記憶の中に、銀の匙がある。旅先で集めた、街の紋章のついた何気ないお土産の匙。もうなくなってしまったけれど、その色とりどりの紋章は、両親と車で旅して訪れた街の名と、各々の歴史を教えてくれる徴だった。同じく記憶の中にある、父がくれた寄木細工の魔法の箱の中にそっとしまっておこうと思う。

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