見出し画像

18禁サーカス「ズーマニティ」レポート

 シルクドソレイユが、素晴らしい衣装や大掛かりな舞台装置などのアートワークにおいてトップレベルなのは間違いありません。サーカスアクトも、大きな技や複数人による全体の完成度を高めることで商業として大成功を収めています。でも、そこから零れ落ちた部分もあります。代替の利かない豊かな個性、観客と演者との近い距離など、言わば人間味とも言える部分は、巨大で完璧なショウケースからは不要でした。

 ズーマニティは、その点が他のシルクドソレイユのショウとは大きく異なります。これは、単なるトップレスが出てくるセクシャルなショウではありません。もしそうならば、大女の姉妹や小人などが出てくるはずがありません。

 ZUMANITY は、動物園の Zoo と人間らしさ Humanity を掛け合わせた造語とのこと。ド直球にセックスがテーマで下品なところも多々ありますが、それは性欲を刺激するためではなく、人間の動物的な個への賛歌として使われていました。

 個人的には、鍛え上げた肉体を持つ小人による白いティシューを使ったエアリアルが本当に美しくて、一番心に残りました。常識を超えた人間の豊かな個性がそこにありました。

 このサーカスは、終始徹底的に客いじりをします。冒頭からドラァグクイーンが客席に3人男が並んでるのを見て「あら、ここはゲイ専用シートかしら?」と話しかけたり、「レズビアンはどこー?」と声をかけて2階席から声が出ると「安いチケットを買ったのね」とボソっと言ったり。ショウの最中も、舞台上で本当に酷い客いじりをするのですが、それは秘密にしておきます。とにかく、客と舞台の心理的な距離感は非常に近い物でした。

 また物理的にも、劇場がシルクドソレイユにしては小さめです。ですので、裸に近い人の形が、はっきりと見れます。鍛えられた筋肉が活躍するのが分かります。あらゆる姿をしている個性豊かな人間の美を、エネルギーを、間近で感じることができます。

 まるで、今までのシルクドソレイユの反動のような、とことん人間味深いサーカスでした。これは18禁であること以上に、精神的な大人のためのサーカスです。もし見に行かれるときは、一番良い席を買う事をオススメします。当日でもホテルや街中のチケット売り場でディスカウントで買えます。 

  私は、シルクドソレイユの中でこのサーカスが一番好きです。ラスベガスまで見に行って良かった!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?