奥本大三郎『ファーブル昆虫記』(書評ラジオ「竹村りゑの木曜日のブックマーカー」5月19日放送分)
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<収録を終えて>
私は分からないことは素直に分からないと言おう。
それは学者らしくない態度かもしれないが、少なくともたった1つの価値を持っている。
すなわち、真正直という価値である。
小学生の頃、ファーブル昆虫記を夢中になって読み、ファーブルの伝記にも手を伸ばした私が出会った、今でも忘れられない言葉です。
ファーブルが遺したこの名言は、様々な形で翻訳されているのですが、やはり、子どもの頃に出会った、この訳し方が一番好きです。
知らないことを、知らない、と言える謙虚さを、その美しさを、子ども心に深く感じて胸が震えたのを覚えています。今でもソラで言えてしまうくらいに。
この言葉の通り、ファーブルは「知らない」ことを恥じるのではなく、「知っていく」過程に史上の喜びを感じる人であったようです。
誰も注目しないような昆虫を見つめ、叙事詩とも例えられるほどの美しい昆虫記を綴った原動力は、そこにあったのでしょう。
今回ご紹介したのは、ファーブル昆虫記の中でも特に知られている「スカラベ」と「ツチハンミョウ」が収められた本です。
日本でのファーブル研究の第一人者である奥本大三郎さんが、現代の子ども向けに語り直したものなので、やさしい表記となっているのが特徴です。
ちなみに、集英社文庫のカバーは、ドラゴンボールの作者で知られる鳥山明さんのイラストによるもの。昆虫の世界を覗くミクロだけれどマクロな大冒険は、ドラゴンボールを求めて筋斗雲に乗り駆け回る悟空たちに重なるところがあるのかもしれません。
それでは、今回はこのあたりで。
また、お会いしましょう。
<了>
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