使った教材まとめ【予備試験、司法試験】
はじめに
リクエストがあったので、ロー入試・予備試験・司法試験を受験するにあたって使用した教材を、おすすめ度と共にまとめておきます。
私はあまり多くの教材に手を出した方ではないですし、基本書はほとんど図書館で借りて済ませていたため、他にもっといい教材があるかもしれません。その点はご了承ください。
使った教材
憲法
アガルート重問(△)
判例をそのまま貼り付けたような答案例ばかりで、これを繰り返しても答案を書けるようにはならないと考え、使うのをやめた。
統治部分に関しては論証も含めて網羅的におさえることができるので、予備を受けるにあたってそこだけ何周かした。
(近年は、予備・司法ともに判例知っていることを前提に書かせる問題が出題される傾向にあるため、「判例をそのまま貼り付けたような」重問をやる価値はそれなりにあるのかもしれない。)合格思考憲法(◎)
めっちゃいい。憲法の(答案を作成する上での)考え方や、各人権ごとの必要知識がまとめられているため、これをおさえればちゃんとした答案が書けるようになるはず。
後半には旧司の問題や予備・新司の問題が解答例とともに掲載されているため、重問の代わりにこれを回した。憲法の流儀(○)
こちらもめっちゃいいが、立ち位置が合格思考憲法と被る。予備試験合格の観点からは合格思考憲法で足りると感じたため、あえて追加で買う必要はないと思った。憲法ガール(○)
ロー入試段階で読み物として使用した。
予備受験からは、各人権ごとの書き方やおさえるべきポイントを確認するため、辞書的に使用していた。司法試験受験にあたっては、過去問の復習のために使用した。
行政法
アガルート重問(◎)
網羅性・答案のクオリティ共に申し分ない。ややマイナー目の論点や国賠も収録されており、知識的には重問で十分だと思う。
ただし、原告適格・処分性について、本番ではいわばアドリブ力・センスが必要とされる部分があるため、重問をおさえた上で過去問を重点的にやる・判例を深く理解する等の勉強をするべきだと思う。実戦演習行政法(○)
学者による予備試験の問題の解説・参考答案がまとめられた本。客観的に見てかなり有用なのだろうと思うが、自分は時間(と怠惰な性格)との関係であまり使わなかった。
重問に収録されている予備過去問で疑問点を解消するために使ったくらい。
一般原則としての平等原則違反・信義則違反と判断過程審査との関係や書き方についてはかなり参考になった。基本行政法(○)
こちらは司法の勉強をするにあたって、辞書的に使っていた。わかりやすい。
行政法をちゃんと勉強したことがなく、基本的な知識が不足していると思ったため、多くの受験生が使っていると思われるこの本を使った。基本行政法判例演習(◎)
めっちゃいい。基本行政法なしでも全然使える。重要な判例が過不足なく収録されており、さらに判例の射程を考えさせるような関連問題も参考答案とともに載っているため、予備・司法ともにこれと重問で必要十分だと思う。行政法解釈の技法(◎)
学者+弁護士+講師による共著。答案作成に必要な知識や考え方を学ぶことができる。特に処分性、原告適格、裁量審査について類型ごとまとめられているので、知識の整理にも役立つ。予備過去問の解説もある。
民法
アガルート重問(◎)
網羅性があり、これ一冊で予備・司法に対応できる。
ただし、参考答案に難がある(型が決まっていない、条文の要件検討を飛ばしていることがある等)。この点を意識し自分で補完しながら進めていくといい。アガルート論証集(◎)
網羅性抜群。他の予備校の受講生も一度目を通して穴を埋めるのに使うべき。百選(予備:△、司法:○)
自分でうまく咀嚼できない論点の理解を深めるために、部分的に使った。
判例の射程をも問われる司法においては有用だと思うが、予備段階では百選よりも他にやるべきことがあると思う。
商法
アガルート重問(◎)
民法と同じ
各論点のあてはめ方等がすごく参考になった。アガルート論証集(◎)
民法と同じ田中会社法(○)
司法段階で購入して辞書的に使った。
民事訴訟法
アガルート重問(○)
網羅性があってめっちゃいい。重問だけで十分予備・司法に対応できる。
ただし、他の科目に比べて理解があまり深まっていないような感覚が残ったため、もしかしたら他にもっと軸とすべき教材があるかもしれない。解析民事訴訟法(○)
重問の補完として使った。旧司の問題がたくさん載っていて、それに対する解説の形式で成り立っている。応用力が身に付く。アガルート論証集(◎)
民法と同じ読解民事訴訟法(◎)
めっちゃいい。受験生が間違えがちな概念や論点が丁寧に解説されており、特に既判力については理解がとても深まった。リークエ(△)
司法段階で使い始めた。自分の理解が怪しいところを補完するために辞書として。
基本書選びに時間をかけたくなかったのでリークエにしたが、説明が短くて知りたいところまで書かれていない事項が多かったので、他にもっといい基本書がある気がする。
刑法
アガルート重問(◎)
網羅性・参考答案のクオリティ共に抜群の出来。これだけで予備・司法に対応できる。アガルート論証集(◎)
網羅性抜群。ただし、共犯あたり(特に承継的共犯、共謀の射程あたり)の論証が微妙なので、ロースクールの授業や後述の悩みどころで適宜修正した。刑法事例演習教材(予備:△、司法:◎)
司法試験委員の先生方が作った問題がたくさん載ってる。こちらもそれなりに網羅性はあるが重問には劣る。また、問題のレベルが高く、一部ニッチな論点で構成されているものもあったため、「基礎を完璧にする」という観点から重問を優先させていた。
ロー受験期・予備直前にそれぞれ1周ずつ解き、司法前には4周くらいした。
典型論点の応用的な考え方をおさえることができ、司法にも類似の問題が出題されている(ネットでは「”昔は”タネ本と呼ばれていた」との意見が散見されるが、令和に入ってからも類似の問題が出題されている)ため、沈まないためにもチェックしておくべき。基本刑法I、II(◎)
予備の口述前から使い始めた。わかりやすく、網羅性もある。
また、例えば窃盗罪と占有離脱物横領罪の区別(占有の判定)などにおける考え方や考慮要素なども詳しく記載されており、答案作成に直結する知識が収録されている点が良かった。
個人的には、予備合格との関係では必ずしも基本書を通読する必要はないと考えているが、刑法に関しては受験生のレベルが高くあてはめで大きく差が付くため、余裕があれば読むべきだと思う。刑法総論の悩みどころ、各論の悩みどころ(◎)
論証の修正、各論点ごとの考え方(あてはめ方)をおさえるために使用した。通読する必要はなく、不得意な論点や目次を見て気になったところだけ読むのがおすすめ。
刑事訴訟法
アガルート重問(○)
網羅性抜群、参考答案の質も相当程度高い。ただし、ローの授業で先生が「この判例のあてはめ・結論に賛成する学者はいないに等しい」と言うような判例を素材とした問題において判例と同様の考え方を採っていたり、やや時代遅れな学説を採用していたりと難点もある。
とはいえ、多くの受験生が重問(や問研等)をおさえてくる以上は、重問の見解をおさえておけばひとまず沈むことはなさそう。
論点ごとのあてはめ方はとても参考になる。アガルート論証集(◎)
網羅性がある。一部論証に難があるが、他の予備校ほどではないし、合否に影響はしないと思われる。気になる人だけ基本書等を参考に修正すればいい。事例でわかる伝聞法則(○)
伝聞法則の考え方についての解説と、司法試験の過去問を簡略した問題をベースにした解説から伝聞法則をおさえることができる本。
時間がなかったので過去問部分はやらなかった。事例演習刑事訴訟法=古江本(△)
ロー受験期に辞書として使った。論点に対する理解が深まるが、さまざまな学説が紹介されており、学説相互の関係の複雑さゆえに混乱するおそれもあるため、初学者にはおすすめしない。
ただし、自白法則で任意性説をとる場合における派生証拠の証拠能力の論証(大澤説)はかなり参考になる。
問題集として使うには微妙かも。酒巻刑事訴訟法(○)
司法段階で理解の穴を埋めるために辞書的に使った。
租税法
スタンダード所得税法(◎)
何度か通読した。辞書としても有用。これをおさえておけば司法試験対策の観点からは必要十分だと思う。1冊だけで租税法(○)
選択科目の定番かなと思って一応買った。
租税法はこれor予備校の過去問解説講座を使って司法試験の過去問をおさえておけば十分だと思う(他の科目における重問みたいな立ち位置)。
ただし、参考(再現?)答案の質は玉石混淆なので、できれば予備校の過去問解説講座を手に入れるべき。それが無理だとしても、スタンダード所得税法を使いながら各論点ごとの問題の所在や考え方はおさえておいた方がいい(そこまでしなくても十分合格できるとは思うが。)租税法演習ノート(×)
有名な学者の先生方による共著。読み物としては面白いが、司法試験の傾向に全く合っていないため、司法試験対策としては使えない。
*法人税法については、予備段階では過去問に出てきた知識をおさえるにとどまり、特に別で勉強したりはしていなかった。司法段階ではローの授業で勉強していたので十分な知識はついていたが、仮にそれがなかったとしたら、過去問に出てきた部分についてのみスタンダード法人税法を使って理解を深めていたと思う(司法の範囲を軽く超える部分が多いため)。
民事実務基礎
民事裁判実務の基礎入門編=大島本(○)
定番。多くの受験生がこれを使うため、沈まないために最低限これに載っている知識はおさえておく。要件事実そのものは1問1答で覚えればいいので、例えばせり上がりとか、要件事実特有の考え方を学ぶのに使うといい。アガルート1問1答(◎)
あまり周りで使っている人を見ないが、めちゃめちゃいい。予備論文、口述、ローでの期末の全てで使った。
要件事実一般論だけではなく、事例に沿って訴訟物や要件事実の記載例、請求の趣旨の書き方、さらには当該要件事実が導かれる理由まで問題化されているため、これを完璧にすれば民事実務基礎対策はバッチリだと思う。
近年では大島本(入門編)には載っていない要件事実が問われたりすることもあるが、1問1答をおさえておけばそのような問題にも対応できるはず。民事保全・民事執行もかなり充実している。
刑事実務基礎
刑事実務基礎の定石(◎)
こちらも定番。証拠構造の考え方や手続面をおさえることができるだけでなく、予備過去問の参考答案も数年分載っているため、実際にどのように書くべきかも身につけることができる。
短答対策
肢別本(アプリ)
全科目アプリで購入した。アプリにした理由は、問題のシャッフルができるため(科学的に効率がいい勉強方だと本で読んだ)。
怠惰なので、旧司の問題とオリジナル問題は飛ばした。憲法短答パーフェクト
司法段階で、憲法のみ短パフェを使用した。予備段階から憲法の短答が苦手だったこと、司法の模試で足切りギリギリだったことから手を出したが、あえてプラスアルファで手を出す必要はなかったと思う。百選を読んだ方が良かった。