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24/02/10 屏東(1) 博士の愛したサーモン

南台湾に来たのです
わたしにとってそれはすべてに優先されることです

なんの話かというと!もちろん!
丹丹漢堡に行くことですよ!!

高雄発祥のローカルハンバーガーチェーン、丹丹漢堡。ハンバーガーと麺線のセット、フライドチキンと肉そぼろ粥のセットなど「習合」とも言うべき台湾ローカルフードとの合体メニューを提供し、しかもそれが安価ながらハイクオリティ。
店舗はどれも常に行列ができる人気ながら台湾南部にしか決して出店しない伝説的なハンバーガーチェーンで、ちょっとググると台北まで配達するという冗談のような第三者のサービスまで出てきます。

僕はかつて台南を訪れたときに一度食べたのですが、今回高雄を訪れるからにはなんとしてもまた食べたいと思い、出発前からメニューをDLして研究するほど気合いをいれていました。

ホテルをチェックアウトしたあと、高雄駅へ向かう前にわざわざ地下鉄を乗り継いで店舗へと向かいます。

お休みでした

嘘…だろ…。

わざわざGoogleマップで確認して、他の店舗は休業になってるけどこの店舗は営業中になってることを確認してから来たのに…。本店のような位置付けの店舗だからさすが正月でもやってるんだなと思ったのに…。この店舗だけ情報が更新されてなかっただけ…ということか…。

失意を引きずったまま、台湾鉄道の高尾駅へ向かいました。駅でいちごミルクを買って飲み、朝食にしました。
あ、遅れましたが明けましておめでとうございます。今日が旧正月の元日です。

高雄から台湾鉄道で向かったのは、屏東ピンドン

高雄や台南と比べると拓けておらず、駅前の街並みにはどこか日本の地方都市のような雰囲気があります。

宇都宮駅前

今回ここを訪れた最大の目的は「北の鼎泰豊、南の正筠」と名高い小籠包の名店、正筠小籠湯包に行くこと。駅から1km強の道のりを歩いていきます。

途中、お廟(慈鳳宮)がめちゃくちゃ賑わってました。さすが正月。

しかし駅から離れるほどに加速度的に人が少なくなっていき、道程の半分も過ぎると道を歩いているのは僕一人となりました。

そして。

まあ、休業中でしたね…。
これもGoogleマップではやってるはずだったんですけどね…。ただ正直僕も途中で「あ、これやってないな」という予感みたいなものはあったんですよね…正直やってる3:やってない7くらいの予想だったんですよね…でもせっかくここまで来たんだしという気持ちだけで来たんですよね…。

引き返して、「太平洋百貨店」というデパートの地下のフードコートでお昼を食べました。

ダイエー志木店

普通においしかったです。台湾のデパートはほぼ必ず地下にフードコートがあり、これに何度お世話になったことか知れません。

食べていると、突然けたたましいシンバルと太鼓の音が聞こえてきました。そして、龍が現れました。

そして食後せっかくだからと他のフロアを眺めていると、再び突然鳴り響くシンバルと太鼓!そして現れる龍!

龍!!

これはなんかもうそういう怪異のたぐいじゃないのか!?
しかし店員さんはみんな大喜び。龍は縁起のいい生き物で、辰年の今年はまさにラッキー盛り。この後も龍はフロア(文字通り)を沸かせていました。

屏東駅からバスに乗り、今夜の宿がある東港へ向かいました。
途中「萬丹」という場所を通ったときテンションが上がりましたね!なぜかというと、スーパーとかに行くたびに萬丹と大きく書かれた牛乳をよく見かけるんですよ。地名だったのか!十勝に実際に来たみたいな興奮があります。

少しすったもんだしたものの民宿に荷物を下ろし、川沿いを下って港へと歩いていきます。

どこまでも続く堤防。空は一面の曇天。
景色は完全に「冬」なのに気温だけ20℃近くあるので、なんだか変な感じです。別ハードに移植されるときに追加された手応えの一切ない超低難易度モードの冬って感じ。

東港は台湾有数の漁港で、特にクロマグロの水揚げ量の多さで知られているのだそう(地球の歩き方より)。なんと正月だというのに市場が営業中です!嬉しすぎる。

メニューをのぞいていたら呼び込まれたのでなんとなく入ったお店で、白米と刺身をいただきます。

加えてハマグリのスープを頼んだのですが、小サイズでも明らかに4人以上で飲む量だろというデッカいボウルで出てきてしまいました。
なので隣のテーブルの人に「ひとりだと多すぎるのでよかったら飲みませんか?」と尋ねてみました。
するとそこから交流が始まり、隣の席のおじいちゃんが声をかけてくれるようになりました。

「この市場にはもっと安くてうまい刺身を売る店がある、後で教えてあげる」
「ありがとう!」

隣のテーブルで食べていた魚料理がうまそうだったので僕もオーダーしました。
出来上がるのを待っていると、おじいちゃんがたびたびこっちの席に来て肩に手を回して声をかけてくれます。
日本から来たこと、高雄からこっちへ観光に回ってきたことなどを話しました。なんで東港なんて知ってるんだと聞かれたので「ガイドブックで読んだ、ここのシーフードはとてもおいしい、最高!」と答えました。
するとおじいちゃん、刺身をおごってくれるというじゃないですか!やったあ!

魚が来たので食べます。めちゃくちゃうまいです。カサゴのような見た目なのですが多分違いそう。とにかくうまいです。台湾の蒸し魚は個人的に世界の魚料理で一番うまいと思います。

そして「食べ終わったら刺身に行こう」と言っていたおじいちゃんが何度もこっちの席に来ては声をかけてくれます。

「実は30年間アメリカで働いていて、引退して台湾に戻ってきたんだ。だから英語を喋れるんだ」
「すご!!」

「実は私は化学博士(Chemistry Ph.D.)でエンジニアだったんだ」
「すご!!!」

おじいちゃんすごいな! でもなんで情報が全部小出しなの? 公式アカウント?

やっとこさ食べ終えたので待たせてしまっていたおじいちゃんに「ドクター、お待たせしてすみません」と伝え席を立ちました。呼びかけに使える敬称は便利。
会計を済ませようとすると、なんと「君の分も払っておいたから」という。マ、マジで!? ありがとうございます!! ごちそうさまです!! いいんですか!? 結局ハマグリのスープも僕が全部一人で飲んだのに!?

そしてドクターとっておきの刺身の店に連れて行ってくれ、「君はサーモンが好きだろう」と言うと店員に伝えてサーモンだけを詰め合わせたパックを作ってもらい、それを僕におごってくれました。

そしてさっき食事していた席へ戻ると(いいの?)、パックを開き、僕にどんどん食べなさいと勧めてくれます。
ドクターは食べないんですかと聞いても自分はいらないからと。

「私は日本が好きだ。かつて日本は台湾を統治していて、私の父はそのときに習ったから日本語を少し話すことができた。彼も日本が好きだった」

とドクターは言ってくれました。
僕はそれに対して「僕も台湾が好きです。台湾の人はとても良い人たちで、僕はその人たちのことが好きです」と言いました。これは1年間滞在して全く偽らざる本心であり、好きの一言では表しきれないほどに感謝しているのですが、彼の言葉に対する返答がこれで良かったのかはあまり分かりません。

親世代が日本統治時代を経験しているという人からその話を聞くことは初めてではなく、その人たちはみんな日本のことを好きだと言ってくれるのですが、僕は未だに本当はどう答えたらいいのかが分かっていません。

それにしても博士号とってアメリカで30年働いたあと故郷の漁港に戻って市場でうまい刺身をおごってるジイちゃん、ちょっとカッコよすぎる。

違う道を通って帰ったらサトーココノカドーがありました。