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本を耳で聴いてみた。 その2

夏、暑くて体を動かしてないなと思い、早朝や帰宅時に歩いてみている。運動になってるのかわからない程度の歩きだが、Audibleはなかなか聴き進んでいる。最近、最後まで聴いた本です。日本の映画もそうだが、最近の日本の小説はどこか重い話が多くて、ウォーキングの友として最適かはわからない…。もう少し明るい気分で歩けそうな本を見つけられたら…と思いつつ、耳読書を楽しんでいる。

季節のない街   著者: 山本周五郎   ナレーター: 三好翼
黒澤明監督の映画『どですかでん』の原作であり、宮藤官九郎が企画・監督・脚本を務めるドラマ「季節のない街」(8月Disney+で配信予定)の原案でもある。1962年に単行本として発売された本で、とある貧民街に生きる人々の群像劇のような構成になっている。語り口は落語のようで、出てくるワードが現代的でもあり、黒沢映画の色彩のイメージも頭に浮かんできて、脳みそを奪われる(ながらで聴けない)作品でした。間違いを犯したら一生傷を抱えていかなければいけないような風潮が強まっている今日この頃ですが、この作品に登場する人々は、過ちを犯してしまったり、頼りない信念を打ち砕かれたり、辛い思いを経験しながら、それでも生きる選択をしていて、本当にすごいなと思ってしまった!宮藤さんのドラマ楽しみです!

この世の喜びよ  著者: 井戸川 射子   ナレーター: 志摩 淳, 林 祐人
第168回芥川賞受賞作
耳で聴いてよかった。主人公の女性は自分のことを「あなた」と呼ぶ。まず、その時点で文章がトリッキーになる。そして、自身の子育ての記憶を思い出したかと思えば、次に「あなた」が子供の頃に母親に対してどういう感情を抱いていたかを思い出す。断片的で、脈略もなく過去と現在を右往左往する展開は難解だけれど、途中から心地よく感じられるようになった。それは耳で聴いたからこそのように思えた。目読書だったら、途中で断念しそうな複雑さ…なのだ。実際、大抵の女性の思考回路はこんな感じですよね?ということを言語化したアート作品みたい。私は女だから、作者の意図を感じ取ることができたけど、男性はどうかな?女性の思考回路への理解度を問う不思議さをもった本という感じでしたー。

かのこちゃんとマドレーヌ夫人   著者:万城目 学 ナレーター: 山崎 依里奈
老犬を飼っている身にはグッと来る作品でした。動物を飼っていなくてもですが、小学生の頃、猫とか犬とか鳥とか身近な動物に対してどんな心持ちで接していたか、身近じゃなくても動物園のゾウと目があった時にどんな気持ちだったかとか、そういうことを思い出させてくれる作品。あぁゴリラ雷雨…と言いたくなる…。誰もが楽しめるはず、おすすめです。

韓国 行き過ぎた資本主義「無限競争社会」の苦悩著者: 金 敬哲
ナレーター: きっかわ 佳代
韓ドラをちょくちょく見るので、かなり興味深い内容だった。情報出典もきちんとされてるようで音声で「エイチティーティーピーコロン…」と読み上げる感じは慣れなかったが、、どの世代も生き延びるのに必死な訳がよくわかった。‘スプーン階級論’‘N放世代’‘大峙洞(テチドン)キッズ’‘雁パパ’など初めて聞くワードが多く、ついリアル本も買ってしまった!知らなかったこともあるが、日本人にも共通する部分もある。例えば第4章の「IT先進国で取り残された高齢者」などは、とあるカードを全国民に持たせようとする政策の先に抱えるであろう課題に思いを馳せてしまう感もあり、他人事では決してないなとしみじみ思うばかりでした。

さよならごはんを今夜も君と 著者: 汐見 夏衛
ナレーター: 河合 優実, 諏訪 珠理
なんだろう、子供の頃読んだ児童向け小説のような空気感の本でした。対話することの大切さを噛み締めつつ、こんなふうな世界が現実には存在するのか?と感じてしまう自分のすれた感性にモヤモヤ…。適切な対象年齢がある本なのかもしれません。

エゴイスト 著者: 高山 真 ナレーター: 林 祐人
誰かの正直な恋愛話を聞いてるみたいな本だった。LGBTQのお話ではあるが、韓ドラ「マイ・ディア・ミスター〜私のおじさん〜」と似たテーマと暗さを感じた。誰かが自分を罪人であるかのように思い詰めることは、決してその人だけの問題ではないこと、全ては社会、人と繋がっていることについて考えさせられた。もし同性愛に対する偏見がなかったら、他者ともっとスムーズなコミュニケーションができたかもしれない。けれど、その偏見というタガがある故に、自分自身を内省し、他者への想いを募らせ、特殊な絆を紡ぐまでに至る。そんな事実があることを知り、どう受け止めて、消化したらいいのか考えさせられる作品だった。

母という呪縛 娘という牢獄  著者: 齊藤 彩   ナレーター: 絵理
実際に起きた事件を加害者である娘の目線で描いた作品。公判を取材し、娘のあかり(仮名)と面会を重ね、往復書簡を交わした著者による真実の物語は、聴いていて本当にしんどかった。今村夏子著星の子やつい最近ニュースで見た「8歳娘に下剤を飲ませ低血糖症で入院させた詐欺事件」にも似た、親が外堀を埋めまくって良い親のふりをしつつ、罪悪感を抱かせるまで子供を追い詰める事案は表沙汰になりにくい分、本当に恐ろしいなとつくづく思う。リアル事件ということで、亡くなった母や別居中だった父、金銭援助をし続けたアメリカ在住の祖母(母方の)の思いは知ることはできず、娘の言い分だけで理解・納得しきれない部分も正直ある。特に理想のシナリオどおりの人生を生きるために背負うべきリスクを全て娘に背負わせた母親のバックグラウンドはもう少し知りたかったし、毎月3万円の生活費だけで暮らし続けていた父親についてももっと知りたかった。




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