上原ひろみ with 新日本フィルハーモニー 2009.12.24@すみだトリフォニーホール (2009.12.26)

12/24 Thu すみだトリフォニーホール
指揮:沼尻竜典 新日本フィルハーモニー交響楽団

この演奏会の企画が発表された時、思わず小躍りして喜んでしまった。
「上原ひろみ作編曲によるオーケストラ作品」ということ以外、曲目も不明。

上原さんのどの曲がオーケストラにアレンジされるのか、
クラシックの曲は演奏されるのかなど、あれこれ思い巡らせながら、
かなりワクワクしながら本番の日を待っていた。

そして。


実際に演奏を聴いた結論から言うと、


満足度は50%くらい。。。


ピアノソロの場面では、上原ひろみワールドが更にパワーアップし、
ピアノの音色もホールに美しく響いて、本当に最高だった。
アンコールも盛り上がって、なんと4曲も演奏して応えてくれた。


しかし、肝心のオケとの共演は・・・
ワクワクしたけど、いつものような後味とは違うし、
感動したけど超感動!というわけでもない。
でも、決して期待ハズレだったわけではなく、
かといって期待以上でもなかった。

ジャズでもなければクラシックでもなく、
かといって「上原ひろみ」というジャンルが確立されていた、とも思えず。。。

なつかしのピアノトリオ時代の曲がたくさん演奏され、
しかもオケなので、生で聴けて良かったとは思うけど。。。


まずは、演奏曲目。

第一部

1. Brain Training (Orchestra)
2. Reverse (Orchestra)
3. Golden Earrings (Orchestra)
4. The Tom and Jerry Show (Orchestra)
5. Spiral (Orchestra)


第二部

6. Legend of the Purple Valley (Strings)
7. Place To Be (Strings+Ob)
8. Old Castle, by the river,
  in the middle of the forest (Piano Solo)
9. Choux a la creme (Piano Solo)
10. Step Forward (Orchestra)
     Step Forward 1
     Step Forward 2
     Step Forward 3

EC1. CHRISTMAS SONG MEDLEY (Orchestra)
EC2. I've Got Rhythm (Piano Solo)
EC3. Pachelbel's Canon (Piano Solo)
EC4.The Tom and Jerry Show (Piano Solo)



という感じなので、この演奏会を実際に聴いて感動された方は、
この先を読むと不快に思われるかもしれません。
読み進める場合はご注意下さい。







* * * * * 





第一部が終わった段階で、
オケの魅力も出し切れていなければ
上原ひろみの魅力も発揮しきれないまま終わったという
中途半端な印象だけが残った。

第二部では、
弦楽器のみの編成あり、ピアノソロあり、そしてコンチェルトあり。
それぞれが素晴らしくて、
上原ひろみを聴いた時に毎回感じるワクワク感が蘇って来たが、
それでも、いつもの「最高」までには辿り着かなかった感がある。


1曲目の「Brain Training」は、
オールドアメリカン的なセピア色の世界が広がり、
曲が本来持っているコミカルさやスリリングさが上手く表現されて
(オケの演奏も少々スリリングだったけど)
聴いていて刺激的だった。
オープニングがこの曲だったので、かなり期待していたんだけど。。。

いきなり話しは第2部冒頭へ飛び、
弦楽器のみの編成で演奏された「Legend of Purple Valley」。
ストリングスアレンジによって、
この曲のメロディーラインの美しさが原曲以上に際立っており、
鳥肌立つ感動だった。
アレンジもさることながら、楽曲に秘められた力を感じた。

コンサートのメインでは、上原さんが14年も前に作曲したという
ピアノコンチェルト「Step Forward」が演奏されたのだが
これが、とても新鮮!(初演だから当たり前か)
どことなく夢見がちなモチーフが現れたりするあたりに
青春真っただ中の上原さんが垣間みれる気がする。

また、最初からコンチェルトとして作られたためなのか、
それとも僕が初めて聴いたからなのかはわからないが、
この曲はピアノとオケのバランスが良かった気がするし、
pの時もfの時も、ピアノの旋律がオケに消されることなく
綺麗に浮き上がって聞こえた。

ただ・・・比べてはいけないと思いつつ、
どうしてもクラシックのピアノコンチェルト作品と比較してしまう自分がいた。

ガーシュウィンの「ラプソディー・イン・ブルー」等をやってくれれば
オケと上原ひろみ双方の魅力が大爆発だったのではないだろうか。

第一部では、「Reverse」や「The Tom and Jerry Show」の
フルオーケストラバージョンも演奏されたが、
どちらもオケとピアノが上手く絡み合っていない気がしたし、
演奏が崩壊しないようにと安全運転された感もあり、
曲の重要なファクターであるはずの疾走感が失われてしまった気がする。

余談だが、「Reverse」が演奏されたことで、
「Music for Three-Piece-Orchestra」のオケ版は
今回は演奏されないということが判明。
この曲こそオケに編曲して一番しっくりくると思っていたので
ちとガッカリ。

「Spiral」も、期待し過ぎたためか、あまり好きではなかった。
この曲で特に感じたことなのだが、
オーケストラは、もっと色々な音色が聞こえてきて、色彩豊かで、
広がりや奥行きといった空間的なものも感じられると思っていたが
残念ながらこの日の演奏にそれは感じなかった。
それが演奏に起因するものなのか、指揮者なのか、楽曲なのか、
それとも編曲なのか?

このコンサートを聴いた多くの人が大絶賛していて、
上原さんご本人も「長年の夢が実現した」と喜んでいるというのに
そこにイマイチ共感できなかったのは残念だと思うが、
こればかりは僕自身の好き嫌いの問題なので仕方がないと思う。

でも、オーケストラとの共演は今後も是非是非続いて欲しい。
今は共感出来なくても、来年は共感出来るかもしれない。
ピアノトリオやSonicbloomや、そしてピアノソロと同じように、
「これが上原ひろみのオーケストラの世界か!」と
心底共感出来る日が来ると良いなぁと思う。

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