近、涙を放出することの前触れがなくなってきているなぁ
泣きそうと思う前に泣いてるんだよ
初めて歩きながら道路の上で泣いてた
夜は顔を隠してくれて便利だ

家に帰ってきてあの人に似合いそうなオレンジ色のダリアを花瓶に入れてみた
花の頭が重いから、ぐるんと回転してしまって正面を見せてくれない
そんなところもあの人みたいだなと思った
剣山に刺してから花瓶に入れたけどなんとなくまだナナメで仕方ないから自分から顔を覗き込ませて正面から見た
あの人にしてたみたいに

花びらひとつひとつがきれいに集合してわたしを見ていたからハッとした
花はいい

ケーキを食べたらまた泣きそうだったから明日の朝に食べよう
きっと呑気に朝ケーキなんて最高じゃん♪と思える私がいるはずだから

じゃあまたね


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