もうすこしだけ書きたいことがあるのだけれど(天才のとある後悔とエンディングについて)

「…けっこうボケにしてますけどほんとはあれでむっちゃしっかり繋がってたらすごいなと思って。服着て言った台詞と、違うコントの台詞がかみあってたらすごいなと。あそこで『お〜っ』っとなるやつをできたらなと思ったんですけど…」
 配信特典映像のおばけカメラで、平井さんが微笑みつつも噛みしめるようにこのように言っておられた。ワクサカさんが「平井さんは天才だから。天才は自分のことを天才だと思っていないから努力する」と評した所以。
 配信視聴のみの私も「やってみたいことがあるのだけれど」と二人が繰り返し言う予告映像を観て、もしかしたらこの言葉きっかけに繰り返されるコントに繋がりや伏線回収があるのかなと期待していて。2022年の七支シリーズでも、なるほど!と納得の落としどころが見事だったので、前評判の高い今作にもそんな仕掛けがあるのかな?と勝手に期待を抱き観始めた。
 
 我らが天才が若干の悔いを残したのは、これまでの場面再現がフリとなる、'着憶'を取り戻す「洋服屋」。素敵な台詞がバッサリ斬られたり(観光案内)演者交代の台詞再現(研究者)も楽しく、アドリブ感もあることで、ホッとひと息つける視聴者へのご褒美のような愛すべき場面の連続。『お〜っ』が無くても、楽しく笑え続けた「洋服屋」はお客様満足度(当社比)を遥かに超えていたのではないかなと思う。

そして、その瞬間は突然。

あ、浦井さんが戻ってきた!


着憶を無くしたハットの紳士があの一着に手を伸ばした瞬間、もう一人の天才、我らが浦井さんに変貌した。
失われた13年…結成にまつわる年数。
当然の如く相方を見つけ、せかせかと着替えを促し、サンパチマイクを移動させ…
サンパチマイク?
私たちは、着憶を取り戻す旅を終え〈戻ってきた主役〉浦井さんとともに、平井さんを待つ。
オープニングの「漫才師」二人を待つ。

「やってみたいことがあるのだけれど」
確かに多くはその一言から漫才の中でのコント設定が始まるものだなぁ、などと思いながら。

「おまえの期待には応えられへんかったかもしれんけど、
着たい服は着れたんちゃう?」

えっ、期待と着たい…ダジャレ?
(ウエストランド井口さんが対コント師プロレスとしてよく使う)ほっこりでもお洒落オチでもなく、駄洒落オチは男性ブランコの単独で珍しいことではないか。ダジャレ好きと公言されているとはいえ。

「洋服屋」の場面からエンディングを迎えた時、
すべてのコントは〈戻ってきた主役〉を待つための壮大な物語だったのかと胸を熱くしたが、
そうだ、すべては平井さんが仕掛けていたのだ。
すべては平井さんが作ったネタだから。
すべては平井さんが作った漫才の中でのコントに過ぎなかったということなのかと愕然とした。
そういえば各タイトルも凝ったものではなく、言わば職業名の羅列、漫才のなかで「やってみたい職業…」として次々と挙げていくようなものだ。
そう思うと「したいことなんもできひんかったやんか」といつもより少し子どもっぽく拗ねる浦井さんを横目でチラッと見た平井さんの表情は、なかなかのたくらみ顔、「研究者」A的な。に思えてくる不思議。

そして二人の「漫才師」は姿を消し
終演挨拶に登場したのはコント師でもあり漫才師でもある、二人の天才から成る男性ブランコだったそのことだけを納得させて幕を閉じる。

じゃあさ、じゃあさぁ(突然の平井節で)
「洋服屋」は、着憶を取り戻すという設定だけではなく、二人の素の表情を取り戻し観せるための大切な場だったのでは。
そうであれば初めから『お〜っ』と言わせることなんて特に不要だったのだ。なーんだ、制作者満足度も高かったではないか。

ただ、天才は恐ろしく貪欲でもある。

#男性ブランコ
#やってみたいことがあるのだけれど


あー、またつらつらと書いてしまいました。
感想といいつつ、ほぼ想像を。
勝手にいろいろとすみません。
呆れた顔をしつつも最後まで読んでいただいたあなたに心より、ありがとうございます♡(スキ)

(あと「各コントは漫才のなかのネタにすぎない」と感じたのではなく、あくまでも構造についての感想です。各コントにはもちろん余韻があり、大好きで、登場人物も忘れ難き人たちばかりです。文章の未熟さゆえに誤解を生じさせていたらと思うと怖い。またしつこくしつこく書きたくなる自分が最も怖いです。)









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