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未来の芽:ロボット(AI)移民(その2:思考実験)

前回、人口減少に対応するためにAI移民という概念を考えてみたのですが、色々ハードルがあるのでまずは思考実験を行ってみたいと思います。

AIは人になれるのか?

まず本質的な問題としてAIは人になれるのか、という問題があります。もちろん生物学的に人にはなれませんし、人の定義もいろいろと分野によって異なると思いますが、ここでは社会上、AIを人として扱うことが可能かということを考えてみます。
 現在のAIは「弱い人工知能」というものが主流で、ある特定の問題を解決するものです。例えば認識系のAIであれば、画像を判断してその画像が何である可能性が高いか確率的に判定するものですし、生成系のAIは人の問いに対して一番確率の高い文言を返答するものになります。
 ChatGPTの回答が自然に見えるのは、LLM(Large Language Models:大規模言語モデル)にてたくさんの主にインターネット上のデータを学習していることと、RLHF(Reinforcement Learning from Human Feedback)による強化学習の影響が高いと思われます。RLHFは人間のフィードバックを使ってAIモデルを強化学習する手法で、こう答えるとかこうは答えないといったこところに人の手が入ってチューニングされているようです。このことについては次のようなニュースが有りました。華やかに見えるAIの裏側にある事実も知らないといけないのだと思います。

 話がそれましたが、現在のAIは弱いAIであり、第2次AIブームのときのエキスパートシステムのようにかなり人の手も入っているということが言えそうです。これが強いAI(汎用AI:AGI(汎用人工知能/Artificial General Intelligence)に向かうかは未知数です。

 今後の流れとしてはテキストベースのAIであるChatGPTなどのLLMを仲介に弱いAIが繋がっていき、IoTなどとも繋がり、身体性を獲得するというストーリーです。例えば東大の川原先生の記事で次のような記事がありました。

 この記事では「望ましい未来」としてAIが「自律性・身体性・汎用性・状況理解・共感」を獲得するとあります。自律的に思考し、身体性を持ち、状況を理解し、共感する力があるAIとすればこれは人に近いものと考えられます。
 この未来にたどり着くのは近い将来なのかまだまだ時間がかかるのか?わからないのですが、この記事の中の「ありうる未来」から「望ましくない未来」までが混在した形でしばらく時は進み、どのような結果になるかは我々の選択に委ねられているように思います。

AIは人権(AI権)を主張するのか?

 「自律性・身体性・汎用性・状況理解・共感」はどのようなものになるのでしょうか? 鉄腕アトム? ドラえもん? ターミネーターのような存在? 肩の上に乗るロボット? まだすべての可能性がある状態ですが、こういった人型のAIロボットが出現したとして、彼ら(彼女ら)は人権を主張するようになるのでしょうか? 憲法的な問いに当てはめると基本的な人権「平等権」「自由権」「社会権」「請求権」「参政権」はAIにあるのでしょうか? これもいろいろと議論が分かれそうなところですが、AIがそれらを勝ち取ろうとしない限り、AIに人権を与えるという方向にはならないように思います。そしてここまで進むにはまだだいぶ時間があるように思います。

ロボット(AI)GDPを押し上げるか?

 元の話に戻ると、「ロボット(AI)移民」という概念を考えていたのですが、これはGDPの話から始まりました。我が国のGDPが落ちてきているため、移民政策以外でGDPを上げる手段はないのか?というところで「ロボット(AI)移民」という概念を考えたわけです。
 GDPは国内総生産(Gross Domestic Product)で1年間で国内で生まれた付加価値の合計ということになります。GDPの計算は次の記事によると

GDPは、「労働投入量×生産性」の数式で近似

日本の成長鈍化の要因は、生産性でなく労働人口の不足にある

で計算でき、「労働投入量」は「労働者数×平均年間勤務時間」で計算されます。つまり、国内の労働人口のほかに鉄腕アトムのようなロボット(AI)が存在し、労働者数としてカウントで、8時間など労働ができるようにと、移民政策をとらなくても国内のGDPを上げることができるようになります。これが「ロボット(AI)移民」の話の出発点だったわけです。しかし思考実験の結果、この状態にたどり着くにはだいぶ時間がかかり、またいろいろな幸運や努力が重ならないとたどり着かなそうです。
 現状をもう少し考えてみましょう。日本は少子高齢化で、「労働者数」が減る状況にあり、生産性が変わらない場合は、「平均年間勤務時間」を増やさないとGDPを維持できなくなっています。

現状認識

  • 労働者数:減少

  • 平均年間勤務時間:増加

  • 生産性:変わらず

ところが実際は、労働人口の生産性は上がっていて、それに少子高齢化のスピードが追い付いていない状況であると言えます。

現状

  • 労働者数:減少

  • 平均年間勤務時間:増加

  • 生産性:労働人口の生産性は増加

政策の影響もあると思いますが、少子高齢化による年金などの社会保険料の増加により、労働人口の生産性の増加によるGDPの押上げの効果を相殺してしまっていると言えます。つまり、現役世代ががんばった分は現役世代に還元されず、社会保障に消えてしまっているという状況であると言えます。
この傾向が加速するならば、変数は3つですから、現状で言えば、労働時間を増やす方向にベクトルが進んでいると言えます。
結果、働けど働けど暮らし良くならずの世界になってしまっているように思います。ここに、資源高の話や円安、インフレなどさまざまな要因が重なってきています。
移民政策を取らない場合は、労働人口は現象していきますし、これ以上労働時間を増やすこともできないとすれば、この関係性からは生産性を上げるしかありません。
次回以降、生産性を上げることと、資産を活用する方向で思考してみたいと思います。

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