伊藤詩織控訴審判決➄ なぜか動機が見えなくなる裁判官たちⅠ
動機がない、ない、と一審も控訴審も裁判官はいうけれど、伊藤氏は自分で書いている。
この「悔しくて、悲しくてたまらなかった」は十分動機になりうるのに、なぜどの裁判もスルーしようとするのだろうか。
考えられる理由の一つは、山口側が一審で動機の所在を見誤ったことだろうか。
山口氏側は山口氏がワシントン支局長のポストから外され、就職を紹介できなくなったから、伊藤氏が枕を共にまでしたのに約束を守らなかったとして悔しさのあまり仕返しをたくらんだと主張した。
しかし伊藤が警察に行ったのは4月9日なので、まだ山口氏の転勤の話は出ていなかった。ゆえに伊藤がTBSの誰かから山口氏のそれ以降の処遇を聞いたのでない限り、転勤と結びつけるのは困難であった。(その可能性がないとは言えないが、証拠はない)
上記「悔しくて、悲しくてたまらなかった。」という感情が起きたのはもっと早い4月6日。山口氏からは4月4日に忘れものの件で電話を一回よこしただけで、その後音信がなかった。そこで伊藤からお疲れ様メールを送ったわけだが、それに対してもすぐ返事がなかったために伊藤は騙されたと勘違いした。
BlackBox でも「しかし返事はなかった」とした後、この悔しさを吐露している。返事を期待していたととるのが一般読者の普通の読み方だろう。
控訴審では弁護士らがこれを主張したが、裁判官は一審の主張を拾い上げて山口氏の主張に反対した。
一般の読者の普通の注意の読み方で判断すると、
❶そもそも準強姦であろうと強姦であろうと死を考えるような暴行に遭った者が、差し出されたからといって相手のTシャツを着て帰ることは不自然すぎる。(他に着るものはあったのになかったと嘘をついた)
❷ついさっき殺されそうになった相手に「またね」と言われたからといって会釈することも、あり得るとは思えない。
❸伊藤と山口とはまだ上司部下の関係ではない。伊藤が普段の生活を過ごすためには相手にメールをする必然性はなかった。暴行に遭ったというのであればなおさら、相手とつながらないほうがよかった。取り繕うにせよ、混乱したにせよ、職場内関係でのレイプではない。まだ仕事をしているわけではない。ビザがどうしても欲しかったのでないかぎりメールしてビザのことを確認するなど不自然である。
混乱していたにせよ、否、混乱していたからこそこのような行動をとるのはレイプ後として不自然と言わねばなるまい。
ところが裁判官たちは混乱していたからと言われると突然思考停止したかの如く、普通の読み方ができなくなる。
山口側は虚偽告訴があったとして伊藤氏を告訴した。
虚偽告訴についての文献は日本では驚くほど少ない。捜査情報を公開できないし、資料を集めることが難しいからだろう。
英語の得意な人はここから文献をダウンロードして読んでほしい。かなり翻訳が難しい。
label は伊藤が何度か間違えているけれど、レッテルと訳す。そうすると話がみえてくる。
主な動機の一つとしてあげられるrevengeは復讐と訳せるが、軽い場合には仕返しと訳すとわかりやすいだろう。
さらにこの論文では望まぬ合意という微妙なケースを取り上げて説明している。
この裁判でも伊藤側は証明の難しい合意があったかなかったかという密室では決着がつかない問題を争点とした。
結局前後の状況から裁判官は合意はなかったと判断したが、二人の陳述を読んだ人の中にはこの判断に疑問をもった人もすくなくない。
恋愛関係でもなく成り行きで、必ずしも最初から望んでそうなったわけではなかったが、相互に合意はあったのではないかとも読める。
そこで望まぬ合意を周囲に話したケースをみてみよう。
まさに、この事件にそっくりな経過がみてとれる。
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