24/07/15 【感想】地雷グリコ

青崎有吾『地雷グリコ』を読みました。
高校を舞台に、架空のゲームで頭脳戦をやる短編連作です。架空のゲームで頭脳戦というのはずばり「カイジ」みたいな感じ。

  • 地雷グリコ

  • 坊主衰弱

  • 自由律ジャンケン

  • だるまさんがかぞえた

  • フォールーム・ポーカー

という各話のタイトルはそのままゲームの名前です。
最初の「地雷グリコ」を読んでパッとしないなあと思った人も安心してください、後の話ほど面白くなります! 具体的には「自由律ジャンケン」からエンジンがかかってきます。

荒木飛呂彦先生はジョジョの連載を開始する前に「魔少年ビーティー」という作品を連載していたことがあります。ビーティーという少年が機転で悪い大人をやっつける話なのですが、残念ながら読者の評価を得られず短命に終わってしまいました。しかし最終話だけは反響が良かったそうで、担当編集とその理由を分析したそうな。その最終話だけはそれまでのビーティーが一方的に機転でやっつける話と違って相手も知恵を働かせてくる頭脳戦だったことからこの路線に手応えを掴み、「ジョジョ」に繋がっていったのだそうです。

このエピソードがそのまま本作にも当てはまると思っていて、「自由律ジャンケン」は相手視点も含めた「読み合い」の要素が出てくるんですね。
そして「だるまさんがかぞえた」ではルールの外側を広く使った、さながらジョジョ2部のような"なんでもあり"の勝負になり、それらの極みが最終話「フォールーム・ポーカー」となります。

本格ミステリ大賞・日本推理作家協会賞・山本周五郎賞を受賞し直木賞の候補作にもなったそうなのですが、この本がこうして評価されるのってすごい。そして嬉しい。やってることはすごく突き詰められてるんですが、マンガ的というか、ナメられてもおかしくないような外観をしてると思うんですよね。これがちゃんと評価されてるのってイイなあ。みんな小説が好きなんですね。

「だるまさんがかぞえた」の予想もつかない一撃の気持ちよさ…「フォールーム・ポーカー」の究極バトル…でも今あえてベストを選ぶなら「自由律ジャンケン」かなあ!
グー・チョキ・パーの三つの手に加えて、競技者ふたりはそれぞれ自分の考案する「第四の手」をデザインするというゲームです。手の形は共有されますが、その効果は審判にのみ伝えられます。一応効果の設定には一定の制約(いずれかの手には負けるようにしないといけない等)があり、相手のオリジナル手を推測しながら勝負していくことになります。
手の形は共有されているため相手が設定したオリジナル手を出すこともできるというのが面白いところなんですよね。固有能力を持ちあい読みあうバトルではなかなか味わえない独特な読み応えがありました。

青崎有吾先生、TVドラマ3本にTVアニメ1本にといつの間にかめちゃくちゃ映像化されていますが、この作品もメディアミックスされそうだなあ。もう水面下では動いてるんじゃないかって気がします。真兎のキャラデザ、見たいぜ。