編む* 今朝、君のことを考えてばかりいるから、

南の雨戸を開けると空は白み
夜はもう木の葉に隠れていた
西の雨戸を開けると
明るい月がおり
君を思い出した
今朝はまだ眠っているだろうか

先週くらいに
君はいなくなって
水槽は空になった
前を通り過ぎるたびに
その中に目をやって
もう居ないのだと
いつも新しい気持ちで気がついている
そうやって繰り返し
言葉を失う

見送られる玄関で
君は両手をはっきりと広げるので
僕らはゆっくりと抱擁を交わして
背中を互いに二度たたき
よろしく頼むよと声をかける
新しいハイタッチの仕方を教えたけれど
ちょっと不器用な君だから
一度で覚えられていない
間違えて屈託なく笑っている

今朝は燃えるごみの日だから
すこし湿って重いビニール袋を
集積場に持っていく
まだあまり
他の家からは出されていない
カラスよけのネットをかぶせてから息を吐くと
白い粒が朝の光線に明滅していたから
もう一度大きくほぅと吐き出して
それらを纏うように歩き出した
だから今朝は書けるような気がしたんだ
それを君に伝えたかった

君の事を考えている
もう駅に着くよ

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