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24/02/01 【感想】逆転裁判4

「逆転裁判456 王泥喜セレクション」で「逆転裁判4」をプレイしました。楽しかった!面白かった!

「面白かった」より「楽しかった」のほうがこのゲームの一言目としては適切だと思いました。この逆転裁判4、良くも悪くも全体的にパッション。ノリと勢い、そして"気持ち"です。

本作は探偵パートがとても楽しかったですね!
新登場の助手キャラ・成歩堂みぬきの溌剌としたリアクションや掛け合いがとても楽しい。
明るいしっかり者で事務所の経営も支える成歩堂みぬき(15)が成歩堂や王泥喜の尻を叩いて捜査を前へと進めるさまが可愛いったらない。多分この性癖って幼い頃に読んだ「名探偵夢水清志郎事件ノート」シリーズに植え付けられてる気がする。

「蘇る逆転」から続投のカガク捜査で証拠品から重大な情報が浮かび上がるのもアクセントになってテンションを上げてくれます。
推理ゲームの実装として重要な情報の入手を特別なものにするために特別な操作をプレイヤーに求めたくなるのですが、それを2・3ではサイコ・ロックが担っていたのに対し、本作ではそれがカガク捜査に置き換わっているのでしょう。個人的にはこっちの方が好き。

扱う謎も「ポーカーのイカサマ」「一晩で複数のパンツとラーメン屋の屋台が盗まれた」「音楽ライブのイリュージョン」など華があって楽しいものがたくさん。また事件との関わり方も従来一般的だった「弁護の依頼を受けて参画」にとどまらず、ライブに行ったら偶然巻き込まれるなどキャッチーなツカミから探偵パートに入っていくのが新感覚。

一方の法廷パートは、王泥喜くんが成歩堂に比べて頼りなく感じることが多かったかも。「弁護士はピンチのときこそふてぶてしく笑うものだ」を信条とする成歩堂と比べると、王泥喜はハッタリが足りなかったですね。食い下がり方もなんかガキみたいで…。俺の推理を体現するんだからもっとシャンとしてほしい。そういう意味で「操作キャラとしての魅力」に欠けていた印象です。
あとプレイしているこっちは気づいていて王泥喜に言わせたいと思っていることをみぬきちゃんや牙琉検事に言われてしまうことが何度かあり、それが釈然としなかったよ…。

そして法廷パートではなんといっても新システム「みぬく」。これがイマイチでした。
証人が嘘をついているときにする特定の仕草を見抜いて指摘し「この証言のときだけやたら指をいじりますね??」みたいなことを言うというものなのですが、法廷でやることじゃなさすぎる。完全にロジックの流れの外側にあるものなので話の流れにもゲームの流れにも噛み合ってなかったです。突然ジョルノの汗なめるのとやってること変わんないからね。

しかしシナリオ面では「王泥喜の法廷」そのものにメタレベルで大掛かりな仕掛けが施されていることがあり、僕は好みでしたね! 特に第1話はかなり好きです。

本作「4」は、より穏当で妥当で真っ当な表現が他にもあっただろうと思われるところをとにかくケレン味に振っており、特に最終話は色々とかなぐり捨ててケレン味を求めています。これによって最終話は良くも悪くもオンリーワンのプレイ体験となりました。
僕個人の体験の感想としては…めちゃくちゃ面白かった!
詳しくはここから下の各話ネタバレ感想で。

なお各話の感想は当該エピソードのクリア直後に書いたものなので、どれもその時点の感想になっています。


ここからネタバレ


第1話 逆転の切り札

この事件面白!!!

逆転裁判123をやると、普通なら逃げおおせられそうだった真犯人が逆転逮捕されるパターンに「法廷に来てしまったため証言台に上げられて、ウッカリ犯人しか知らないはずのことを口にしてしまう」があることに気づきます。
本エピソードは、このパターンを知り尽くした成歩堂が「真犯人に真犯人しか知らないはずのことを知らしめた上で法廷におびき出す」…つまり上記パターンを故意に作り出しているのです!

これは成歩堂が操作キャラだとできない芸当ですよねえ。主役交代のこのタイミングでしかできない大技をマジでやってくれました。最高。良い意味でも悪い意味でもドルリー・レーンみたいでカッコいいぞ、成歩堂。
オドロキ君の「牙琉弁護士事務所の新人である」という属性だけを買われて組み立てられた計画なのですが、それでいてオドロキ君の見抜きの力が発掘されるというバランスのとり方も絶妙です。


第2話 逆転連鎖の街角

探偵パートが楽しいエピソード。新アシスタント・成歩堂みぬきとのコンビで行う探偵がとにかく愉快です。
バラバラに見えた三つの事件が絡まりながらまさかの真相につながる事件の作りも非常にグッド。複雑かつトンデモなことをやりながら逆転裁判の手続きで読み解かれるため読みやすくなっていることも併せて、逆転裁判の得意技を存分に堪能できました。

そして真相のなかにあらわれる、ラーメン屋の屋台の中から被害者を射撃する美波のシーンがめちゃくちゃ良い。名画です。

ただ、あの、1話から薄々感じていたことではあるんですが…「みぬく」、言いがかりすぎる
相手が嘘をついていることを気づいたとしてもそれを直接言うんじゃなくてそれをヒントにして証拠と論理で嘘を暴けよ!法廷だぞ!
それミステリの歴史上多くの作家が志してはスベッてきた"心理探偵"ですからね。炭酸コーヒーですからね。炭酸コーヒーはうまいですが…。これだけはホント…好きになれない…。


第3話 逆転のセレナード

最初に白状しておきますと、このエピソードから「みぬく」はひと目見て気づかなかったら即攻略を見ています。

この第3話を端的に表すなら「意欲的な試みとガバガバな真相が別居しているエピソード」。

探偵パートは今回も非常に楽しいです。
今回は偶然現地を訪れていたオドロキとみぬきちゃんが事件に巻き込まれるという導入。
依頼を受けて調査を始めるタイプのエピソードだと調査を始めた時には初動捜査が終わっていて、それはそれで整理された情報を得られたり検察側は見つけてない証拠を探す楽しみもあったりするのですが、本エピソードはやっぱりヨーイドンの地点からリアルタイムに進行する初動捜査をプレイできるのが楽しい!

また「蘇る逆転」以来の映像の証拠やミキサーを使った音声の証拠、シリーズ初の見立て殺人など意欲的な試みが多く行われています。
映像や音声の資料は再生に時間がかかってあまり好きではないのですが、事件そのものが音楽ライブや奇術を扱っていることからシナリオの味と噛み合っており、今回だけならアリかなって感じ。

一方、明かされる真相は色々とつじつまが合っていない気がします。ミステリとしてはなかなか問題なのですが、ゲームとしてはギリギリ気にならなかったかな…ここは僕が幸運だっただけかもですが。

このゲームにおいて真相部分の不合理が一番足を引っ張るのは「プレイヤーがおかしさを感じて指摘したら誤った指摘だとして減点される」場合です。これは本当に萎える。ムジュンを見つけて指摘するこのゲームの根幹を揺るがす致命的な瑕疵といっていい。
ただ、本エピソードに関してはガバガバな部分がムジュン指摘のレールからは辛うじてずれています(大口径の銃を子供が発射したとする検察の主張など乗っかっている部分もあるのですが)。特に「意欲的な試み」とはあまり重なっておらず…上で本エピソードを「意欲的な試みとガバガバな真相が別居している」と評したのはこのことです。


第4話 逆転を継ぐ者

成歩堂操作すんのスッゲーテンション上がる!ここへきてMASONシステムで一気に語り口が変わってどんどん景色が変化するの面白!!でも裁判員に恣意的に編集した裁判以外の情報を見せて誘導するのダメじゃない!?

…というので本エピソードの感想の8割を語りつくせる気がします。
MASONシステム編面白い、めちゃくちゃ面白いですよ!でもこれシステムが面白いというより成歩堂の消えた7年間からどんどん裏側が見えてくるのが面白いだけであってMASONシステムそのものが面白いわけじゃないので、このシステムじゃなくてもよかったんじゃないか…!? 例えば「逆転裁判3」には成歩堂が裁判記録を読んでいるというていで新人時代の綾里千尋を操作するパートとかあったし…。
そして法律では裁ききれない相手をやっつけること自体は良い(それこそ「3」のラスボスとか)のですが、それに裁判員制度を使い、検事も裁判長もそれを是としていることには大きな違和感が残ります。
「気持ちでは絶対こいつが犯人なんだけどそれを立証しないといけない」というのが逆転裁判というゲームであり法廷じゃあなかったのか。

ただ繰り返しになりますが最終話にきて成歩堂の7年間が一気に物語を飲み込んでくる凄まじさは過去作に類を見ないほど熱中させてくれました。ここを併せても、やっぱり「逆転裁判4」は探偵パートがとびきり面白い作品だと思います。
第4話前半の被告人が猛毒で倒れて審理が中断するまでがバッドエンドの表ルートで、そこからがトゥルーエンドに繋がる裏ルートって感じ。

「蘇る逆転」は宝月姉妹の数奇な物語を成歩堂が解き明かすエピソードでしたが、本作「逆転裁判4」は法介・みぬき兄妹のより壮大で数奇な因縁を成歩堂が解き明かす話だった、という印象を受けました。
「蘇る逆転」では探偵役の成歩堂が視点人物(操作キャラ)でしたが、本作では王泥喜法介が視点人物でありながら大局的な探偵役は成歩堂であるという構成になっています。
最終的な謎解きを行う探偵役と視点人物が別であることは推理小説では全く珍しくないのですが、推理ADVでは極めて珍しく、この構成が唯一無二のプレイ体験をもたらしてくれました。
1話の感想で成歩堂の動きを「良い意味でも悪い意味でもドルリー・レーンみたい」と書いたのですが、終わってみるとマジで本作の成歩堂は『Zの悲劇』のドルリー・レーンでしたね…。

ところでみぬきちゃんがオドロキの半妹であることはおいおい頃合いを見て伝えるとのことでしたが、早く伝えてあげないとこのふたりワンチャンありますよ。これが麻耶雄嵩作品だったら普通にもうやってますよ。