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2023/2/24: まいにち だれかの ひとことを こころに。

僕には〈存在〉を感じる心が沁み渡った。

僕が正しいことをすると、

その〈存在〉はにっこりと微笑んだ。

そのうち僕は〈存在〉を愛するようになり、

これを神と呼ぶことにした。

そこに生きることの真実があるのだと知らされた。

これを追いかけて進もうと思い、

僕の方へ近づけようとも思った。

けれど「お前にはまだ早い」と言って、

僕の間近に来てくれることはなかった。

それが僕の元にないのだと思うと、

すっかり落胆した僕は

だったらいっそどこかに消えてしまえ、と言ってしまい、

また以前のように、完全に自分のことばかりに明け暮れ、

まるで生まれてから最初の10年のような状態まで逆戻りした。

煙草を吸い、悪態をつき、遊び暮らしては、

自暴自棄だった。

すると〈存在〉は僕に囁きかけて、

勇気づけようとした。

僕は耳を澄ませた。

すぐそこまで希望の光を示されたなら、

それをすんなりと手離し逃すことなどできない。

生きているうちに、

僕は光に届くことができるのか、

それだけが唯一の気がかりだった。

ートルーマン・カポーティ
 「西へと向かう道路」よりー

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