東大ロー入試対策(合格体験記)

1.はじめに
私のように法曹志望者が少ない大学に通っている人は,ネットの情報に頼るしかないと思います。(わざわざ予備校のロー入試対策講座を買うのはしんどかった)
しかし,東大ローについては,出題趣旨が公開されていない・ネット上に再現答案があまりない等の理由から,情報が少なく,どのように対策していけばいいのか困る方も多いと思います。
そこで,予備試験にすら合格していないただの受験生が記事を書くのは少し気が引けますが,今後の東大ロー受験生の参考になればと思い,記事を書きます!

2.書類審査について
1次試験(書類審査)を通過するためには,一定以上のGPAとTOEICの点数が必要になります。この点については,藤澤たてひとさんが記事を書かれているので,そちらを参考にすると良いと思います(https://bexa.jp/columns/view/367)。

私の場合は,中の上〜上の下レベルの私大法学部出身で,GPA3.17・TOEIC935点でした。加えて,ゼミ教授の推薦状と,予備試験短答合格通知を添付しました。

3.論文対策について
(1)
私の点数は,合計で190点弱でした。その年は例年と採点方式が変わったと考えられており,私の点数は全体の平均と比べるとかなり上位にあると思います。詳しいことについては,上記の藤澤たてひとさんの記事をご覧ください。
この記事には再現答案等を載せていませんが,予備論文に合格する力がなくても,下記のことを意識すればこれだけ点数が取れますよ〜という感じで参考にしていただけると幸いです!
(2)
傾向については,過去問を見ていただければある程度把握できると思います。たまに応用的な問題が出題されることもありますが,基本的な知識を問う問題が多いです。
したがって,論点を落とさず抽出し,できるだけ三段論法で書ききるだけで,東大ローには合格できると思います。
このことは,合格者の再現答案を見ることでわかります。
法律解釈の手筋さんのブログにおいて,合格者の再現答案が掲載されています(https://www.law-ss.site/archive/category/%E5%86%8D%E7%8F%BE%E7%AD%94%E6%A1%88)。
H31年度のAさんの答案をみると,論点は網羅されており,三段論法もしっかり守られている一方で,問題文上の事実を全て使っているわけではないことがわかります。それでも,合格点を取ることができるわけです。

もっとも,Aさんの点数は合格最低点に近いと考えられるところ,東大ローは書類審査の点数が大きな比重を占めているため,人によってはより高い点数を取る必要があると思います。

(3)それでは,どのように点数を最大化するのか。
この点については,予備試験と同様の考え方が妥当すると思うので,予備試験合格者のブログや質問箱を参考にすると良いかと思います。
私自身の考えとしては,東大ローの問題はド典型の事案というよりは,結論が分かれうる事案が多いと思うので,問題文の事実に対して自分なりの悩みを見せる(思考過程を言語化する)ことで,より多くの点数を得ることができるのではないかと思っていました。

(4)試験時間の短さと答案用紙の字数制限について
東大ローは試験時間がタイトです。また,答案用紙には字数制限があります。したがって,論証の理由付け又はあてはめにおける評価を削る必要がでてきます。
いずれを削るかについて様々な意見があると思いますが,結局は問題によるというのが私の考えです。抽象論(法律論)について自分の見解を示すことは大事ですが,問題文中の事実が複雑でいずれの結論も取りうるものなのであれば,あてはめに注力すべきでしょう。したがって,例えば「抽象論は短く書くぞ!」と初めから決めておくべきではないと思います。
答案用紙の字数制限については,答案用紙にマス目があることに起因します。マス目を無視しても良いのか疑問に思う人もいると思いますが,私は答案の終盤3分の1程度はかなり無視して書きました。字数が足りないというだけでなく,マス目に気を配る時間的精神的余裕がなかったからです…
なお,答案構成は頭の中で済ませ,それをメモする等は行いませんでした。これは他のロー入試でも同様でした。答案構成をどのようにするかについては,人によって様々だと思います(普段から重問は脳内答案構成で済ませていたので,私はこれが肌に合いました)。色々試してみると良いでしょう。ただ,東大ローは事例が短いので,あえて答案構成する必要性はあまり高くなく,忘れそうな論点やポイントだけ問題文上でマーカーを引く・メモする等で足りる人が多いはずです。

(5)使用教材について
全科目を通して,アガルートの論証集と重要問題習得講座を使用しました。
科目別の追加教材は以下のとおりです。
・憲法:合格思考憲法,憲法の流儀基礎編,憲法ガール(いずれも憲法が苦手だったため)
・行政法:実戦演習行政法(予備試験対策として使ってた)
・刑法:刑法事例演習教材,刑法総論の悩みどころ(東大ローの橋爪先生の著書。同書に記載されているものと同様の問題意識や裁判例が出題されている年がいくつかあった。単純に刑法総論に対する理解も深まった。)
・刑事訴訟法:古江本(論証修正・辞書として使った)
・民法:なし
・会社法:なし
・民事訴訟法:読解民事訴訟法(既判力に対する理解が深まった)

重問のみで足りるか疑問に思う人がいると思いますが,私は足りないと思います。重問に掲載されていない論点が出題されている年があるからです(R3年度民事系等)。
この点についてはアガルート論証集でカバーできると思います。
公法系について,統治や謎の解釈問題も出たりするため,どのように対策するか悩む方が多いと思いますが,普通に予備や私大ロー対策と同様に考えていただいて大丈夫です。謎の問題はみんなできないため,点数は人権の処理で決まると言っても過言ではないからです(私は行政法の現場思考問題に時間を使いすぎて人権を形式的な論述済ませてしまった結果,公法系だけ点数が低かったです)。

加えて,予備試験過去問も使いました。ただ,必須だとは思わないです。
事例は東大ローのほうが短く,他方で時間のタイトさについては東大ローのほうが厳しいものが多いため,東大ロー対策にはあまり合わないと感じたからです。
また,問題の傾向についても微妙に違いがあります。例えば東大ローの公法系は,必ずしも典型的な人権(憲法21条等)や処分性・原告適格が問われるわけではなく,マイナー人権や各論的な論点(憲法94条,法令の解釈等)が問われる年も多いため,予備試験の過去問をやることで得られるものをそのまま活かしにくいです。
したがって,東大ロー対策としては,重問等の短文事例問題集と論証集,そして東大ローの過去問で必要かつ十分だと思います。
例外として,予備刑法平成24年・26年については,書くことが多い反面で時間が厳しいので,東大ローの刑法に近く,かなり有効だと思います。

4.おわりに
あんまり参考にならないかもしれませんが,少しでもみなさんのお役にたてたら嬉しいなって思います!
なにか質問等あればTwitterのDMでお願いします!

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