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001 スイカを食べるなら、今だ

いま、スイカを食べなくては!

唐突に沸き上がった衝動に身を任せ、スーパーへ向かった。
ちょうどその日は小玉スイカが特売になっていて、税抜き498円。
白い網に半身を包まれたものを連れて帰った。

もう少ししたら、桃が届く。
義両親が生産農家なので、箱で来る。
枝をまたいで大きくなったせいで実に溝がついてしまったもの。
少しだけ茶色く傷がついているもの。
出荷ルートにはのせられなくても、皮をむいてしまえばみんなピカピカツヤツヤのおいしい子。
毎日大きな桃を1つ丸々食べていると、第二弾の箱が届く。
そのうちにネクタリンの箱も届く。
桃の甘い香りが家から消える頃に、かつてお世話になった方から梨の箱が届く。
片手に余るくらいの特大の梨。
食べ尽くす頃には、義実家から今度は梨が箱で来る。

はっ、と気づいた時にはすでに夏は終わりかけていて、スイカを食べるには涼しすぎる。
そうやって去年はスイカを食べそこねた。
桃は大好きだけど、スイカだって同じくらい大好きだ。
今年は早く気がつけてよかった。

こどもの頃はくし型か、さらにその半分かで、妙に長い先割れのスイカスプーンでほじくって食べた。
いまはもっと簡単に、皮をむいて一口サイズに切り分ける。
粗挽きの塩をガリガリと引いて多めにかける。
しゃくしゃく、じゅわじゅわ。
口のなかにあふれる甘い果汁。
最後に残った塩のかけらを噛み砕く。
スイカの甘味を強調するというよりは、むしろ後味がしょっぱい。
おいしい。
甘いしょっぱい、甘いしょっぱいを繰り返す幸せ。

まだ桃は来ない。
明日もまた、スイカ日和。



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