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初めてのお友達〜言葉の壁を越えて〜

先日、初めて娘が作ったお友達が家に遊びに来てくれた。ドイツの保育園で出逢い、親の手を借りずに、自分の力で初めて作ったお友達だ。今まではわたしの友人関係で娘にお友達ができるパターンしかなかったのに。

3歳になったばかりの、少し年下の女の子。セルビアから来たお母さんと、ギリシャ人のお父さんを持つその子は、ドイツ語しか喋らない。家では完全に日本語で育てられている娘にとって、コミュニケーションは簡単なわけではないはずだ。

保育園の先生の話によると、娘は自分より小さいその子のお世話に使命感を感じていて、靴を履かせたり、おしゃぶりを渡してあげたり、泣いてる時にはハグをして慰めてあげたりと、一生懸命だという。

ある日、娘はその子に誕生日会の招待状を貰った。少数精鋭、子供のゲストは二人しか来ないという小さなパーティーだった。娘が友達から好かれて招待を受けるなんて、わたしは可愛らしい便箋に丸い綺麗な字で書かれた招待状を読みながら、感動でいっぱいになった。

そんなささやかなパーティーも結局コロナのロックダウンを受けてキャンセルになってしまい、ビデオメッセージをお互いに送りあった。その子の送り返してくれたビデオを何度も何度も嬉しそうに見返す娘の姿を見て、本当に大好きな友達なのだとわかった。わたし自身はビデオに映る綺麗なベッドやおもちゃを見て、彼らが育っている環境が大きく違わないことがわかって安心した。

ドイツでは誕生日に主役がケーキや小さなギフトを振る舞ったりする習慣があるのだが、娘はその子に誕生日プレゼントとしてあげたものよりはるかに高そうなおもちゃをもらってしまった。その事自体は私の望むことではなかったけれど、娘のことを大事に思ってくれるのがよく分かったので、親子で家に遊びに来てもらうことにした。

顔も知らないドイツ語しか喋らないだろうお母さんを家に呼ぶのは初めてで、緊張した。女の子の顔つきと、ワッツアップでやり取りする親切な感じからして、生粋のドイツ人ではないだろうなとは予想出来たものの、どこのどんな性格の人なのか全く知らないわけで、ドアを開ける時には「えいっ」と清水の舞台から飛び降りるような感覚もあった。

ドアの外に立っていたのは茶色い髪をしたヨーロッパ風の顔つきのお母さんだった。とても気さくな人で、わたしの拙いドイツ語にも親切に耳を傾け理解してくれ、楽しい時間になった。ダンス教室や、乗馬など、一緒に行けたらと色んな情報をシェアして誘ってくれた。「子供同士が仲が良くても親同士が仲良くなれるわけじゃない」と悩む人は多いから、これは本当に稀なケースだと思う。

娘はお友達の訪問を本当に喜んで、保育園の終わった後の短い間だったけれど、二人でトランポリンをしたり、プレイマットで作った狭いお家に入ったり、夢中で遊んだ。そのとき娘にわたしは不要だった。二人で遊んでいる時にぶつかったりしたのか、何度かお互い泣いたけれど、お友達は帰りたくないといって最後に一番泣いた。

娘は好きなお友達と楽しく遊んだ後、見送る時に必ず「また、うちに遊びに来てね」と言う。この日はドイツ語で、エレベーターに乗ったお友達とママにそう言っていた。わたしの頭には和訳がされてしまって、娘の喋ったドイツ語が正確に書き残せないけれど。

「言葉を超えて人を愛せる感覚を覚えて欲しい。」

そう思って1歳半から現地の保育園に入れた。4歳までは母語を固める時期という説はもちろん知っているし、信憑性もあると思っている。だからこそ不安の中に光る、この日のことを忘れないと思う。

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