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次なる「美」のトレンドは親切行為?親切とウェルビーイングの関係

突然ですが、最近誰かに親切にしましたか?少し目を閉じてその時の行為や気持ちを思い出してみてください。あなたは何をしましたか?そしてその結果何が起きたでしょうか。

あなたの行為を受けて喜んだ相手の顔や声、そして嬉しさが表現されたお礼のメッセージ等はどのようなものだったでしょう。できるだけ詳細に思い出してもう一度味わってみましょう。

どうでしょう。心に温かさを感じ、安らぎすら感じませんでしたか?笑みが浮かんできた人もいるかもしれません。

そう、親切行為は行った時も気持ち良いですし、振り返ってみることで満たされたり、自己肯定感が高まったりと、私たちに長期的な幸福感を与えてくれます。

親切行為がもたらす効果はこれまでもたくさん明らかにされてきました。例えば、人生に対する満足度の向上、ポジティブ感情を生むこと、「幸せホルモン」とも呼ばれる(ストレスの軽減や他者への愛情の増加等をもたらす)オキシトシンの分泌、長生き、自己肯定感の高まりなど、その数は両手でも足りないほどです :図1)。

図1

そして最近このリストに新たな研究結果が加わりました。それは「他者に与える人は身体的に魅力的」というものです:図2)。この調査を実施したインディアナ大学の研究チームが掲げた問いは以下の二つでした:

① 他者に対してより多くの親切行動を行う人は、見た目も魅力的か?
② 見た目がより魅力的な人は、より多くの親切行動を行うか?

図2

みなさんならどう答えますか?身近にいる「親切な人」をちょっと思い浮かべてみましょう。

これらの問いに対する答えを明らかにするために、研究チームはボランティア活動を行う高齢者を対象にした調査と、思春期から青年期までの若者を数年間追いかけた調査結果を分析しました。その結果、上記の二つの問いに対する答えはどちらも「Yes」だったのです。特にボランティア活動を行う高齢者や若者の魅力が高く評価されていました(ちなみに、魅力を評価する人は、評価される人々の親切行動については一切知らされていませんでした)。

さて、このとても興味深い調査結果ですが、なぜそのようなことが起こるのかについてはまだ明らかになっていないそうです。ただ研究メンバーの一人Sara Konrath氏は、見た目が良い人は自己中心的で虚栄心が強いというイメージが払拭されるのではと述べています。また高い化粧品や整形手術等に費やさなくても「親切行為の実践で内面の美しさを表面に引き出すことができる」ともコメントしています:図3)。

図3

「美」の獲得をももたらす親切行動。積極的に行いたいところですが「時間的余裕が無い」「手を差し伸べる勇気が無い」という人もいるでしょう。そんな人にオススメなのは、他者の親切な行動を観察することです。そう、親切行動は観察するだけでもウェルビーイングを高めるのです。メディアに流れる良いニュースを積極的に追いかけたり、過去の偉人の素晴らしい行動について読んでみたりするのもいいですね。また、大事な誰かのために祈るだけでも良いそうです。「___さんが幸せでありますように」「____さんが健康でありますように」「____さんが安全でありますように」「____さんが穏やかでありますように」と。そしてその祈りを友人、知人、地域の人、世界中の人へと少しずつ広げていきましょう。

最後に、何より忘れてはいけないのは一番大切な自分を大事にすること。自分の心地よい範囲でここに綴った行動を重ねていけたら、いつしか貴方の表情やたたずまいは慈愛に溢れたものになり、周囲の人を魅了しているでしょう。

参考/引用文献
1) Pogosyan, Marianna. (2019) ”Why Choose Kindness Boost your well-being by being kind—to others and to yourself.」Positive Psychology today

(寄稿:泉谷道子 - 心理学博士)

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