世界名作劇場『魔女と竪琴』

世界名作劇場?
『魔女と竪琴』第1夜

昔、まだ世界に『魔女狩』などという悪習があった頃。
とある村に1人の魔女が住んでいました。

尤も、魔女と言ってもこの女性………
うっかりさんでお人好し。
普段は村人に勉強を教えていて、『先生』と呼ばれて慕われています。

魔女はお酒が大好きで
よく、村にあるこじんまりした酒場に
1人で通っています。
酒場のマスターは気難しい感じの細身のおじさんですが
最早常連といった魔女の飲みっぷりを大変気に入ってます。
………そりゃ売上に貢献してますからね。
マスターは興が乗ってくると、店の片隅に置いてある
バンドネオンを弾いて歌い始めます。

今日も魔女さん、お仕事終えてさて一杯。
酒場のドアを開けた時、そこには既に3人の先客が。

青年3人のうち2人は、魔女がよく知る顔です。
下戸の錬金術師と、これまた酒好きの御者。
彼らは魔女の幼馴染。
ただもう1人は初めて見る顔です。

彼は、都から来た楽士でした。
王様の御前でも興行した程だと
マスターが話してくれました。
何でもマスターの昔の後輩だそうで。

楽士と言うのもなかなか色々あるらしく
将来を色々考えて楽団を辞め、この村にたどり着いたとか。

楽士だった青年は、バンドネオンの置いてある
片隅の方にあった、ちょっと大きな、
変わった形の箱を持ってきました。
中身は銀の竪琴。
王様から下賜された逸品です。

『部品が壊れてて、弾いてても音に違和感があったらしいんだ。
マスターに頼まれて、その壊れた部品を作り直してた。』
口を開いたのは、1人だけ酒ではなく紅茶を飲んでた
下戸の錬金術師です。
『で、御者が何でここにいるの?』
『聞いて驚くなよ〜魔女。この楽士さん、俺と全く同じ日に生まれてるんだぜ〜』
すっかり出来上がった御者は、まるで楽士の肩を
自分の半身の様に抱いて上機嫌。
『しかし錬金術師も大変ね。便利屋さんみたいで』
『その扱い、御者とここのマスターで慣れてるよ。』

楽士だった青年は、やがて、竪琴を弾き始め
歌い始めました。
艶を帯びた竪琴の音色と、哀愁多目の青年の歌声に
魔女はいつしか聴き惚れ、すっかり酔ってしまった様です。
『ちょっとマスター。お酒の中に何か混ぜました〜?』
おやおや、魔女がすっかり恋する乙女の顔になってます。

この後、魔女と楽士の青年がどうなって行くのか。
続きはまた後で。

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