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雲の上にはお天道様が〜私が医療系事務職員応援隊になったわけ11

こんにちは♪ #医療系事務職員応援隊の長幸美です
前回は、オーダリングの導入をしたところまでお話ししました。導入当初から課題はあったのですが、まさかこんな大事になるとは・・・

何回検査したんですか?

「課長、内視鏡検査の回数がおかしいんです。」
「今まで3gで処方されていた薬剤が0.03gになっています。」
「予約の取り消しができません。」
「検査予約が3回も入っています」・・・etc.

稼働してしばらくすると、色々な困った!が報告されるようになってきました。シミュレーションでは起こらなかったものです。
実際に、未実施などのレポートを出してみると、毎日相当数の未実施があり、時には1回しか行っていない検査が2回、3回と計上されています。しかも算定漏れ、重複請求もありました。

何が起こっているんだろう?

念の為に実施リストや未実施リスト、など
後付けの帳票で確認すると、実施登録をした後、再度薬剤等の内容違いで実施登録されているものや取り込み後に取り消しをして修正しているような形跡があるものなど、見つかりました。

原因調査

プロジェクトのリーダーと調査をはじめると、設計時の色々な問題が・・・

薬剤部

薬剤では、電子カルテの薬剤マスターとレセコンのマスターを繋ぐ時の換算式が間違えていることがわかりました。力価からg換算する時の倍率がすでにかかっているところに、さらに手で倍率がかけられています。

検査部

検査はというと、いくつかの原因がわかったのですが、一番大きな原因は、システム操作の基本手順が守られていないことにありました。
また、検体の受付や内視鏡等の受付、実施登録も基本手順通りに実施し亡くなっていたことがわかりました。

看護部

検査の予約で、患者画面からではなく、直接内視鏡やCT室の予約画面から変更したほうが早いと予約画面から操作していました。
患者個人の画面から予約をとるという基本ルールを無視していたのです。

システムは使い手が指示した通りにしか動きません。ルール通りに予約やオーダーを出していないために、元々の予約変更やオーダーの修正が行われず、重複指示となり、実施情報として医事に伝達されていたのです。

さらにどの予約が正しい予約なのか・・・修正がうまくいっていない事例が散見され、何が何だかわからなくなっていました。それも、当初指導されたルール通りに操作をしていなかったことがわかってきたのです。

調査自体に2ヶ月ほどかかり、その間、医事課はカルテと現場での確認で、感覚的には通常の倍以上の手間がかかっていました。現実、待ち時間のクレームは増え、医事スタッフの残業時間も増えました。
原因調査の中で見えてきたのは、直観的に操作できる電カルがあだになっていたということです。電カルの画面や予約画面など、アプローチの方法が様々に準備されていて、実は操作説明を聞かなくても、先生方は直観的に何となくオーダーができてしまうところに問題がありました。
何故なら、修正は「オーダーを出した通りに・・・つまり同じアプローチで修正しなければ修正にならない!」ということが分かったからです。

こんなはずじゃなかった!!~プロジェクト再構築、フローの見直し~

そんな折、理事長は一人で「楽になったやろう?」とウキウキしています。本当に恨めしかったです。
機械は指示通り、ルール通りに操作しなければうまく作動しません。
操作方法もオーダーも様々なところからアプローチでき、それゆえに、周りのスタッフが修正しようにも、取消しようにも、修正できない・取消できない状況が発生しているのですから・・・。

4月に導入したオーダリングは、その後第2期目のプロジェクトに移行する予定でしたが、第1段階の検査・画像診断や処方のオーダーがうまくいかないのです。当然のことながら、計画はペンディングせざるを得ない状況でした。

そして、その年の7月には、プロジェクトの再構築をすることになりました。つまり、再指導とルールを決め直すことになったのです。操作ルールを明文化し、視覚的にマニュアルを作り変え、すべての端末の横に1枚ものの簡易マニュアルを置きました。非常勤の先生方も、診療前に15分程度説明の時間をもらい、予約の画面の開き方、オーダーのだし方、等を再度レクチャさせてもらいました。

それと同時に、紙運用からオーダリング運用に情報伝達や診療の流れも変えていきました。フローが紙運用のままになっていたため、手数が増え、予約オーダーを入れさらに、カルテ記載と予約ノートに記載するという重複作業があったためです。検査の薬剤等も、オーダリングに入力し、さらにカルテへの記載、医事への伝票記載、薬品・材料払い出しのための伝票記載と、手間が倍になっていたのです。

オーダリング関連の見直しが一通り終わった時点で(9月ごろだったと記憶しています)、電カル委員会(オーダリング委員会)を立上げ、新入職員教育できるスタッフを各部署の委員を中心に少しずつ増やしていきました。導入後に運用をしながらこれまでのやり方を改めてもらうというのは、本当に大変でした。

これから電カル導入される方へ

医療機関の規模の大小を問わず、電カルを導入される医療機関が今後も増えていくと思います。ある程度の規模のベンダーであれば、パッケージの仕組みがあり、電カルやオーダーの導入は比較的簡単にできると思います。
しかし、これまでの作業をIT化するとなると、単にパッケージでは済まされません。何度も言いますが、システム(機械)は人が指示をした通りにしか動かないのです!

これは、診療所でも同じです。
先生が一人だからこそ、診療のフローを見直して、どの部分をIT化するか見極めておかなければ、悲惨なことになります。
先生の作業はどんどん増え、だからと言って事務や看護師、コメディカルスタッフの作業が減ることもなく、増えていくからです。
数多くの医療機関から「事務が忙しい忙しいというが、何が大変なのかわからない、作業内容を見直してほしい」「診療に余裕がなく、看護師や事務はゆっくりしているようだが、何をお願いしたらいいかわからない」「電カルを入れて、人が3割増えた。これ以上増やせないがどうしたらいいのか?」なんて相談を受ける機会が増えているのがそのよい証拠でしょう。

自分たちの現時点でのフローが明確になっていないと、ベンダーにどの部分がシステム化され、これまでのフローがどう変わるのか、確認することも相談することもできません。システムを導入すれば、これまでの作業フローは当然のことながら、変えていかないといけないのです。

ある医療機関で、フローの見直しをせずに導入したところ、先生の手間が増え看護師は楽になったけれど、先生方の残業が大幅に増えてパンクしてしまった、また算定漏れがどのくらいあるかも分からない状況になったと、嘆いておられました。私の知っている無床診療所では、1割以上算定漏れが見つかっている医療機関もありました。まずは足元を固めていきましょう。




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