24/08/18 最近見たテレビ #10
「シャルロットだけはぼくのもの」がアニメ化されるのです。それはわたしにとって全てに優先されることです。
見ましたよ! 26時から放送されるのを、リアルタイムで!
「シャルロットだけはぼくのもの」といえば僕にとって生涯ベスト10に入るほどの大好きな短編ミステリ。夜ふかしするだけの価値は十分にあろうというもの。
小鳩くんと小佐内さんが闘おうとしているッッッ
今ッテレビ朝日でッッッ
ホントかどうかワカリませんッッッッ
でもホントだったらエライことですッッッッ
この情報がウソでもかまわないッッ 確認するだけの価値はありますッッ
あ、ネタバレするので注意してくださいね。
小市民シリーズ (テレ朝) 6話
というわけで「シャルロット」。
「でも……。食べたことはあるんでしょう?」
その一言が聞きたかった。アニメ化が発表され声優さんが発表されPVでセリフが流れたときから、アニメで小佐内さんが言うこのセリフのことを考えていました。
いやぁ、良かったですねえ。小佐内さんでした。そしてこの一言のあとの"間"をちゃんと取ってくれたのも嬉しい。このエピソードってこの一言のための話ですからね。
倒叙ものという性質ゆえに推理を発声することができない中でなんとか映像化をがんばっていたことも伝わってきました。原作小説でもモノローグを読んでいるだけでとにかくシャルロットがうまそうな話なんですが、アニメでは小鳩くんが全力の顔芸でおいしさを表現してくれていましたね。
小佐内さんがコーヒーカップをスプーンで鳴らすのもその後の笑顔も実に良い。改めて「シャルロットだけはぼくのもの」ってめちゃくちゃギャルゲな話だ。
で…。大大大好きな話なのでどうしても理想が高くなってしまっているということは重々承知しているのですが、その上で贅沢を言うと、もっと倒叙ものとしての機能面に比重をおいてほしかったな~!!
最初小市民シリーズのアニメ第1話を見たとき「日常の謎の映像化で起こりがちな、原作のモノローグを全部読み上げてしまうこと」がなかったことを喜んでいたのですが、それどころかこのアニメでは小鳩くんのモノローグをかなり徹底して排除しています。これ自体は志の高いことだと思うのですが、それはあくまで手段であって目的ではない。今回みたいな話はもっとモノローグに頼ってもよかったんじゃないかなあ。
小鳩くんが内心ドキッとしていることを視聴者にモノローグで伝えず外見の様子で伝えようとすると、視聴者が見えるということは当然小佐内さんにも見える状況になるわけで。そうなると小佐内さんが見破ることの凄味が目減りしちゃいますよね。
具体的にはハンカチで汗を拭こうとして思いとどまり、ティッシュで汗を拭くシーン。あそこは原作だとハンカチのことは一切思考に浮かばず当然のようにティッシュで汗を拭いてるんですよ。なので読者も「小鳩くんはハンカチがあるのにティッシュで汗を拭いた」「そこで小鳩くんが失策していた」ということに気づかないんです。最後に探偵・小佐内さんの指摘で初めて気づくんです。
倒叙ものにおける謎は「なぜ(どうやって)探偵は真相を見抜いたか?」という部分であり、そこがミステリとしての一番の魅力にもなっています。その点において、アニメ版では倒叙ものとしての原作における変えてはいけない部分に手を加えてしまっていたと思います。
小市民シリーズのことを僕はいわゆる「ファム・ファタールもの」だと思っているのですが、小佐内さんがファム・ファタールとして開花するのが『夏期』冒頭の「シャルロット」だと思うんですよね。
このエピソードは「倒叙ものとしての出来の良さがそのまま小佐内さんの魅力になる」というシステムになっています。小鳩くんの隠蔽が完璧に思えれば思えるほど、小佐内さんがなぜ見抜けたのか不可解になればなるほど、見抜いた小佐内さんが恐ろしく思えるのですから。
そういう意味で本作の倒叙ものとしての機能は死守してもらいたかった…!
なんか分量的に文句のほうが長くなっちゃいましたけど、普通に好きですからね!
小市民シリーズのアニメに関して僕は、原作小説の時点でもう十分に"もらって"いるので後は何が出ようと全部儲けもんだと思って見てます。
ところで終わったあとなんとなく反響を眺めていたら「珍しく小佐内さんに不幸が降り掛からなかった回?」と言われていました。原作ではあまりそういう印象がなかったけど、言われてみれば確かに「伯林あげぱん」を挟んでることもあってここまで小佐内さんが災難な目に遭う回が多いんですね。こういう新しい視点が見られるのも楽しい。
あと原作が書かれてから20年の間に夏が暑くなりすぎたせいで「夏の日中にケーキをパシらせること」の捉え方がだいぶ変わってたのも面白かったです。
負けヒロインが多すぎる! (MX) 4-5話
4話までの温水くん(主人公)と八奈見さんが友達になるまでの展開が第1巻だったんでしょうか。4話は熱のこもった回で青く瑞々しい感情のほとばしりの見せ方がとても素晴らしかったです。
しかし5話になって「勝ちヒロイン」の側が物語の舞台に登場し「本当はあの二人(負けたヒロイン)が付き合うべきだったんじゃないか」「彼には幸せになってほしい、たとえそれが私の横でなくても」と言い出したところでこう、作品が「次のステージ」に進んだ感じがして引き込まれ直しました。めだかボックスでマイナス13組が出てきたときみたいな"新章突入"を感じる。
負けヒロインという、いわば構図で遊んでいた作品が、その構図を逆転させて新しいカタチを出してきた感じ。こういうのめっちゃ好き。
あとこの構図変更の流れで勝ったはずのヒロインが負けヒロインみたいな湿気を出すの、マジでこの店はこの出汁で勝負してるんですね。なんて体幹の強い性癖なんだ。