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板書式で遠隔講義をするときに欲しいUI

この記事はアイデアソン「コロナウィルスにITで立ち向かう! 2020第一弾」への応募記事です。

1. 背景と目的

2020年初頭に発生したコロナ禍の中、遠隔会議(あるいはウェブ会議)システムの利用が急速に拡大している。板書形式の講義をオンラインで行う場合、黒板等の前で実際に板書する映像を配信する方法の他にも、PCの画面に書き込んだ内容を画面共有によって配信する方法がある。後者は、学生側から教員の顔が見えないというデメリットはあるが、一般に映像配信に比べて通信量を抑えることができ、要求されるネットワーク品質の制約が少ないというメリットがある。

しかし、画面共有を用いた板書式オンライン講義で明らかになった点は、講義というコミュニケーションにおいて、我々は想像以上に身体的な情報に頼っているという事実である。そこには対面講義では問題にならなかった認知的困難が存在し、それが講義全体をぎこちなく不効率にし、聴講の集中力を低下させる可能性がある。ここでは課題の一つを示し、その解決のためのアイデアを提案する。

2. 課題とアイデア

提案するアイデアは「講演者の腕先(もしくはペン先)の座標を、影として受信側の画面に表示する」というシンプルなものである。これによって、

受講者は、注目する画面全体の「どこに」「いつ」新しい情報が現れるのかを予期することができ、これによって板書を追う際の認知的負荷を下げることができる。

また一方で、

 講演者は、一般的なアプリケーションで提供されているようなペンとポインタ―の機能を切り替えることなく、板書および、板書した内容を修飾するジェスチャーによる情報提供を、シームレスに横断することができる。「書く」からそれを「指し示す」という流れは講義中に頻繁に発生する無意識的な動作であり、講義のリズムを維持する上でも重要である。

つまり、目の前で行われる板書という行為が潜在的に伝達している身体的な情報の一部を明示的に生成し、オンライン講義のコミュニケーションを円滑にするしくみである。

本提案の本質である「情報が出現する『前兆』を与えることによってユーザの注意を促す」というアイデアは、実は既に多くのチャット/メッセージングアプリケーションにも実装されている。例えば、Facebook messengerやSlackなどで、他のユーザがテキストをタイプしている間、「誰々が今タイピング中です…」というメタ情報を表示するのも、同様の効果を狙ったものとみることができる。

3. 実現方法

現在のペンタブレットは、ペンが画面からわずかに浮いている場合でもペンの位置を検知したり、あるいは繊細な筆圧を検知したりできる高感度のものが一般的である。この信号をソフトウェア側でそのまま利用するのが簡便である。それが困難な場合は、例えばカメラを用いるなどして、スクリーン上の講演者の腕やポインタの位置を検知するしくみが必要である。後者のしくみには様々なアプリケーションで多くの先行事例が存在する。

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