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まいにち だれかの ひとことを こころに。

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まとまった文章は書けるときと書けないときがあると思うので、(なるべく)まいにち、私の好きな「だれかの ひとこと」を お届けします。 あなたの好きなことばに加えていただけたなら、… もっと読む
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2023年3月の記事一覧

2023/3/26: まいにち だれかの ひとことを こころに。

写真は時間をとめてしまう装置であること。これってやはり、決定的なことじゃないですか。人間は時間をとめてみたいという欲望を、ずっと抱えてきたはずでしょう。それができてしまうんだから。僕は毎日、眼の前のものをとめたくてとめたくてしょうがない。 ー森山大道ー

2023/3/24: まいにち だれかの ひとことを こころに。

逢わないでもあり得たものが逢ふ。 それで驚異を伴う。   ー九鬼周造「偶然性の問題」よりー

2023/3/23: まいにち だれかの ひとことを こころに。

 そして私は、私自身の本当の喜びは何だろうかということに就(つい)て、ふと、思いつくようになった。私の本当の喜びは、あるときは鳥となって空をとび、あるときは魚となって沼の水底(みなそこ)をくぐり、あるときは獣となって野を走ることではないだろうか。 (…)  鳥となって空をとび、魚となって水をくぐり、獣となって山を走りたいとは、どういう意味だろう? 私は又、ヘタクソな嘘をつきすぎているようで厭(いや)でもあったが、私はたぶん、私は孤独というものを、見つめ、狙っているのではないか

2023/3/22: まいにち だれかの ひとことを こころに。

 私はいつも神様の国へ行こうとしながら地獄の門を潜(くぐ)ってしまう人間だ。ともかく私は始めから地獄の門をめざして出掛ける時でも、神様の国へ行こうということを忘れたことのない甘ったるい人間だった。私は結局地獄というものに戦慄(せんりつ)したためしはなく、馬鹿のようにたわいもなく落付いていられるくせに、神様の国を忘れることが出来ないという人間だ。私は必ず、今に何かにひどい目にヤッツケられて、叩(たた)きのめされて、甘ったるいウヌボレのグウの音(ね)も出なくなるまで、そしてほんと

2023/3/21: まいにち だれかの ひとことを こころに。

ミツバチの女王は、空中を羽音を立てて飛びながら 花の敵討ちのこと、バラの精のこと、 それからまた、どんなに小さな花びらのかげにも、 悪行を見逃さず、必ずそれを罰するものが 住んでいるのだということをうたいました。 ーアンデルセン「バラの花の精」よりー

2023/3/19: まいにち だれかの ひとことを こころに。

 どうやら時代もまた、”ハムレットの鏡”におのがじしその姿を映し出すものらしい。無論、今日現代も、これから先も、変わりなく。しかし、古典というものは、時代時代の誤読によって生きながらえるものだ。もし正解というようなものがあるとしたら、そのときは古典の生命(いのち)も確実に絶える。  ー 野島秀勝「『ハムレット』、この謎めいたもの」よりー

2023/3/18: まいにち だれかの ひとことを こころに。

 海では午後の波が遠く岩にあたって散っていた。一艘(いっそう)の舟が傾きながら鋭い岬の先端を廻っていった。渚では逆巻(さかま)く濃藍色(のうらんしょく)の背景の上で、子供が二人湯気の立った芋を持って紙屑のように坐っていた。  彼は自分に向って次ぎ次ぎに来る苦痛の波を避けようと思ったことはまだなかった。このそれぞれに質を違えて襲って来る苦痛の波の原因は、自分の肉体の存在の最初において働いていたように思われたからである。彼は苦痛を、譬(たと)えば砂糖を甜(な)める舌のように、あら

2023/3/17: まいにち だれかの ひとことを こころに。

 大切なのは絶対的な創造の意志であり、そこにある感動だ。  自分の生活のなかで生きがいをどのように溢れさせるか。自分の充実した生命、エネルギーをどうやって表現していくか ー。  実際の形、色、音にならなくても、心のなかですでに創作が行われていると考えればいい。つくるよろこびに生命がいきいきと輝いてくれば、それでじゅうぶんだ。  (…)  優れた作品に身も魂もぶっつけてほんとうに感動したなら、その瞬間から君の見る世界は色、形を変える。生活が生きがいになり、いままで見ることのなか

2023/3/16: まいにち だれかの ひとことを こころに。

 子供の頃から私は自分の胸の奥深いところに神聖な火が燃えているという、動かし難い感覚を持っていた。それは誰にも冒させることのできない、絶対的な存在感なのだ。しかし、現実には、幼い私は非力であり、学校でも、近所隣でも、理不尽で不当な力が常にそれをおびやかし、押しつぶそうとした。ぼくは特別エゴサントリックでも強情でもないが、ゆずることのできないものだから、しがみついて、頑張る。それはみんなに理解されない孤独で絶望的な闘いだった。 (…)  胸をおさえて、自分の身のうち奥深いところ

2023/3/15: まいにち だれかの ひとことを こころに。

 ぼくは、純粋に自分の生き方をつらぬいて生きていきたいと思った。目的をもたないことが”ぼくの目的”だった。限定された目的なんかもちたくない。いつも目的を超えて平気でいる。そこから自分がひらけていく。美術学校を受けるとき、両親は賛成も反対もなかった。なんでもこちらの自由にまかせていた。  親孝行とか親不孝ではなく、ぼくの場合は”運命孝行”だったんだな。人生は、君自身が決意し、つらぬくんだ。誰がなんと言おうと、君自身だ。  ー岡本太郎「自分の運命に楯(たて)を突け」よりー

2023/3/14: まいにち だれかの ひとことを こころに。

 おかしなこと、と雪のひとひらは思いました。どちらをむいても、わたしとおなじ、生まれたばかりの雪の兄弟姉妹がこんなに大勢いるのに、それでいてこんなにさびしくてたまらないなんて。  そう思ったとたんです。雪のひとひらは、何かこうなつかしくもやさしい思いやりのようなものが、身のまわりをすっぽりつつんでくれていることに気がついたのです。だれかがこちらのことを気づかっていてくれるらしく、その感じがほのぼのと、こころよく、雪のひとひらの全身に、くまなくみちわたりました。  もうすこしも

2023/3/13: まいにち だれかの ひとことを こころに。

真の哲学者たちはそんなようには行動しません。 不幸 ー それは単に黄金を試みる火にすぎないのです。 あなたは溶解炉の中を通り抜けてこられたのだ。 ートルストイ「光あるうちに光の中を歩め」よりー

2023/3/12: まいにち だれかの ひとことを こころに。

私はあらゆる思いのうちで もっとも深い名のない思いに沈んで ひと夜ひと夜に不具になってゆく月を 我を忘れてながめていた。 ー中勘助「銀の匙」よりー

2023/3/11: まいにち だれかの ひとことを こころに。

Eugène Ysaÿe ー我々ヴァイオリニストにとって神様のような存在と言っても過言ではありません。J. S. Bach のあの壮大な構成、教会の隅々にまで響き渡らせる精神性。大芸術家イザイとしての威厳を支える神にも通じる精神性、非常に細やかな人間性、さまざまな表情をたたえる眼差し、息遣い、人間イザイの全てが一つひとつの音から鮮烈に響き伝わってきます。 ー戸田弥生(ヴァイオリニスト)ー ☆楽譜も見ることができて秀逸な動画があるので是非☆ Ysaÿe, Eugène So