編む* 夜の影は穴みたい

書き損じた夜の手紙は
隣の山羊にたべさせて
だれにも知られないうちに
だれにも見られないように

いつもの草を食むその口は
僕のいけない言葉の束を
やわらかく細かくして
平気な顔をして飲み込んだ

けれど隣の山羊はその夜から
ぐるぐる踊るようになるものだから
にぎやかすぎて僕はすっかり眠れずに
今夜もまた君におやすみを言えない

あくびとため息から生まれた童話のような
ちょっと昔の話をしようと思う
君はたぶん暗闇の中で
筆を握っているのだろうから

夜の影は穴みたい
そこから美しいガーネットやラピスラズリを
掘り起こそうとしているのでしょう
そうであるのは知っています

そうであるのは知っています

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