自動ドアの『点検詐欺』

*嶋津タイマーの話題騒然なので、2018年に書いたエッセイを発掘して再掲する事にしました。

 とある月曜日のこと。
「自動ドアが途中までしか開かなくなったので、業者に連絡して良いですか?」
と、受付から言われ承諾。ドアが半分開いたところで減速して止まるので、すぐに開くと思ってそのまま歩いた患者さんがぶつかってしまうという危険な状態。受付が自動ドアの上に書いてあるフリーダイヤルの連絡先に電話をし「院長の許可が要るとか言われてますが…」とのことで電話を替わり、「困っているのでとっとと見にきて!」という主旨を婉曲に伝えた。
 午後になって見に来た業者の人は、小一時間見て回って、説明したいと言っているというので、「どうぞ~」と言っても入ってこない。説明を聞きに自動ドアのところまで見に来いという意味かと気づいて行ってみると、11年経って、モーターが劣化しているのと、レールがすり減ってドア全体が下がっているので、全部交換が必要だという趣旨の説明。うん、でもそれ、既にカバー嵌めてしまった自動ドアの前で聞いても、部屋の中で聞いても、同じ事だよね? 立ち話状態で、どれくらい日数がかかるか尋ねると、修理は部品を取り寄せて修理の人間を手配するのに1週間はかかると。うちの表の入り口はそこしかなくて、裏口はぐるっと回って遙かに遠いので、そこから出入りするしかない。手動ではとても開けにくい構造なので、自動ドアが手動ドア状態になるのはかなり困る。電話の時点から始まったイライラが募ってきて、「修理が必要なのは分かりました! とにかく見積もりを出して下さい!!」殆ど叫び声になっていた。見積もりはすぐにできるのでと、車にとって返した業者の人が呈示した価格は「35万円!」声が悲鳴に近くなった。
 一刻も早く発注して工事して貰おうと思っていた私だったが、そこで流石に「ちょっと待った~!」という気分になった。そもそも、その自動ドアの工事は、当院の建物関係を全てお願いしている〇〇組を介して行った筈のものである。それなのに、なぜ、この業者の見積もりには福岡の住所が記載されているのか? 「これは、〇〇組さんにもお尋ねしてみてお返事したいと思いますが、それで宜しいですね?」と回答すると、業者の人はあっさり引き下がった。ただ、〇〇組という名前があまりピンときていない様子だったので、下請けではないのか? という疑念が残った。速攻で〇〇組に電話。値段を話すと見積もりを見せてくれということで、FAX。その結果、別の業者に再度見積もりさせるということになった。
 火曜日。急遽手配して頂いた業者の人が2人組で登場。15分ほどで、「昨日の業者さんは、上のボックスを開けていましたか?」と受付に尋ね、「開けていましたよ」と受付が答えると、2人顔を見合わせて頷いて、「ビスが2つ緩んでいましたので、締め直しました」と。いやいや、それでも調子悪いはずだから見て~と、ドアを開けてみるとやっぱりドアは半分までで止まる。ただ、月曜日の業者さんに見てもらったあとは、半分も開かなくなって、見てもらってかえって悪くなった状態だったのだが、それは改善した。「あれ? もしかして、調子がわるくなったから、昨日の業者をよばれたんですかね?」「もちろんそうですよ!」結局、器械を交換しなければならないというのは間違いなかった。
 その後〇〇組の担当者が来て、月曜日に連絡した業者の連絡先は、本来の施工業者の連絡先の上からシールが貼ってあったものであると看破し、シールを剥がしてくれた。一枚ではなく、2,3枚重ねて貼られていた。受付がその電話番号を検索すると、「点検詐欺」というネット情報にヒットした。無料で点検しますといっては点検し、その際に本来の連絡先の上に自分たちの連絡先のシールを貼ってしまう。自動ドアの調子が悪くなると、そこを見て連絡する事が殆どなので、そうして修理にやってきて高額にふっかける、というご商売をなされているようであった。ネットでは、点検の際に一週間ほどで壊れるように細工していくという、より悪質な事例もあるらしい。2人組で見に来てくれた人達が緩んだビスのせいではないかと当初勘違いしたのは、そういう事例が横行しているからだったのであろう。当院の自動ドアの場合修理費は18-20万円とのことで、35万円はやはりふっかけられていたのであった。冒頭の電話の時から何かしらイライラさせられたのは、何かの違和感を察知していたためだったのに違いない。なお、ビスの件は緩めたのか、緩んだのか、ビスを締める能力も無かったのか、どうせ修理するのだからと放置したのか、それは不明である。
 今後は、修理関係は全て〇〇組を窓口に連絡するという事を院内の申し合わせにした。
 機械関係は、貼ってあるシールに頼りがちだが、シールを鵜呑みにせず、必ず納入書で確認出来る「本来の業者」に連絡するか、シールに書いてある連絡先を一度ネット検索してみる事が必要だと思われた。電話番号がフリーダイヤルだと、どこにつながるのか分からない。その際、単に業者名だけをネット検索するのではなく、業者名に、「詐欺」などの検索ワードを追加して検索するのがお勧めだ。冒頭の業者も、業者名だけで検索するとかなりまともなHPにしか当たらない。ネット情報では、全国的な会社でも末端の下請けが阿漕な事をしている場合もあるとの事である。
 「まっとうな」業者さんにお願いしても、部品のお取り寄せには10日かかるとのことで、自動ドアは手動ドア状態。10年越える機械類は点検してもらって、消耗品は早めに交換がベターなのであろう。ただ、20万円近い金額を壊れていない段階で交換する気になっただろうか……….
 そして、最後に。「ただより高いものは無い」「無料点検には裏があると思え」。皆さんも、自動ドアに記載されている連絡先が、上から貼り足されたシールになっていないか、一度ご確認下さいませ<(_ _)>

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?