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El Chalo, the Legend of Granada. 1

(見出し画像 https://youtu.be/CIKJYjWXEi8 より)

前書き

考えてみれば私にとって、これが人生初の「推し」なのかもしれない。

そもそも私は芸能人にはあまり興味がなく、特に歌手などの音楽関係には疎かった。たぶん、両親、特に母が歌舞音曲の類が苦手で嫌いだったせいだろう。私の子供時代は「アイドル」という言葉が初めて流行り出した頃で、テレビでは若くて可愛らしかったり、カッコ好かったりする男女の歌手の出演する歌番組が花盛りだったが、そうしたものは一切見せてもらえなかった。そして夜八時からのゴールデンタイムには父の好きな時代劇や刑事物ばかりを見せられて育った。(毎日のように、どこかの局で時代劇の番組をやっていた「時代劇全盛」の時代でもあったが、当時、テレビは一家に一台が普通だった)

学校で同級生たちが郷ひろみや西城秀樹、天地真理の話をしている時に杉良太郎や大川橋蔵、高橋秀樹や里見浩太朗の話をしてくれる友達はいなかった。(私は歴代「遠山の金さん」の中でも特に中村梅之介が人情味があるようで好きだったのだが「昨夜の金さんの梅之介、良かったねえ!」・・・なんて小学生が他にいるわけがない)家には当時一般家庭にも普及してきていたオーディオセットもなく、母が子どものためにとセールスマンに騙されて買った(子供向けと大人向けの寄せ集めのような)お高いがたいへん使いづらい英語教材セット一式に付いてきた小さなカセットテープの再生機があるだけだった。

そんなふうに育ったからか、ジャンルを問わず「歌謡曲」には、ほぼ興味が無く、音楽系の芸能人の名は、さすがに人気のある人は覚えはしたが、特に誰が好きということもなかった。青春時代も当時流行って来ていた内外のフォークやロックミュージックにも殆ど関心を持たずに過ごしてしまった。あえて言えば高校時代に友達に付き合って入った町のレコード店で、なんとなく買ったサイモン&ガーファンクルのミュージックデープが気に入ってしばらく聴いていたくらいだ。(流石にその頃の我が家にはカセットデッキはあった)

その後、大人になってからはCDプレイヤーが安価に出て来たので買って、昔の外国映画のテーマ曲を集めたものとか、NHKの地理歴史物の特集番組のために作られたインストゥメンタルの曲を集めたサントラ盤とか、そんなものばかり聴いていた。(演歌の良さを知ったのは三十の時に失恋してからで、美空ひばりの「哀しい酒」とか「みだれ髪」とかを聴きながらしみじみ泣いた)一時はエンヤのCDを買ってよく聴いたりもしていたが、私の場合、単純に楽曲の美しさに惹かれるだけで歌手個人にさほど興味があるというわけでもなく、その点ではファンとまでは行かなかったかもしれない。

前置きが長くなってしまったが、そんなレベルだった私にここへ来て突然、ミュージシャンの「推し」が出来てしまった。(昔なら単に「誰それのファンになった」と言うところだが、今はそう言うらしい)しかも昔の同級生十数人と作っているLINEグループでその人物の動画を紹介するという「推し活」までやってしまった。やってしまってからそれに気づいて我ながら呆れたが、ともかく、そのくらい惹きつけられたわけで、その理由や、それがきっかけで興味を持つことになったあるジャンルの音楽について、わかって来たところから少しずつ書いてみたい。

※ 一応、お断りしておけば、ここはあくまで私、Yasminのメモフォルダー〈備忘録〉であり、五月雨式に入ってくる知識を自分なりに整理しながら書いていく場所なので、常に正しい理解が出来ているかどうかはわからない。その辺りはご容赦願いたい。


El Chaloとは何者?

その人の名はEl Chalo(エル チャロ)。たぶん日本では、というか、世界でも一部の地域と、そして一部のYouTubeチャンネル内を除き、ほとんど知られてはいないようだ。フラメンコのギタリストでスペインはグラナダのストリートミュージシャン、というか有体に言えば「大道芸人」と言った方がぴったりくる気がする。ロマ(ジプシー)の人である。

そういう人なので、現地に行けば割と簡単に会うこともできるし、ご祝儀を払えば屋外カフェのテーブル席に呼んで演奏してもらうことも出来るみたいなのだが、残念ながら今現在の私は両親の介護で海外どころか隣町のホームセンターや美容室にすら行けず、自分に不調があって医者にかかりに行くのもやっとの状況だ。だからリアルで「追っかけ」をするなんてとても無理なので、ネット上で出来る限りの追っかけというか“ストーキング”をしてみた。

(「ジプシー」という言葉は欧州ではあまりにも差別的に使われて来てしまったので、最近では彼等自身の言語、ロマ語で「人」の複数形を意味する「ロマ」と言わなければならないらしい。「インディアン」を「ネイティブアメリカン」、「エスキモー」を「イヌイット」と呼び変えたのと同じような理由だと思うが、もちろん、呼び方を変えたからといって簡単に差別が消えるわけでもない。そもそも「ジプシー」というのは英語圏での呼び方でスペイン語では「ヒターノ」と言うが、彼等自身、自らを「ヒターノ」と称し、そこには誇りさえ含んでいるようでもある。だから、そんな彼等を「ロマ」と呼んでいいのかどうか迷うところだが、とりあえず「ロマ」という呼称で統一しておく)

名前の前につくElというのは英語の定冠詞のThe と同じで、スペインのフラメンコ界ではその芸に秀でた人に敬意を表して付けるらしい。(本人が女性の場合は LaChalo というのは英語で言えばThomasをTom、Williamを Billと呼び替えたようなスペイン語の愛称で本来の名はGonzalo(ゴンサーロ)になるはずだ。


El Chaloとの出会い

五年ほど前にYouTube動画で彼と仲間たちの演奏を初めて見た。元々フラメンコには多少の興味はあったが詳しいことは今もよく知らない。その頃は歌や音曲としてよりも舞踊としてのフラメンコに興味を持って、グラナダの街頭でロマの人たちが踊るフラメンコの動画をよく見ていたのだが、そのうちに「おすすめ」にこれ(↓)が引っ掛かって来たのだ。サムネイルのイラストがお洒落で目についたので開けてみたのだが、内容はオジさん四人の渋いパフォーマンスでその時点でもかなりの再生回数を稼いでいた人気動画だった。

おそらく、地元グラナダのローカルテレビか何かの番組で撮られたものだろうと思ったのだが、なかなか凝った編集なのだ。冒頭から叙情的なギターの音色が流れて、現地であるアルバイシン地区の古い城壁のような建物が映る。と思ったら、それがフェードアウトして今度はギターを弾いている手のアップに入れ替わるのだが、まず、気づくのはそのギターの表板があちこち擦り傷だらけで傷んでいるということ。そしてギターを弾く浅黒い左手の甲には太い血管が何本も浮き出している。

上記動画より


本場スペインの、ロマの人たちによるフラメンコの演奏らしいということで興味を持ったが、それ以上に惹きつけられるものはあった。

上記動画より

曲の名はYo soy Gitano  (僕はヒターノ)
(スペイン語の綴りの発音はほとんど日本の「ローマ字読み」で行けるらしいが、例外もあってgiは「ジ」ではなく、「ヒ」になる)

最近になって、1970年代のフラメンコスターの一人、Camarón de la Isla (カマロン・デ ・ラ・イスラ)が歌ったヒット曲だと知ったが、フラメンコの曲や歌手については全く知識のなかった私にはその歌詞がどんな内容なのかもわからなかった。

これを書くについてやっとググったら日本語訳は見つからなくて英訳が出た。どうやらロマの青年が自分に思いを寄せてくれる(おそらくロマではない)少女へ、心ならずもの別れを告げる歌だと思われる。今も続くロマへの差別も含め、歌詞の意味がわかると切なさも増す。

歌詞英訳
https://lyricstranslate.com/ja/yo-soy-gitano-i-am-gypsy.html

以下、Yasminの適当訳

黒い瞳の少女よ、そんなふうに僕を見ないで
君は僕の名も、どこの国から来たのかさえ知らないのだから

僕は女の腕に縛られて生きることは出来ない
僕は夜明けが来るたびに別の道を行く

僕はヒターノ
そして僕は行かなければならない
君のキスは僕にとってゲームのようなものさ
僕の愛は火であり、この世界そのものが僕の国だ
僕は君への愛は持っていない

僕はヒターノ
自由は僕のゆりかご、風は僕の孤独な歌、月は僕の心を鍛えてくれる
愛の一夜が僕の運命を変えることはないだろう
僕に望みをかけてはいけない
僕は君の男じゃないんだ

夜が明けたら僕は遠くへ行くよ
星の輝く夜と四月の風を前にして

黒い瞳の少女よ、そんなふうに僕を見ないで
君は僕の名も、どこの国から来たのかさえ知らないのだから

(以上)

ともあれ、このオジさんたち、ちょっとカッコいいかなと思ってflamencoと名付けた再生リストに入れてたまに見ていた。

(動画の説明には「グラナダはアルバイシンのジプシーたち、エル チャロ〈ギター〉と彼の仲間たち」とあるのだが、この時のチャロ以外の三人はその後に見つけたチャロに関わる沢山の動画の中では一度も見かけたことはなく、普段からの仲間ではなかったようだ。もしかしたら、別の地域で活動している人たちなのかもしれない)

スペイン語は全くわからないのだがEl Chaloというのがギターの人らしいと分かったので検索したら同じsentir framenco(フラメンコを感じよう)というYouTubeチャンネルが上げている彼の他の動画が幾つか出てきたのでそれも保存した。(最初の動画よりかなり老けて見えるが11年後らしい)


傷だらけのギター

それからは、これ等も含めてたまに開いて見ていたが.そのうち、他の分野のいろいろな動画に興味を惹かれて、いつの間にかほとんど見なくなってしまっていた。それがこの半年ほど前からなぜかYouTubeのおすすめ動画にあのイラストのサムネイルがしきりに出て来るようになった。(しかも、毎回ホーム画面の真ん中あたりに出てくる)何度か見て再生リストにも保存してある動画がなぜ「おすすめ」に出るのかよくわからないが、ともかく中身は知っているのでその度にスルーしていた。

でも、あまりしつこく出るので、たまには見てみようかと思って開けて見てみた。「うんうん、やっぱり好いよね」と思って続きでEl Chaloの他の動画も見てみた。その時初めて本気で「いいわ、この人!」と思ったのかもしれない。

でも不審な点もあった。プロなのに、ここまで傷だらけのボロなギターを弾く人がいるのが不思議だったのだ。どちらかというと、高価な楽器を大事に使うのがプロの演奏家だと思っていたから初めて見た時はちょっと驚いた。そして、どうしてあんなに傷が付くのだろうと思っていた。(後で見た幾つもの動画の中で、昔からチャロと一緒にギターを弾いてきたらしい仲間たちにしても、ここまでギターを傷めている人は他にいなかった)

もしかして弦を弾きながら打楽器がわりに胴を叩いている?そういえばそんな音もするようだ。

以前によく見ていた同じグラナダの踊り手のいるロマのフラメンコグループでは箱型の打楽器(というか、ほとんどただの木箱にしか見えない)を叩く人が一人は加わっていた。調べたらカホンと呼ばれる打楽器で南米ペルーが起源だった。踊り手、ギター奏者 歌い手、カホン奏者という構成である。

※踊り手の女性たちの衣装は質素だが異様な迫力が。ロマ、いやヒターノならではのフラメンコという気がする。

後で踊り手無しでフラメンコの演奏のみをするロマたちの動画をいくつも見て、その中にチャロの若い時の姿も結構見つかったのだけれど、チャロのいるグループでは踊り手や打楽器奏者がいることは滅多になかった。

もっとも、どのグループにもパルマと呼ばれる手拍子を打つ人は必ずと言ってよいほどいて、フラメンコ独特の拍子を取っている。手の空いているメンバーや、時には観客までがやっているようなので、ちょっと真似してみたのだが、簡単そうに見えてこれがなかなか難しい。フラメンコに馴染んだ現地の人たちには幼い頃から体に染みついたリズムなのだろうが、日本人でフラメンコを習う人たちには難関の一つになっているほど厄介なものらしい。本場にはパルマ専門のプロ、パルメーロもいるとかで、チャロの動画にも、もっぱら手拍子と掛け声(ハレオという)だけで、ギターも弾かず、歌もあまり歌わない人が出てくるが、たしかにパルマは上手いようだ。フラメンコではパルマも大事な“打楽器”のひとつらしいと知った。

ともあれ、チャロの場合、どれほどギターを叩いているのかと見てみると、たしかに時折激しくギターを叩いているようだ。(チャロでなくてもフラメンコではギタリスタたちはしばしば、打楽器のようにギターを叩くらしい)

これ(↑)は屋外カフェで仲間たちとお客さんの席に招ばれて演奏している場面だが、特に後半、2分半過ぎたあたりからよく叩いている。

特にチャロの場合、親指で弦を弾(はじ)き上げ、他の指で弾(はじ)き下ろす時、(フラメンコでよく使われる「ラスゲアード奏法」という技法らしい)勢いの激しさのあまり指先が板にぶつかってもいるようで、弦を挟んで上下斜めの位置がニスが禿げて白く傷がついている。そのためか、彼のギターはしばしば白いアクリル板のようなものを貼り付けて補強してあった。(後で調べたらゴルペ板というらしい)彼と同じようにギターに白か黒の板を貼ってる仲間も時々いるのだが、やはり、チャロのギターの傷め方は尋常ではないようで、さすがにここまでにしていた人は他にはいなかった。(↓)

https://youtu.be/BWAysRwBQoY より

もはやこうなると音楽という「商品」を作り出すための「消耗資材」である。たまに爪の先に白いエナメルのようなものを塗っているのが見えるのだが、あれも爪が割れるのを防ぐためだろう。

まるでエレキギターのような速弾きをやってみせるのも気になったので調べてみたら、エレキギターはアンプで音を出すので楽器自体を共鳴させる必要がない。だから胴も棹も軽く薄く、かつ、弦は棹から低い位置に張られてあり、弾(はじ)かなくても指で触れるだけで鳴るものもあるという。だから速弾きも得意なのだが、それに比べるとアコースティックギターは胴体も棹も厚くて重く、弦を張る高さも棹から少し離れているので、手や指先にかなり力がないと速弾きはし難いとのことだった。(ただし、フラメンコ用のギターはクラッシックギターよりも軽く出来ていて弦を張る位置も低いので、その分、速弾きには向くらしい)

チャロの手の甲に浮き出していた何本もの太い血管だが、ためしに「手の甲、血管」とかでググってみたら血管外科のある医療機関のサイトに次の説明があった。

「日頃手や腕の筋肉をよく使う運動や仕事をしている方は血管内を流れる血流も多くなり、血管も拡張しやすくなるため、血管が浮き出やすくなります。」

納得である。


Chaloは有名人?

はじめは El Chalo で検索かけても最初に見た幾つかの動画しか出なかったのだが、そのうちにおすすめ動画に彼と仲間たちの動画が次々に現れるようになった。それらの動画の投稿時期は古くても十四、五年前なのだが、YouTubeに高画質の動画が投稿出来るようになったのも、たぶん、それくらいからだと思うので、おそらくそれ以前に撮られたもの、二十年くらいは前のものもあるのではと思われる。よく見ると動画のタイトルのどこかにChaloとあったり#El Chaloとタグが付いていたりしたので、そのせいで出て来たのだろう。

しかし、そのうちチャロの名前など何処にも無くて、単に観光客がグラナダの「風物詩」として撮ったとしか思われない動画も出て来て、かつ、その中に彼がいることもよくあった。よく考えるとチャロが活動しているのはグラナダでも三番目くらいの名所らしいMirador de San Nicolas(サン・ニコラス展望台)とその付近のごく狭い範囲に限られるようだ。特に近年は背後にアルハンブラ宮殿を見下ろす最も良い場所を (おそらくは「ギターの腕」という実力によって? )確保しているせいで、高確率で彼が現れたのではないかと思っている。結局、チャロの出てくる動画だけでも100を超す数が見つかった。

El Chaloがどの程度の“有名人”なのか、最初はよくわからなかった。でも、一般人が撮ったらしい動画のタイトルや説明にもチャロの名が入ったものが結構あること、また、彼の名前が全くない動画のコメント欄にすら、チャロが映っているだけで「Chalo!」と叫ぶように書いたり、彼を称賛するコメントがあったりするので現地ではそれなりに名の知れた人気者で「名物男」的存在のようだ。

(ほとんどがスペイン語のコメントで.私はスペイン語は読めないのでYouTubeの「日本語に変換」を使ったが、その中に英語で”El Chalo, the Legend of Granada.”(エル チャロ、グラナダの伝説)と書いていた人がいたので、そのコメントに同意のクリックをして、この記事のタイトルとして頂いてしまった)

スペイン国内だけでなく、YouTubeの動画を通じて同じスペイン語圏の中南米にも彼のファンは多いらしく、チリやアルゼンチン、メキシコなどからも沢山の賞賛の書き込みがあり、それぞれ「ぜひ、自分の国に公演に来てほしい」と書いているファンたちがいた。

最初、プロのカメラマンが撮ったらしい幾つかの動画だけを見た時は、もしかしたらスペインでは既に名の知れたミュージシャンで立派な家に住み、昔はともかく、今はストリートミュージシャンなどではないのでは?とも思ったりもしたが、他の動画の数々を見る限り、今も足元から少し離れた場所にある開いたギターケースに、見物人から投げ銭を入れてもらっている現役の「大道芸人」であるようだ。


Chaloのファッション

正直言って若い時のチャロの演奏はあまり感心できなかった。弾くと言うよりは力任せに叩くようにギターを奏で、怒鳴るように歌っている。その場にいたとしても暑苦しく感じて、あまり側には寄りたくはないかもという気がした。

それとそのファッションが気になる。最初に見た動画の栗色の巻き毛の長髪に光沢のあるグレーのシャツという衣装が結構イケてたので、てっきり「伊達男」なのかと思ったが、彼の若い時からの動画を幾つも見た結果、むしろ、本人のファッションセンスは・・・ちょっと、一言では言い表せないような気がした。

https://youtu.be/tliCM6tzImY より

向かって左端がチャロ。これなんかは昔の「グループサウンズ」みたいだが、またカッコ好い方。(ちなみに真ん中の体格の良い、しっかりした顔立ちの男性はチャロのお兄さんなのだが、その右で手拍子を叩いて歌っている男性は弟さんらしい。投稿日は一年前だが、チャロの髪型から言って、数年前に撮られたものと思われる)

この時のオレンジのシャツは微妙。(↓)

始めの方で見物人らしい声で「Chalo!」、「Chalo!」と声がかかる。チャロにはよくあることだが人気者の証だろう。兄弟共に髪型は変わっているがチャロの隣でギターを弾いて歌うのは上の写真と同じお兄さん。この人もかなり上手い人だ。右の二人も普段はギターを弾くのだが、ここではパルメーロとしてパルマを叩いている。あの速さのリズムで時々、二人交互に正確に叩く。さすがに見事な叩きっぷりである。


ちなみに(↓)これは仲間と共にお客さんから「公開プロポーズの盛り上げ伴奏」を頼まれた時で、いわば「お祝い事」である。チャロの目立つ衣装もそれを意識してのことだったのかもしれない。

下記動画より

1:50辺りから彼氏さんが跪いて指輪を差し出す、例の「求婚の儀」が始まるが、感激のあまり思わず泣いてしまったぽっちゃり系の彼女さんが可愛い。


(↓)なぜかこの人に原色は似合わない。(投稿日は11年前)

https://youtu.be/rEaja5FzZy4 より

ともかく、良くも悪くもやけに凝った「衣装」を着ている時があるのだが、一方で本当に「どうでもいい」というような、雑な恰好で弾いている時もよくある。ちなみに一緒に演奏している彼の仲間の人たちは、大抵がジーンズやスラックスにシャツやセーターといった普通の格好をしているのでその点でもちょっと目立つ。もしかして“素材”は悪くないので、恋人か熱心なファンかはわからないが、時々彼に「似合う」と思われる衣装を見つくろって来て着るように仕向けたり、美容師のところに引っ張って行ったりしてコーディネートしているのだろうか?そう考えてもみたが、いまいち腑に落ちないような気がする。

髪の毛は元々黒の直毛らしいのだが、ある時は“オスカル・フランソワ”のような髪型をしていた。(↓)(投稿日は13年前)

https://youtu.be/Yi07BHcQ6_E?si=VcrZzTyaR8KkX5pzより

(たぶん、これが私が見た中では、チャロが一番「美形」に見えた瞬間かもしれない)


これくらい(↓)なら、普通にカッコいいのだが(投稿日は6ヶ月前)

https://youtu.be/GTS__PI00Hw より

しばしば、こんな感じで(↓)ギターを弾いてもいるようだ。
(投稿日はそれぞれ5年前と7年前なので、年を追うごとに酷くなったというわけでもない)

https://youtu.be/4hwmCtCKgU4 より


https://youtu.be/8spVpknUNwc より

もしかしたら「(風景の一部として)写真や動画も撮られるような芸人なんだから、誰か一人くらいは目立つ格好をしていた方がいい」という営業的な観点から、仲間内でもスタイルも良く、ギターの上手い彼が一種の“マスコットキャラ”的に時々目立つような「衣装」を着る役になっていた?とも考えてみたが・・・その辺は謎のままである。(本人に限ってはギターを弾くこと以外、何も考えていなさそうに見えるのだが)ただし、靴だけはいつも、わりとおしゃれなものを履いているようで、半パンやジーンズにスニーカーという時でも決して汚れたりはしていない。その辺は本人に拘りがあるのかもしれない。

こうした動画を見てもわかるように、このChalo氏、その時々によってあまりに印象が違う。小顔て手足が長いせいか、一人でいると長身に見えるのだが、大柄な白人男性と一緒に映っていたりすると、かなり小柄に見える。よく見ると仲間のロマの中でもけして背の高いほうではないらしい。更にファッションも髪型もその時々でだいぶ違っていたりするので、初め「これは果たして同一人物なのだろうか?」と悩むほどだった。

それでも左利きに抱えた傷だらけのギター、そして(幅が狭いので)正面からだとあまり目立たないが、横を向いた時に目立つ大きな鷲鼻、さらに左手の甲に長方形型に描かれたタトゥー(刺青)、そして何より独特の激しさと力強さを持つギターの音色で少し見ただけで彼だと識別できるようになった。

(タトゥーについては利き手である左手の人差し指の付け根付近に入れてあるのだから、それなりの思い入れがあるものだと思うのだが〈例えば恋人の名前とかの〉アルファベットの文字列かと思ったらそうでもなく、何かの記号のようで、もしかしたら「護符」のようなものなのかもしれない)

チャロの年齢はよくわからない。異人種の歳は互いにわかり難いものだが、しかし多少老けては見えるが私よりも年下ではないかと推測している。

チャロに関しては見つかった100を超す動画のほとんどが屋外で演奏しているもので屋内に居るものは例外的な僅かしかなかった。たぶん、毎日のように外に居るのだろう。普段一緒にいる彼の仲間の人たちと比べてさえ「屋根の下にいない人」なのだ。sentir framencoさんの取り上げている他のフラメンコのアーティストたちはほとんど屋内で演奏しているのに対し、チャロだけは(たぶん、本人の希望で)野外ロケのみである。グラナダのあるアンダルシア地方の紫外線量は半端ないと聞くし、元々肌の浅黒いロマであってもその積み重ねたダメージは相当なものだろう。特に近年の急な老け方を見ると、そのせいとしか思えず、おそらく「見かけよりは若い」と思うのだが、どれくらい引いたらいいのかわからないのだ。

(その割に仲間の人たちはそうでもないので日焼け止めを塗っているのかもしれないが彼は塗らないのだろう。凝った衣装を着ていたりするわりには本人は自らの外観に興味がないのかと思う理由もその辺りにあるのだが、どうせならその辺にも気を付けて欲しかった)

左利きでギターで弾いている人はサン・ニコラス展望台の動画の中でも他にやっている人は一人もいなかった。(私は初め左右対称のギターなら弦を張る順番で入れ替え可能なのかと思っていたが、そうではないらしい)Chaloを見つけるには、まず、抱えたギターの向きで探して、それから確認してみれば、ほぼ100%彼だったのでその点は楽だった。

左利きの人はおよそ十人に一人でその比率は世界共通だという。それにしては他に見かけないと思ったが、左利きでも右利きと同じギターを弾いている人が多いのかもしれない。実際、日本のあるギター講師の動画チャンネルを覗いたら、初心者に対して「左利きの人も右利きと同じギターで練習した方がいい」と言っていた。(ピアノなどはそもそも左右を入れ替えることは不可能だろうし)多くの左利き奏者が、右利きに合わせてしまっているとしたら、チャロの左利きはかなり強固なものなのかもしれない。

ちなみにチャロは歌(カンテ)は上手くない。さすがに音痴ではないようだが声があまり良くないのだ。そして出せる声の音域が狭いのか、高音になると無理をして怒鳴るような声になってしまうようだ。(実は私もそうで音域の広い歌は歌えない)だからか、若い頃はチャロもサブボーカル的にはよく歌っていたようだがメインで歌っているのはほとんどが別の人だった。

天は二物を与えずと言うが、チャロの場合、(ちゃんと整えさえすれば)容姿はそこそこ悪くないと思うので、三物までは与えられなかったと言うべきか。あれでもし、美声でもあったなら、大手音楽事務所とかが放っておかず、過去のフラメンコスターのようにメジャーデビューを果たしていたかもしれない。

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